35 収穫の変化
ひぎゃーっ!
黒い悪魔が!
ダメだ!やっぱり、やっぱり、慣れない!
なんだろう、魂に染み付いた恐怖心っていうか、嫌悪感は、そう簡単にはなくならない。
玉ねぎを置くと、すぐにわらわらとゴキスラがどこからともなく湧き出て集まってきた。
見ない、なるべく見ない
「せーの!」
板をかぶせみんなでドッスーン。
出てきたポーションに急いで触れる。
別の場所に玉ねぎを設置し、集まってくる間に出てきたポーションを運び出す……というのを、10回ほど繰り返す。
ポーションは一人10個と大量。本来は、5個でやめてレベルアップのためにこの方法は封印するつもりだったんだけど、ハズレポーションを確保しなくてはならないため回数を増やしたのです。
はー。精神的に疲れました。
「ハズレポーションの保存はどうしますか?」
当たりは各自部屋で管理している。ハズレは確かにどうするんだろう。これも平等に分けて各自管理?
いや、でも、長期にわたって大量に保存するとなればそういうわけにもいかないよね?
「食糧庫に入れとけばいいんじゃないか?」
カーツ君の意見にブライス君が少し考える様子を見せる。
「今はまだ価値が知れ渡ってませんから問題ないとは思いますが、万が一大量にハズレポーションを保管しているのを見られたら、どういうことか探りを入れられる危険もありますよね」
誰に見られるのかな?……各自の部屋は登録した本人しか入れないけど、小屋には誰でも入れる。誰がくるんだっ!
山賊か?盗賊か?盗人か?……怖っ!ブライス君がいなくなっても大丈夫なのかな……。ぶるぶる。
って、私が一番お姉さんというか大人なんだからカーツ君とキリカちゃんを守らなくちゃ!震えてる場合じゃない。
「空いてる部屋は?」
キリカちゃんの言葉にブライス君がああと、手を打った。
「確かにそれはいいかもしれませんね」
全員がモテるだけハズレポーションを抱えて小屋に入り一番奥の開いている部屋の前に移動する。
うん、何か運ぶ時の籠というか、入れ物いるね。両手で抱えると、少ししか運べないし、落としそうで怖い。
「じゃぁ、カードを」
いったん瓶を床に置いて、ブライス君が冒険者カードっていうんだろうか、カードを取り出した。
キリカちゃんやカーツ君も出す。
私も、首の紐を手繰り寄せて服の中からカードを取り出す。
「複数人で登録できるかどうかわかりませんがやってみましょう」
一斉にカードをドアにかざす。あっさりできましたはい。
なんかすごいな。このシステム。
部屋の中は、私の部屋同様、ベッドと机とタンスがある。
「増えていくなら棚か何か必要ですね」
「箱がいいんじゃね?ローファスさんがポーション運ぶときに箱にいれるじゃん、ああいうの」
カーツくんの言葉に頷く。
「そうだね。箱なら積み上げていけばいいし、ダンジョンから部屋まで運ぶのにも役立つよ」
「では、ローファスさんに箱を頼みましょう」
箱を頼むのか。お弁当箱もついでに用意してくれないかなぁー。
さて。午前の仕事を終え、お弁当の準備です。
とはいえ、肉巻きおにぎりはすでに作ってあるので、あとはどうしようかな?
ローファスさんが捕まえてきた山鳥は3羽なので3人で1羽ずつ加工するらしい。本当は私も見て覚えた方がいいんだけど……。罠を仕掛けて動物をとることはできるかもしれないけど、私とキリカちゃんとカーツ君の3人で生活してたら、鳥を捕まえるのは無理そうなのでまぁいいかな?
それに……。
「ユーリさんはお弁当をお願いします」
「ユーリ姉ちゃん、鳥は俺たちにまかせときな!」
「ユーリお姉ちゃん、お昼はおべんと持って湖ね」
という、お弁当に対するる期待値が……。
常温で日持ちする野菜は畑から収穫してキッチンの涼しい日陰に置いてある。
うーん。肉巻くおにぎりだけじゃ確かに野菜不足だ。
野菜。黄色いかぼちゃに、オレンジのニンジン、白いじゃが芋……。
「そうだ!キャラ弁作ろう!」
弁当文化もないこの世界に当然キャラ弁文化なんてない。初めて食べる弁当がキャラ弁だと誤解させちゃうかも?とは思ったけど、子供たちの喜ぶ顔が見たい。
っていうのは単なる言い訳。
私……。




