閑話*日本では~奈々視点2
まいど。閑話です。
「だからさ、急いで、事件が発覚する前に売っちゃいたいんだよ。殺人事件が起きたマンションなんて住んでいたくないだろ?」
「発覚って、どういうことだよ」
殺人事件……。
奈々が体を固くした。
死……。
優莉は大丈夫だよね?数か月連絡が取れないくらいで大げさかもしれないけれど……。
でも、優莉にはもう、家族は旦那一人しかいない。両親もなくなっていて兄弟もいない。親しく付き合っているような親戚はいない。
それから、自由に連絡も取りにくいこともあって、友達として今も付き合いがあるのは私くらいかもしれない。
……旦那側の家族や親せきは確かにいるけれど……。
もし、優莉に何かあったとして、私に連絡は来るだろうか?
結婚式に一度だけ見た優莉の旦那の顔を思い出す。
そう、会ったのはその時だけだ。
妻の友達に会おうという気が全くない……。結梨に何かあっても、私は知らないままになってしまうんじゃないだろうか。
奈々は胸がぎゅっと潰れる気持ちになった。
来なければ、家まで行ってみよう。
一度も足を運んだことは無かったけれど。
年賀状のやり取りはしているから住所は知っている。
もしかしたら倒れて寝込んでいるのかも。入院しているのかも。
死んではいなくても、大変な状態になってるのかもしれない。
優莉のことだから、迷惑はかけられないと、私に連絡をしてこないのかもしれない。
私の方は、いつも色々話を聞いてもらって、落ち込んだり怒ったりしても、優莉が励ましてくれたり慰めてくれたりして……いつも、助けられているのに。
「それがさ、ゴミ捨て場がマンションにあるんだけど」
「死体でも見つけたか?」
「ばか、そんなあからさまな状態ならすぐ警察来るだろ。そうじゃなくて、うち、犬飼ってるだろ?」
「は?犬?その犬が地面に埋まった死体でも見つけたか?」
「いやだから、死体が見つかればすぐに警察来るだろうって、違うって」
時計の針は、12時58分。
奈々は店の入り口に目をやる。
来ない。
今日も、優莉は来ないんだ……。
どうしちゃったんだろう。
いつも読んでくださりありがとうございます。




