269話 ざっしょく?
「師匠の言ってたことってなんだ?」
カーツ君の問いに、ダイーズ君がミノタウレスちゃんを見た。
「ミノタウレスだったか、ミノタウロスだったかは忘れましたけれど……昔はモンスターではなく、神の使いだったらしいんです」
ん?
「へー、ミノタウレスちゃん、神様のお使いしてるの?すごいのよ!」
キリカちゃんがミノタウレスちゃんの頭をなでなで。
「モフ?」
あ。ミノタウレスちゃん首を傾げた。
「さあ、熱々のうちに食べましょう!今日のメニューは、バター尽くしです!」
太るとか無粋なことは言いっこなし。
「「「「いただきまーす!」」」」
ブライス君が、じゃがパターに手を伸ばした。
「ジャガイモの新しい食べ方ですね。上に載っているのが、ミノタウレスが出す液体から作った、バターでしたか?……う、こ、これは……」
ブライス君が熱々を覚ましながらほくほくと口に入れる。
「なんと表現すればいいんでしょう。コクがあるのにくどくなく、ジャガイモの甘味を引き立て……ああ、なんと美味しい……」
「あのね、おいしいの。じゃがいもなのに、おいしいのよ!」
「本当だよな。ジャガイモなんて毎日食べたいもんじゃねぇと思ってたけど、油で揚げたやつも美味いし、このバターのやつも超うめぇ。毎日ジャガイモでもいい!」
キリカちゃんにもカーツ君にも好評なようだ。
「すごいです、これ……」
ダイーズ君も気に入ったようだ。
次にカーツ君がきのこバターにフォークを伸ばした。
箸を私は使っているけれど、他の人はスプーンとフォークです。
「うんめぇ!きのこもうめぇ!」
カーツ君絶賛。
そうですよね。きのこのバター炒めって、きのこが無限に食べられるメニューだと思うんです!あ、きのこの種類にもよりますけど。
えのき、しめじ、えりんぎ辺りは無限に食べれそう。ああそうだ。きのことベーコンのバター炒めも美味しいんですよね。今度はベーコンを入れたバージョンを作りましょう。
「これは、魚ですか?」
ダイーズ君が、鮭を指さした。
そう、鮭だと思うの。違うかもしれないけど、身の色が、白でも赤でもなく、サーモンピンクだったの!
川で取ったって言ってたから、鮭が産卵のために登ってくる川だったのかもしれない。それを切り身にして……。
「そうよ。ちょっと珍しい魚で、海と川と行ったり来たり……たぶん」
この世界では分からないんだった。同じ種類とも限らないんだった。
「え……、この味は……また、別格ですね」
私も箸を伸ばして鮭を食べる。
「はぁー、おいしい。ふふ、これは、バターと醤油を使っているの。鮭のバター醤油ソテー。なんで、バターと醤油はこんなに合うんでしょう」
和風と洋風の融合。調和。
「本当に、美味しいですね、さすがユーリさんです。どれもこれも最高です」
「ふふ、さすがなのは私じゃなくて、ミノタウレスちゃんね」
ミノタウレスちゃんは、お皿に顔を近づけて、もぐもぐと食べている。しっぽがゆらゆらしているし、人の言葉に反応することもなく一心不乱に食べているから、気に入ってくれたのかな。
あれ?でも、魚も食べてるけど、雑食なのかな?草食じゃないのかな?牛じゃなくて、牛っぽい別の生き物だから大丈夫?
って、今更か。ベーコンも食べてたね。




