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「ふわぁ、美味しいです。ネギの甘みも加わり最高ですね」
「うん、野菜もうめぇ!」
「キリカ、白菜の葉っぱのとこがすきなのよ」
白菜の葉っぱのとこ?
「これはローファスさんにすき焼きのことは黙っていた方がよさそうですね……」
「本当に美味しいですね」
みんな大満足そうだ。
「本当はね、生卵につけて食べるともっとおいしくなるし、糸こんにゃくというかしらたきというか……や春菊やしいたけ焼き豆腐……もう少しすき焼きで美味しく食べられる物があるんだよ。あとね、すき焼きのあとのうどん」
あ!
うどんだったら、それっぽい物を小麦粉があれば作れるんじゃない?
小麦粉……!パンがあるんだから、小麦粉は絶対にある!うどん、うどん、うどん!
「え?もっとおいしくなるのか?卵ってあれだろ?」
「それはすごいですね。コカトリス……繁殖を成功させないといけませんね」
「キリカ、またすき焼きたべたいのよ」
「うん、今度はうどんを作りましょう。あと、他の具材も見つけたら食べようね」
会話にダイーズ君は入ってこない。
……そうだ。ダイーズ君は今回のダンジョンのためにハンノマさんの依頼を受けて来ているんだった。
「ダイーズ君も、また一緒に食べようね。私たち普段はポーション畑のダンジョンの小屋にいるんだ。時間がある時に遊びに来て」
私の言葉にダイーズ君が嬉しそうな顔を見せる。
「うん。ダイーズお兄ちゃん遊びに来てほしいの。また会いたいのよ」
「俺たちが冒険者になったときに先輩冒険者になるんだよな~これからもよろしく」
キリカちゃんのカーツ君の言葉に、ダイーズ君が照れたように笑った。
「うん、僕もまた会いたいので、遊びに行っていいですか」
「やった!弓教えてくれよ!」
「いいですよ」
「あのね、キリカはやきおにいいの作り方教えてあげるのよ」
「おう、俺はまずい麦を美味しく食べる方法教える!」
和気あいあいと子供達が話をしているのを見て心が温かくなる。
「また……しばらく会えませんね……」
ブライス君が寂しそうな顔を見せる。
そうか。もうブライス君はローファスさんのところへ帰っていくんだよね。冒険者なんだから……もう、一緒に小屋で生活していた冒険者見習いではないのだから当たり前なんだけれど。
確か、ローファスさんは月に1度小屋に顔を出すと言っていた。ブライス君ともこれからはそれくらいの頻度でしか会えないってことだよね。
「気を付けてね……」
寂しいけれど……。
「もっふぅ」
「もうもも」
私が悲しそうな顔をしたからなのか、ミノタウレスちゃんと肉タウロス君が私を慰めるようにすり寄って来た。
なんてかわいいいいこ!そうよ。今度からは小屋に二人が増えるんだ。コカトリスだっている。
寂しがっている場合じゃない。
ふんっと、気持ちを切り替えて、準備していたお土産をブライス君に渡す。
「これ、ローファスさんとブライス君で食べて。これはそのまま食べられるから。こっちは温めて食べてね」
ブライス君に笑顔を見せると、ブライス君も笑顔を返してくれた。
美少年の笑顔は眩しい。




