181
「ブライス君はいつまでいられるの?」
もし、ブライス君もダンジョンに入るなら5人になって、2人一組だと一人余ってしまう。
「出来れば夕飯をいただいてから戻りたいところですが……ダメですか?」
ブライス君が申し訳なさそうに尋ねる。なんで申し訳ない顔をする必要があるんだろう。
皆でご飯食べた方が楽しいし、ぜったい美味しいのに!
「ううん、大丈夫だよ。一緒に夕飯食べれるなんて嬉しい」
私の言葉にブライス君がちょっと頬を染める。
「あ、でもあんまりブライス君だけ私たちと食べてたらローファスさんが嫉妬しちゃうかな?」
「僕だけユーリさんに会ったことを嫉妬すると思ってるんですか?まさか、ユーリさん、ローファスさんの気持ちに気が付いて……」
ブライス君の言葉にぷっと笑いが漏れる。
「そりゃ、気が付いてますよ」
「え?」
「ローファスさんは、美味しい物を食べるのが人一倍好きでしょう?携帯食ってどうしても干し肉や硬いパンだけになっちゃうみたいだと言うのも分かってますし。お前たちはいいなぁ、色々食べられていいなぁって嫉妬するんですよね?」
と、自分で言いながらちょっと嬉しくなって顔がほころぶ。
私が作ったものを美味しいと思ってもらえるのが嬉しい。
私が作ったものを食べたいと言ってもらえるのが嬉しい。
「あ、そういう……ええ、そうですね……。何を食べたんだ、どういう味がしたんだ、お前だけずるい……と、まぁ色々嫉妬して言われるでしょうね……」
ブライス君がちょっと遠い目をした。
うん。たぶん、恨めし気に言いそうですね。
「ブライス君は夕飯食べた後ローファスさんのところに戻るんですよね?」
「はい、そのつもりです。上級冒険者への依頼はまだ達成されていないかもしれませんし、もう依頼が達成されているかもしませんから。達成されていれば、明日からはまたローファスさんとパーティーとして行動することになりますので」
ブライス君の返事を聞いて両手を打つ。
「それなら、何か持って帰れるものを用意するね。持って帰ってローファスさんと食べられる物。持って行ってもらってもいい?」
ブライス君がちょっと表情を硬くする。
「ローファスさんのため、ですか」
ん?
「ブライス君がローファスさんにぶつぶつ言われないように……ブライス君のため……だと思ったけれど、そうだね。ローファスさんのためでもあったわね」
となると、ローファスさんは大量に食べるだろうから多めに用意した方がいいよね。
「僕の……ため……」
ブライス君が何かをつぶやき、手で顔を覆ってしまった。
どうしたんだろう?
「嬉しい……」
何?聞こえないけれど?
「ダンジョンに戻りますっ!」
ブライス君が顔を手で覆ったまま背を向けてダンジョンの中に駆け込んだ。
「あ、私、午後はダンジョン休むので、4人でお願いします!」
と、声をかける。
ちょうど一人ペアがない状態になるし。
ローファスさんが食べる分も色々作ろうと思ったので。
肉は追加でもう少し出してもらおうかな。
「ミノタウロス君、あとでもう少しお肉出してもらっていい?」
ミノタウレスちゃんにも牛乳を追加で出してもらおう。
まずはバター作り。バターなら液体じゃないから持ち帰ってもらいやすいだろうし、パンに塗って食べてもらえばそれだけで美味しい。
難しい調理もいらないしね。
あとはクリームシチューに、バターにした残りの液体と牛乳を使って作る。これはどうやって持って行ってもらおう。器がない。鍋で持って行かれると鍋が無くなってしまう。……うん。




