266話
「ユーリお姉ちゃん、牛乳余るよ」
あ、そうか。鍋になみなみと牛乳があっても、具をたくさん入れて作れば当然牛乳の量はそこまで必要亡くなるよね。鍋には半分以上牛乳が残ってしまっている。
牛乳の料理、何があるかな。
「鳥を取ってきました」
ダイーズ君とカーツ君が戻ってきた。
早い。
「すげーんだぜ、ダイーズ兄ちゃん。すんげー遠くを飛んでる鳥に、スパーンって矢を当てて」
「随分調子が良かっただけですよ。あの距離だと、3回に1度は外します」
……あれ?もしかして、ミノタウロスが出て逃げるときに補正値つくやつ……食べたから、今、命中率100%なんじゃぁ……。
や、やばい。
さすがに、当たりすぎたら何かおかしいってばれちゃうよね。
「あの距離で3回に1回しか外さないってすげーよ。かっこよかった」
「ありがとうございます」
やばい、やばい。えーっと。
「あー、大きな鳥ね。これ1羽で充分かなぁ。あはは、ほ、ほら、えーっと、野菜もたっぷり入れたし……早速さばいてもらってもいい?」
弓を使った狩りを終わらせることにします。
不振がられる前に。
「うん、わかった」
カーツ君がすぐに鳥をさばきくために動き出す。
「えーっと、僕は他に何を手伝いましょうか。……もう少し何かを狩ってきましょうか?」
うひー。
ダイーズ君勤勉だもんね。そうよね。何かしてたいよね。
当たりに視線を走らせる。
ダイーズ君に頼む仕事……それなりに時間がかかる仕事。
補正効果、命中率100%が切れるまで気をそらせそうな仕事ないかな……。
目の前の鍋の牛乳が目に入る。
あ、そうだ。
水筒使えば……。
革袋でできた水筒に牛乳を入れる。
「じゃぁ、ダイーズ君、この水筒を振ったり、振り回したりしてくれない?」
ダイーズ君が水筒を受け取り目を点にする。
「え?振り回す?……えーっと、こ、こんな感じですか?」
ダイーズ君が紐を持って、頭の上でぐるぐると水筒を回し始めた。
「そうそう、あと、こう上下に振ったりとか、とにかくひたすら振ってほしいの」
「なぜ、振るんですか?何かと混ぜるためでしょうか?」
ダイーズ君が首をかしげる。
「ふふ、逆なの。混ぜるんじゃなくて、30分くらいずっとやってると、分離するのよ。脂肪分とホエーに」
「脂肪分?ホエー?えーっと、なんだかよくわかりませんが、頑張ります」
よし。よし。
ダイーズ君への仕事を作ることもできたし。
本当に脂肪分とホエーに分離したら……出来上がるのは……。
脂肪の塊、その名も……バター!
牛乳に次いで、バターもゲットできちゃうなんて、なんて……。
ああ、バターで何を作ろうかな。
ぶんぶんとすごい勢いで水筒を振り回し始めたダイーズ君を見ながらニマニマしていると、ハッと間違いに気が付いた。
違う!
違う!
バターの材料は牛乳だけど、家で振って作ろうと思ったら、生クリームを使うんだった!
牛乳からじゃ作れないんだっ!
懸命に水筒を振り回しているダイーズ君に、今更間違えたと伝えにくい……。
詳細は、牛乳でバターを作るで検索検索。




