閑話*日本では
読み飛ばしてもストーリーには問題ありません。
シャツが洗濯してない。
あいつが出て行ってからもう4日だ。明日の分もない。だが、来週はどうする?
帰ってくるのか?まだしぶとく帰ってこないつもりなのか?
ちっ。
仕方がない。
シャツだけじゃないからな。いろいろと洗濯物がたまっている。たかが選択だ。
あいつなんかに頼る必要なんてない。
部屋のあちこちに散らばっている靴下やタオルを回収して洗濯機に放り込む。
「洗濯なんてスイッチ押しておしまいだろう。最近の主婦は楽でいいな。ほんとう。昔は洗濯は重労働だったから専業主婦が必要だったんだ。今は、ほら、もう終わったも同然だ」
洗剤を入れてスタートボタンを押す。
後は終わるのを待つだけだろう?
洗濯機が回っている間に、買って来た弁当を食べる。
「まずい……」
まずいが仕方がない。他に選択肢がないのだから。
何とかペットボトルのお茶でまずい飯を流し込む。
食後のコーヒーは習慣だったが、それもあいつがいないせいで飲んでいない。
ピーピーっと電子音に、洗濯が終わったことに気が付く。
「もう終わり。洗濯なんて楽なもんだ」
洗濯機を開けると、ドラムにへばりつくように洗濯物が固まっていた。
「ちっ。失敗したな。乾燥機能のついてない洗濯機だった。干さないとダメか」
手を伸ばして洗濯を取り出す。
「何だこれ?」
白い細かいものが洗濯にたくさんへばりついている。バサバサと洗濯物を揺らすとぽろぽろと落ちていく。
「……ティッシュか?くそっ!」
怒りに任せて洗濯物をバサバサと振りながらハンガーに干していく。
靴下は何に干せばいいんだ?
折りたたんである洗濯ばさみがたくさんついてるものを広げる。
一つずつ取り出して洗濯ばさみに挟んでいく。
くそっ、めんどくせぇな。
洗濯機の中をのぞくと、洗濯物がまだ半分ほど残っている。
およそ20分ほどかかってやっと干し終わった。
床にはティッシュの粉砕されたゴミが散らばっている。汚ねぇな。まぁいい。あいつが帰ってきたら掃除するだろ。
次の日、部屋に干していたカッターシャツはすでに乾いていた。
乾いていたが……。
「なんだこのしわくちゃ」
時々取引先に、しわしわでみっともないカッターシャツを着ている人間がいる。出世しないだろうなとそれだけで感じさせるのがこういう身だしなみの不備だ。
くそっ、こんなしわしわなシャツが着て行けるわけがない!
アイロンか。
そうだ、アイロンだ。
どこにあるんだ?アイロンとアイロン台は洗濯置き場の棚にあった。
「時間がないというのに。くそっ。今日は新聞チェックはパスだな」
よくドラマなんかでドジな主婦がアイロンでシャツを焦がすシーンがあるが、あんなことを俺がするはずもない。
スイッチを入れてシャツにアイロンを当てる。
線が入る。しっかり伸ばしてアイロンを当てなかったからな。
ぴしっと線がプレスされてしまった。
袖はどうやってアイロンするんだ?ボタンが邪魔だ。襟は……。
慣れてないからだ。くそっ。シャツを1枚アイロンするのに30分もかかってしまった。30分もかけたのに、全然ぴしっとしていない。何が違うんだ?
……干してあるシャツはあと5枚。アイロンをかけるだけであと何時間かかるんだ?
そうだ。クリーニングに出せばいいんだ。
……恥だな。自分でクリーニングを出している姿を見られたら恥だ。既婚者なのにどうしてだと思われたら何といえばいいのか。
妻が家出中だなんて言えるわけがない。
そうだ、たしか、宅配クリーニングというサービスがあったんじゃないか?
それなら誰かに見られる心配もない。
検索をかけて舌打ちする。
カッターシャツを宅配クリーニングに出すだけで1か月に1万円もかかる?
ご覧いただきありがとうございます。
今回もむかつくお方の登場です。
うん、主婦の仕事って意外と大変ね。これを業者に頼んでいくと一体全体合計いくらかかるのかしら?と思って前回の靴磨き代と宅配クリーニング代とだけで3万です。次はハウスクリーニングがいくらかしらべてみましょうかね?




