267話 水筒で作れるかなー
それに、確か牛乳は牛乳でも加工してない牛乳からならバターが作れるっていう話も聞いたことがあるし……。絶対にできないということでもないよね。
ミノタウレスちゃんからのしぼりたて牛乳なんだから、未加工であることは間違いない。なんの加工もしてない。
バターができなかったらごめん……。
心の中でダイーズ君に謝り、作業に戻る。
とはいえ、キリカちゃんが用意してくれた野菜に、カーツ君がさばいてくれた鳥の肉やら骨やら入れて、じっくり煮てよいブイヨンを作る。できたら野菜と牛乳と塩を入れてクリームシチューにするわけだから、火の番と灰汁とりくらいしか仕事がない。
……3人でやっていても仕方がないんだよね。
とてとてとて。
「ミノタウレスちゃん、あんまり近づくとあぶないのよ」
え?
とてとてと足音がしたかと思うと、足元にはミノタウレスちゃんの姿が。
火の近くは確かに危ない。
「モフゥ~」
まだ全然出来上がりまで時間がかかるけれど、ミノタウレスちゃんは食べたそうに鍋の中をのぞこうとしている。
うーん。出来上がるまでまだまだかかる。
夕飯になっちゃいますよね。
そういえばそろそろ昼ご飯の時間だっけ。
昼ご飯……どうしようかな。夜はパンとシチュー。それからあとでまた何か動物を狩ってもらって肉でも焼きましょうか。
昼は……。
朝は3つ目の部屋に万全の体制で臨むために、ベーコンサンドにしたんだ。
うーん。昼ご飯……か。
久しぶりにジャガイモメインで食べる?あ、牛乳あるなら、ジャガイモと牛乳でマッシュポテト。
マッシュポテトができる。
それから、そうだ。皆大好きポテトフライを作ろうかな。いや、さすがにマッシュポテトとポテトフライっていう昼ご飯は駄目じゃないかな。
えーと、マッシュポテトを作るとして、揚げ物するならポテト以外。
ああ、そうだ。野菜がいっぱい食べられるかきあげ……って、マッシュポテトとかきあげじゃぁ駄目だよ。やっぱりかきあげはご飯と一緒に食べたいです。
おや、食材は増えたものの、逆に作れるものが増えすぎて悩むことになるなんて。嬉しい悲鳴。
と、嬉しい悲鳴を上げてる場合じゃない。
「うわぁ!」
って、悲鳴?
ダイーズ君が声を上げた。
「ユーリさん、何か僕は失敗してしまったかもしれません」
青い顔をしたダイーズ君が、水筒を手に頭を下げる。
「失敗?」
「はい。なんだか、こう、中に何か入り込んだような、振った感じがおかしいんです」
差し出された革袋の水筒を手に取り、振ってみる。
ぽこん、ぽこん。
何かの塊が中で動いている。
「牛乳しか入れてなかったはずなのに、明らかに異物感がありますよね」
ダイーズ君の申し訳なさそうな顔。
一方私はというと、期待に胸が膨らむ。
水筒の蓋を開けて、中を覗き込む。
って、暗くてよく見えないなぁ。
鍋に中身を出すことにした。
とくとくと流れ出る液体の色は少し濁った透明。
「あれ?白くない」
ダイーズ君が首をかしげる。
「こ、これは……」
もしかして、成功なのでは?未加工牛乳だったから、バターができたのでは?
水筒から液体部分、ホエーを取り出す。あとは、バター。
バター。
……さかさまにしても、でてこない。
水筒の口を見る。
「ああああっ!」
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11月15日にコミカライズ版4巻発売となります。
新連載もよろしくです。あっちは転生でも転移でもないので、味噌の扱いに困ってます。ユーリさんと出会えれば全部解決しちゃいそうなんだけどなぁwwwwちょうど、ユーリさん、味噌欲しいって言ってるし。




