30 ナイスフォロー
「まぁいい、ちょっと来い、他の魔法も見せてみろ。できないなら教えてやる」
ローファスさんがブライス君の腕を掴んで小屋を出て行ってしまった。
レベルが10になったら、魔力の扱い方を練習して魔法が使えるようになるの?
もしかして、私にも、魔法が使えるようになるの?
うわー、すごい!使ってみたい!
うん、がんばる!がんばってレベル上げる!そして、氷の魔法覚えれば、冷蔵庫代わりに食糧保存ができるんだよね!
よし!なんか目標できちゃった。
最低でもレベルを10まで上げる!
とこぶしを握って決意を固めていると、どぉーんと大きな音が小屋の外で聞こえてきた。
な、何?
外を見に行こうと思ったけれど、後ろのかまどでぱりぱりと音が聞こえてきた。あ、米が炊きあがる!
あわてて火を止める。
「おはようユーリお姉ちゃん」
「何だ今の音?外?ちょっと見てくる!」
キリカちゃんとカーツ君が起きてきた。
カーツ君は大きな音の原因を確かめに外に出て行った。
「ご飯のお手伝いするね」
キリカちゃんは、働かざる者食うべからずという私の言葉をしっかり覚えているのか、女の子だからなのか米を混ぜ混ぜと空気を入れてくれている。
ああ、しゃもじほしいな。そうそう箸もほしかったんだ。
ばたんとドアが開いてカーツ君が興奮気味に戻てきた。
「すげーよ、すげー。ブライス兄ちゃん、まだ魔法使い始めたばっかだってのに、火も水も風も土も光も全部使えるんだぜ!魔法レベルが1だからどれも威力はそれほど強くないけど、でもすげーっ!」
魔法が全部?
レベル?
威力?
うーん、分からないことばかりだ。そのうち教えてもらわないと。
「ご飯いらないの?お手伝いしないと食べられないんだよ?」
興奮が冷めないカーツくんに、キリカちゃんがお姉ちゃん口調で言った。
「あ、手伝う!手伝う!何すればいい?ユーリ姉ちゃん」
今日のメニューはご飯と猪肉の生姜焼き。うん、あれが欲しいな。
「じゃぁ、畑からキャベツをとってきてもらえる?」
「了解!」
生姜焼きの添え物でキャベツは必須だよね。
さて、その間にご飯を握って肉をまいてお弁当を作っておこう。肉巻きおにぎり弁当。
おにぎりの中心に生姜焼きの玉ねぎを入れて握る。それに肉を巻き巻き。
作っておかないと、朝食で全部生姜焼きを食べちゃわれそうだもんね。
「キリカも手伝う!」
「じゃぁ、お肉を巻くの手伝ってくれる?」
「はーい」
手に水をつけてご飯をとる。手の平に広げたご飯の真ん中を少しくぼませ、玉ねぎを梅干しほどの大きさうめて、ご飯で包み込むように握る。ぎゅっぎゅと。空気を含ませ硬くなりすぎないように。
いくつ作ればいいかな。
私とブライス君とキリカちゃんとカーツ君のお昼ご飯用と、ローファスさんのお弁当用。
私はおにぎり2つで十分だけど。ローファスさんは2つじゃ足りないんだろうなぁ。一人2個なら5人で10個。
多めに20個作っておけば足りるよね。余ったらおやつで食べてもいいし。
カーツ君がとってきてくれたキャベツを千切りにして準備終了。
「朝ごはんだよー」
ドアを開けてローファスさんとブライス君に声をかける。
あれ?
なんかところどころ地形がおかしいよ?穴開いてるし。
一体、何やったの!この二人!
「はー、いい汗かいたな」
ローファスさんが汗でびっしょにりになったシャツをグイッと引き上げて脱ぐ。
「ぎゃっ!」
いや、男性の上半身裸に照れるほどうぶじゃないのですが、いや、いや、でも、至近距離で生の筋肉むっきーいきなり見たらびっくりするじゃん。
「ぎゃ?」
「ローファスさんダンジョンルール。服脱いじゃダメでしょ!」
キリカちゃん、ナイスフォロー。そうそう。ダンジョンルールです。




