47 ダンジョン前食堂開店?
「うまい」
「キリカ、俺にもくれよ!このままじゃローファスさんが全部食っちまうっ!」
カーツ君がキリカちゃんに手を差し出す。
「ローファスさん、食べてばかりではなくて補正値の確認もお願いします」
ブライス君に言われてローファスさんがハッとなる。
「あ、ああ、そうだった。えーっと、さっきと違うところか」
ローファスさんが食べる手を止めて視線を上から下へと動かしている。
私たちには見えないけれど、ローファスさんにはステータス画面が見えているのだろう。
「黒のハズレポーション、醤油を使っているとすると、守備力に補正値がついているはずです」
はたして、キリカちゃんの作った焼きおにぎりでも、私が作った焼きおにぎりと同じ効果があるのか……。
あるのなら、ハズレポーションレシピの責任も重大だ。
ん?
まって?
もし、私にしかない能力なんてことだった場合はどうなるの?
あれ?それなら食堂とか営む?
だけど、食べてから効果がある時間はどれくらいだったっけ?
食べてダンジョンに移動するまでに効果切れちゃうよね?……とすると、食堂するとしたら、ダンジョンの入口とかで?
えっと、このポーション畑と言われてるところも一応ダンジョンなんだよね。でも、たぶん補正効果がある食べ物が必要なのは、初級……?ううん、ローファスさんが行くようなダンジョンは中級とか上級とか?
どこにあるの?……確か、ここから何日か移動した場所なんだよね……。
うーん、街からもずっと離れちゃうし、食材の入手とかどうしたらいいんだろうね?
畑とかあるのかな?
って、違う、違う!
私は食堂で料理作るんじゃなくて、冒険者になるんだ!レベルを上げて……。
あれ?レベル上げて、魔法が使えるようになったら、冒険者の副業として食堂してもいいかな?
うーん。
でも、誰にでもポーション料理が効果があるなら、私よりも腕の良いプロの料理人が作るようになるから、食堂を営むのはなかなか競争が激しくて難しいかもしれない。
日本だって、飲食店は競争が激しいんだもの。開店したかと思うと2,3年でつぶれちゃうところも多い。そう簡単に私にもできるかななんて考えない方がいい。
仕入れから原価計算、天候やそのほかの状況による売り上げ予想をして仕入れも計画しなくちゃいけないし。
そもそも、こちらの世界のこと、知らないことが多すぎる。
私の作る料理にはどうしても胡椒とかほしいなって感じることが多いけれど、胡椒はどうやら高級品のようだし。
そうすると、きっと使えない……。
うん、無理そう。食堂するならば、どこかの食堂で働きながらまずは食堂経営について勉強しなくちゃ。
って、そもそも資金が必要なんだよね。うん、やっぱり立派な冒険者になって、いっぱい働いてお金を貯めて、それから食堂で修行して……。
「あ、守備力の補正値が増えているぞ!」
ローファスさんの言葉に、もわもわと膨らんでいた夢の風船がパーンとはじけた。
そ、そうなんだ。
私だけってことじゃないんだね。だったら、ダンジョン前食堂とかは素人の私には無理かな……そもそも食材運搬の目途から立たないよねぇ。
「えーっと、どれくらい増えたんだこれ?」
ローファスさんが首をかしげている。
「ユーリさんの料理を食べた時は、倍に増えたと言っていましたよね?僕たちはユーリさんの料理でプラス10。今回、確認するべきでしたが、先にユーリさんの料理を食べてしまったのでキリカの料理でどれだけ補正値が付くか分からないんですが……。どうですか?ユーリさんの料理と比べて」
ブライス君が興奮気味にローファスさんに尋ねている。
「キリカの料理でも補正値が付くということは、自分で料理しても補正効果が得られるということになりますよね」
あ、そうか。自分で料理して自分で食べればいいのか。
ってことはダンジョン前食堂の必要性がますますないかも……。
「えっと、うーん、そうだなぁ」
ローファスさんが首をひねる。首をひねるながら、テーブルの上から鶏肉と野菜の甘酢餡かけをパクり。
「あー、それ俺の」
カーツ君が椅子から立ち上がって抗議する。
「まだあるからね?ローファスさんの甘酢餡かけをカーツ君のお皿に盛り付け、ついでにローファスさんの目の前に甘酢餡かけを置く。
「子供の食事を取り上げる大人がいますか!もうっ!」
「あー、すまんすまん。ちと確認したいことがあってな。えっと、ユーリの料理を食べた時にはちょうど倍くらいになるから、キリカの作ったものを食べたときの差の数字がえーっと、こーで、あーで」
……もしかして、ローファスさん数字関係弱いのかな?
小屋では数字で困ったことはとりあえずなかったけど、それは簡単な数字だけだったからかな?
お読みくださりありがとうございます。
感想、めっちゃ楽しんでます。時間が無くて感想返しできなくて申し訳ありません。
それから、ネタバレになるため返せない感想がちょこちょこ出てきまして、その方のみ飛ばして感想を返すのも不自然なため、なんだか返せないままになっております。
レンコン料理情報に続いて「片栗粉がない!そんなときの簡単トロミ付け!」詳しくは感想欄でみたいな感じになっております。そっか。普段使っている片栗粉は確かに原材料はジャガイモだ。本物のカタクリ使ってないわ。うちにあるのも……。
ブクマがぽろぽろと減ってショックを受けたり、1つ増えて嬉しくなったりする時期に入りました。なるべく気にせず見ないようにと思ってはいるのですが……。
評価とブクマと数字の上下が分かりにくい合計数を見てればいいんですけどね……。
あ、評価もありがとうございます。励みにしております!
さて、現在ご要望がぽつぽつある浮気女視点を計画中です。正し、現状入れ込むタイミングではないなーというのが正直なところで(旦那サイドの順を追ってくと、今じゃないなと。先に入れるとまたややこしくなるなと)いっそのこと別の短編として独立させ、見たい人だけ見ちゃう?っていう方式にしようか検討中です。
引き続きよろしくお願いいたします。




