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【書籍化】ハズレポーションが醤油だったので料理することにしました【web版】  作者: 富士とまと


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46 レンコンシャキシャキ

「これ、ユーリさんの分です」

「え?だって、私はダンジョンに入ってないよ?」

「みんなで話し合ったんですよ。ユーリさんがダンジョンに入れないのは食事の支度をしているためでしょう。遊んでいるわけではなくて僕たちみんなのために働いているんだから、報酬があって当然だと思うんです」

 報酬?

 私はみんなに食べてほしくて作っているだけなのに……。

「レベル上げのために、個々に取った分は個々の物としますが、ユーリさんの考えた方法で取った物はみんなで分けようって決めたんです。食事も含めて、ダンジョンに入るために必要なことですから」

 そうかな?食事はダンジョンに入らなくても必要だと思うけど……。

「専業主婦なんだから食事の準備なんて空気を吸うくらい当たり前のことだろう?褒めてもらうようなことじゃないだろ」

 いつかの主人庫言葉が頭をよぎる。

「そうそう、ダンジョンルール、パーティーは協力すること!」

 カーツ君が二カッと笑う。

「ですから、受け取ってください」

 ブライス君が当たりポーションの瓶を私の手の上に乗せる。

 おいしいって言って食べてもらえるだけで嬉しいのに。

 ありがとうって言ってもらえるだけで幸せなのに。

 食事の支度を働いているって言って、報酬をくれようとするなんて……。

 ビックリしたけれど、ありがとう


「では、いただきます」

 ローファスさんが来ていないけれど、子供たちに待たせるわけにはいかないので、先にいただくことにする。

 フォークを伸ばした時に、一瞬動きが止まる。「主人を差し置いて先に食事する妻がどこにいる!」という主人の言葉を思い出した。

 大丈夫。ローファスさんは主人ではないし、それに……一家の大黒柱でもない。家長でもない。うん。待たなければいけない理由はない。ううん、もし家長だったとしても、子供思いの人だもの。お腹がすいたまま帰りを待てなんて言わないはずだ。

「は、なんだこりゃ、酸っぱいぞ」

 カーツ君が鶏肉を口に入れてびっくりした顔をしている。

「ええ、不思議な味ですが、おいしいですね」

 ブライス君がピーマンを口に入れた。

「うわー、これ面白い。穴がポコポコ空いてる。キリカ、初めて見た」

「ふふ、それはレンコンというのよ。止血効果や、風邪の薬として昔は使われていたんですって。今でも咳がひどいときや下痢の時に汁を飲む人もいるのよ」

 子供たちが苦しそうに咳をしているときに調べた知識だ。

「止血効果?野菜じゃなくて薬草の一種ですか?どうりで見たことがないはずですね」

 え?薬草?

「ううん、違う違う、野菜だよ?畑からとってきたんだよ。どんな食べ物だって、多少は何か体にいい効果があるから、それで薬草に分類しちゃうと野菜がなくなっちゃうよ」

 薬草っていうと漢方薬に使われるようなもっと薬として効果の高い植物たちのことじゃないのかな?

 ああでも確か、漢方薬のいくつかには生姜が入ってるって聞いたことがある。食事に使うものも薬として使ってたりするんだよね。うーん、でもレンコンは……やっぱり野菜だよね?

「だけど、こんな穴空き野菜なんて見たことないぞ?」

「畑で育てられないからかな?」

 あれ?畑で育たなくても野菜でいいのかな?ん?わけがわからなくなってきた。しかも泥の中だから、根菜類?芋類ではないよね?

「え?森に入って探してきたのですか?一人では危険です」

「すごい、シャクシャク音がするよ、この野菜。おもしろい。キリカ、レンコン好き。それにユーリお姉ちゃんの作った料理はどれもおいしくて大好き。このちょっと酸っぱくって甘いのおいしい」

 ふふ。

「今回はね、鶏肉と野菜の甘酢あんかけを作ってみたの。ハズレポーションにせっかく酢もあるんだからと思って」

 そう。

 甘酢案は、酢と酒と醤油と砂糖で作れる。生姜が入ってもオッケーなので、ジンジャーエールを砂糖代わりに作れちゃいました。ちょいと水分が多くなっちゃったから、水分蒸発させるのが少し手間だったけどね。

 一口サイズにカットした鶏肉、ピーマン、レンコン、ニンジンに火を通して、少しの鶏がらスープとハズレポーションの酢と醤油と当たりポーションで作った甘酢餡に絡めました。

 ……餡じゃないけどね。片栗粉がなかったから。小麦粉も、なかったから。食糧庫にあるかと思ったらなかったの。粉じゃない小麦も。いわゆるまずい麦っていわれる米しかなかった。……あれ?米粉でもトロミってついたんだっけ?

 とりあえず小麦は欲しい。ローファスさんに渡すほしいものリストに書き加えなくちゃ。

 ちょいと絡み方が物足りないけれど、酸っぱすぎない酸っぱさと、砂糖の甘味。醤油の香り。うん、おいしい。

 レンコンしゃっきしゃき。鶏じゃない鳥のお肉もふわっとおいしい。適度な歯ごたえもある。3種類の鳥が混じっているから、ちょうど胸肉みたいな肉とモモ肉みたいな肉、それからささみっぽい肉と味わえてラッキー。臭みも特にないし食べやすい。

「ふわぁー、すっごい。すっごい。このスープすごくおいしいの。ユーリお姉ちゃん、これ、骨のスープでしょう?」

「うわ!まじか!本当だ!肉が入ってなくてもうめぇ」

 よかった。鶏がらスープはキリカちゃんにもカーツ君にも好評だ。



ご覧いただきありがとうございます。

レンコン料理は、某店の有名な黒酢餡かけ風をイメージしております。(*^-^*)

いい加減、酢も使わないとね?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鳥肉とピーマン、にんじん、レンコンの甘酢あんかけ、おいしそうでなにより。 [気になる点] 誤字報告: 1段落目の最後から9行目 「いつかの主人庫言葉が頭をよぎる。」庫→の 2段落目の中ほど…
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