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「じゃぁ、ユーリさんたちも気を付けて」
ブライス君が手をふって去っていくのを、みんなで見送る。
「じゃぁ、片付けしましょうか」
みんなで片付けを始める。
近くの川で水を汲んで色々洗うのはダイーズ君がかってでてくれた。汚れた水は川に流さないように気をつけないといけない。
キリカちゃんは使った荷物を荷物起きにかたずけてくれている。
カーツ君は、寝る準備。私は火の始末と……。
なんで、分担して作業していたのだろう……。
「キリカちゃん、これも一緒に箱に入れといてもらえ……あれ?キリカちゃん?」
荷物の片づけをしていたと思ったのに、キリカちゃんの姿がない。
どこへ行ったんだろう?
カーツ君の手伝いでもしているのかな?
「カーツ君、キリカちゃんこっちにいる?」
「いや、いないぞ」
おかしいな。ダイーズ君のところかな?
別に、今どうしてもキリカちゃんに用があるわけではないのに。なぜか、キリカちゃんの姿を確認しないといけない気がして仕方がない。
「キリカちゃーん、どこぉ~?」
声を出しながらダイーズ君のいるはずの水場へ足を運ぼうと思っところ興奮気味にミノタウロス君が何かを訴えだした。
「もうもうももももっ」
「何?」
足元に、濡れた跡が線になって森の奥へと続いている。そこをタンタンと前足で叩いて、口から何かをミューっと吹き出すジェスチャーをしている。
「もしかして、この水にぬれた線みたいなあとは、ミノタウレスちゃんが牛乳を出した後?」
と尋ねると、肉タウロス君がうんうんと頷いた。
森の奥へと続く跡を視線で追う。
なぜ?森の奥に?
「もしかして、キリカちゃんとミノタウレスちゃんは一緒にいるの?」
うんうんと肉タウロス君が再び頷いた。
「森の奥に行くのに……迷子にならないように?帰って来られるような目印?」
ヘンゼルとグレーテルを思い出して聞いてみた。
肉タウレス君は頷いてから首を横にふる。
どういうことだろう、半分当たっていて半分間違っている?
肉タウレス君が両手を上げて襲い掛かるようなジェスチャーをした。
まさか。
「キリカちゃんとミノタウレスちゃん……さらわれたの?」
うんうんとミノタウロス君が頷いた。
嘘っ。
「カーツ君、大変!キリカちゃんとミノタウレスちゃんがさらわれたって」
「は?うそだろ?」
「街に……ギルドに行って報告しなくちゃいけないよね、それで後を追ってもらって……ああ、ブライス君がもう少し長くいてくれたら……」
指先が震える。
キリカちゃんに何かあったらどうしよう……。
「俺、街に行ってくるよ。ギルドに行けばブライス兄ちゃんいるかもしれないし。いや、いなくてもギルドに助けを求めてくる。ユーリ姉ちゃんはダイーズ兄ちゃんとここで待っててくれ。キリカが帰ってくるかもしれないし」
カーツ君がすぐに街に向かって走り出した。
「分かった。気を付けて行ってきて!」
私も何かしたいけれど、体力のない私じゃかえって足手まといになってしまう。カーツ君の言う通り、おとなしく待っている方がいい。
「もふもふっ」
肉タウロス君がバンバンと地面の牛乳の後を叩いている。
「あっ」
せっかくのキリカちゃんのさらわれた先の目印なのに。
さっきよりも薄くなっている。




