39 デザート
「さぁ、キリカちゃんもお弁当食べてね」
おいしい空気に素敵な景色。
かわいい子供たちとおいしいお弁当。
「えー、どこから食べようかな。お顔はだめなの。周りの丸いのから食べようかな。でもこの飾ってあるのかわいいし」
ふふふ。
キャラ弁作ってよかった。
「あー、うまかった!」
キリカちゃんが迷っている間に、カーツ君はすごい勢いで食べ終わっていた。
両手両足を広げて寝転がった。お腹を満足そうにさすっている。
食べてすぐ寝ると牛になるよって言葉が浮かんだけど黙ってる。普段いっぱい体を動かして生活してるんだもん。牛になんてなるわけがない。
「はー」
ブライス君が食べながらため息をついた。
「く、口に合わなかった?」
主人の不機嫌そうな顔を思い出す。
「いえ。とてもおいしいです。なぜ僕はレベルが10になってしまったのかと悔いていたところです。もう少し小屋にいたかったなと」
「ありがとう。そう思ってもらえただけですごく嬉しい。明日出発するときにお弁当用意するね!」
ほっ。
みんな喜んでくれた。
うれしい。
「キリカも、明日もお弁当食べたい!」
「俺も!」
「うん。もちろん作るよ。1つ作るのも3つ作るのも変わらないからね?」
明日はキャラ弁じゃなくて普通のお弁当にしようかな。サンドイッチ系でもいいかな?
挟むもの……ハンバーグ?作れないかな?
塩コショウがないのが厳しいか。鶏肉なら照り焼きチキンバーガーとかどうだろうか?
街までの道のり途中で食べることはないだろうけれど、こうしてピクニックのようにどこかで落ち着いて食べるんじゃなければ、片手で食べられるものの方がいいよね。弁当箱もないし。
「ごちそうさまでした」
食べ終わった食器などを重ねて袋に入れる。
「ユーリお姉ちゃん、ありがとう。おいしかった!」
「うん、弁当最高だった!」
キリカちゃんとカーツくんはあれから終始ニコニコ。
「ありがとう。おいしそうに食べてもらえると私もうれしい。本当は何かデザートが用意できたらよかったんだけど……」
「デザート?」
ブライス君が驚いた顔をする。
え?何?
また何か、この世界ではデザートが弁当みたいになんか違う扱い?
「デザートは貴族や富豪の食すものだと思っていましたが、ユーリさんはもしや……」
「あー、やっぱりユーリ姉ちゃんの事情って、没落貴族ってやつか?」
いやいや、いやいやいやっ!
そうか。デザートってぜいたく品だ。
日本ではコンビニで手を伸ばせばパンより安く手に入るけれど。この世界ではそういうわけではないんだ。
「ち、違うよ。故郷ではフルーツとかちょっとしたものを食後に食べることが普通だったの。えっと、貴族じゃなくても……」
「なぁーんだ、デザートって、お菓子のことじゃなくて、果物のことか!だったら、今から探そう!」
探す?
カーツ君の提案にキリカちゃんが元気に手をあげた。
「うん、キリカも探す!」
「いいですね。今までは食事といえばパンとじゃがいもばかりで、気にもしていませんでしたが、ダンジョンの周りには実のなる木もあると思いますよ」
そうか!そうなんだ!
果物は果樹園って頭があったし、森の恵みというときのこやら山菜のイメージが強すぎたけれど、確かに探せばあるかもしれないよね!
「あった!」
キリカちゃんが真っ赤な小さな実のなった木を指さした。
「そういえば、そろそろ熟す時期でしたね」
サクランボよりも小さく、少し細長い形の真っ赤な実がたくさんなっている。
何の実なの?
「しっかり熟しているから甘いけれど、少し渋いよ。渋いの大丈夫かな?」
ブライス君が実を取り、キリカちゃんと私の手に載せてくれた。
パクン。




