34 説明書くださいなんて言いません。
「交換?うんと、キリカ、お花摘んでくるよ!」
「待って、待って、ちゃんとみんなのお昼ご飯も用意してあるから!」
ドアから出ていこうとするキリカちゃんとカーツ君を引き止める。
「お昼ご飯じゃなくて、キリカもおべんとっていうのがいい」
「俺も!ローファスさんだけずるいっ!」
えっと、えーっと。
同じ肉巻きおにぎりんだけど……。
お弁当ってそんなに魅力的かな?
そういえば、遠足のお弁当とかすごく楽しみだったな。
お弁当のないこの世界でも、お弁当っていう単語が何か特別な響きを持っているのだろうか?いやいや、単に見たことのない珍しいものだと思うだけかな。
「そんなに、お弁当がいいの?」
3人がめいっぱい頷いた。
ブライス君、君もですか。こういうときだけしっかり子供のふるまいなんだね。
「じゃぁ、お弁当を作ります。お昼ご飯は、湖のほとりでみんなで食べましょう!」
「湖のほとり?」
ブライス君の頬がうっすらと赤くなった。
あ、ごめん。いやなもの思い出させちゃったね。悪気はないんだ。なんか、ピクニックしようと思っただけで。
「お弁当って、外に持って行って食べるご飯のことだからね?えっと、携帯食ともちょっと違って、うーんと……」
「お外で、携帯食じゃないご飯食べるなんて、貴族様みたいだね!すごぉい!」
貴族?
あれか?
庭にテーブルとかおいてお茶するみたいな?
いや違うか。
貴族の旅行は馬車何台も連なって、料理人も連れて行きみたいなそういうの?
……。はい、どちらもお弁当とは違います。
うー、むつかしい。異文化の、無いもの伝えるのって。
「とりあえず、今日も収穫始めましょうか。ノルマこなしたら、お弁当作るね。3人はローファスさんの取ってきた山鳥の処理をお願いできるかな?」
夜は鶏肉か。
何を作ろうかな。
醤油、酒、みりん、ジンジャーエール、酢。
塩があれば、塩振って焼き鳥もおいしそうなんだけどな。でも串がないか。炭もないし。うーん。
そもそも、どんな食感なんだろう?私の食べたことのある鳥といえば、おなじみの鶏。
主人と恋人時代に食べに行った、北京ダックはアヒルだよね。クリスマスには本物をと七面鳥も食べたっけ。
……。結婚してからは、外食は連れて行ってもらった記憶がない。それは私の手料理が好きだからなのかな?と思っていたけれど、もしかして……。お金がもったいなかったのかな?釣った魚に餌はやらないって言葉がふと頭をよぎった。
それから、そうそう、友達と旅行で行った稲荷神社の参道にスズメの丸焼きとか売ってたなぁ。食べる勇気はなかったけれど……。あと、そう、鴨南蛮食べたっけ。
うん、どちらにしても鳥は豚や牛よりも鶏に近い味だった。だからたぶん、鶏料理系なら大丈夫なはずだ。
おっと、考えるのはあとあと。
まずは玉ねぎ用意してと。
「確認、装備とステータスは」
ダンジョンルールは忘れず、装備をチェック。
服にほつれや穴がないか。武器に傷みはないか。
まぁ、武器といっても、午前中は玉ねぎと外した窓の板ですけども。
「ステータスオープン」
うん。いまだに項目がよくわからないので、レベルとMPとHPの確認。
攻撃力、防御力、俊敏性とかなんかいろいろ書いてあるけど、いろいろありすぎてじっくり見る気力が失せます。
ほ、ほら、説明書も、分厚いと読む気がなくなるあれよ、特に、さほど得意じゃない分野で、さらに興味も必要性もないと、見ないでしょ?
見ないよね?
分厚い説明書のほかに、電化製品でもなんでも数ページの簡単なやつもついてるから問題ないし。
いつもありがとうございます。
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