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「そんなに謝らなくてもいいわよ。何か誤解があったんだよね?ミノタウレスちゃんがさらわれたから助けようとしたとか……ね?」
と、つい。
声をかけたら、ブライス君が慌てた。
「ユーリさん、言葉は分からないんでしょう?また、いつ攻撃されるか……僕がずっといられれば守りますが……あ」
ブライス君が慌てて口をふさぐ。僕が守りますって言う言葉に、私は昔守ってもらうだけでは……となんか言ったことを気にしているのかなぁ。
「ありがとう、ブライス君。でも、大丈夫よ?ミノタウレスちゃんがさっきも肉……ミノタウロスをとめてくれたでしょう?何かあればミノタウレスちゃんがなんとかしてくれると思うわ」
私の言葉に、ミノタウレスちゃんがこくこくと頷いている。
私たちの言葉は理解しているのに、あちらの言葉が分からないのは残念。
「……そうですね……分かりました。でも、念のため……」
ブライス君がポケットから革ひもを取り出すと、ペンのようなものを取り出して光の文字を革ひもに走らせる。
ああ、まほの文字で、付与魔法なんだっけ。
文字を書き終わると、ブラス君は皮ひもを肉タウロスちゃんの首に巻いた。リボン結びではなくコマ結びだ。
「ブライス兄ちゃん、それなんだ?」
「単に強化した皮ひもです。鋼よりも丈夫ですから、巨大化しようとすると喉に食い込みます。このサイズのままならそれほど問題はないでしょうから」
なるほど。
「ミノタウロス君、これ嫌?嫌なら外してもらうけれど……一緒にいるのは無理かもしれない。これをしていれば、一緒にいてもいいって」
一応、肉タウロス君の意思を確認。
だって、完全に……なんていうか、言うことを聞かせるための首輪状態っぽくて、なんだか痛々しい。
肉タウロス君は、問題ないと言うようにトンっと胸を叩いた。
「可愛い」
キリカちゃんは首に巻いた皮ひもがオシャレに見えたようだ。ニコニコして肉タウロス君の頭を撫でている。
「……付与魔法の効力は3カ月です。その後更新するか取り除くか、ダンジョンに戻すか考えましょう」
そうか!一生じゃないんだ。よかった。
「ブライス君、ありがとう!」
色々ちゃんと考えてくれてた。そうだよね。私たちの安全のためとはいえ、奴隷の首輪みたいなものなんて……かわいそうだもんね。十分反省しているみたいだし。
いや、そもそも、モンスターが人間を襲うのなんて、本能とかそういうので反省する必要もないのでは??
あれ?
そもそも、もともと地球の牛も、鼻につけた輪って、引っ張られると痛いから……っていう、言うことを聞かせるための……。あれ?
かわいそうだという感情の方がおかしいのかな?あれ?えーっと……。
ま、いいや。もふもふは可愛い。可愛がるもの。うん。難しいことはどうでもいい。
今は……。
洗った方がいいかなとかかんがえなくてもいい、上等なお肉をたくさんもらった!
その事実しかない!何を作ろうかな。って、さっき食べたバッカリで、また食べ物のことかんがえちゃうなんて。ダメだわ。
「ブライス君、これ、氷魔法で冷やしておいてくれる?」
「ええ、もちろん」
「ミノタウロス君がダンジョンから出てきたってことは、もうダンジョンは安全ってことよね?だったらハズレ魔石集めを再開しましょうか」
このダンジョンにいる予定日数も限られている。
なんだか突然の出来事で中断されていたけれど集めなくちゃね。




