閑話*日本では~奈々視点6
「あの、優莉が何か酷い目に?」
「ううん、違うわよ。優莉ちゃんがいなくなってから、そりゃ酷いものよ。ゴミ捨て一つろくにできないんだもの。流石にベランダにゴミをため込んで匂いがうちにまで流れてきたときには声をかけたけれど……ね。優莉ちゃんに何もかも世話してもらっていたから、本当に何にもできない、仕事しか能がない典型的なタイプだと思うわ。連絡とかもすっかり忘れるタイプね、あれは」
女性の話に、奈々があいまいに相槌を打ち頭をさげる。
「じゃあ、山本さん、お願いします」
「はい。早く戻るといいわね。かわいい赤ちゃんに私も早く会いたいわ」
山本さんが笑顔で手を振りマンションへと入っていくのを奈々は見送った。
いったい、何が起きているのか。
奈々の胸に不安が渦巻き始める。
優莉はどこへ行ってしまったというの。
……家出をするようなことがあるなら、真っ先に私に声をかけてくれると思うのに。
出しっぱなしだった手帳とボールペンをのろのろと鞄にしまい、マンションのエントランス前を後にする。
自動ドアがウィーンと小さな音を立てながら開く。
向こう側に、スーツ姿の男性が立っていた。
すれ違いざま、軽く会釈を交わす。
そのままカギを使って入っていったことから、どうやら男性も住民のようだ。
奈々は、ふと、どこかで男性を見たような気がした。
誰だっただろう。どこで会ったのだろう。
帰りの電車に揺られながら、優莉のことを考える。
里帰り出産なんてありえないのに、旦那は何故そんなウソをついたのか。
いや、もしかすると、旦那の実家にお世話になるっていうことなのだろうか?
確か、あまり頻繁に顔を出すことはないけれど、年に何度かは旦那の実家に行くようなことを言っていた。
だけれど……子供を望まない旦那の子?優莉だって、もし赤ちゃんが生まれるなら私に内緒にする必要はないはずだ。
もしかして、不倫でもした?別の男性と駆け落ちでもした?だとしたら。
だとしても。あの旦那と一緒にいるより幸せになれるなら、私は優莉の味方だ。
最寄りの駅に到着する。
ふと、そのまま家に戻る気分になれずに、駅ビルに入っているファーストフードの店に立ち寄る。
「あ、思い出した……」
ハンバーガーにかぶりつこうとした奈々は、大事なことを思い出して顔を上げた。
すれ違ったスーツ姿の男性。
どこかで見覚えがあると思ったら……。
ついこの間、マンションを売ろうと思うって話をしていた人だ。
マンションって、優莉が住んでるマンションのことだったんだ。
事故物件になる前に売りたいと……。
「まさか……」
そんなことがあるわけない……という否定の言葉を奈々は発することができずにいた。
ども。とりあえず奈々視点、ひとまずおしまいです。('ω')ノ
悩むわ。奈々は、弁護士か警察官がいいなぁ。




