265話
鍋を運ぼうと手に取ってから、もう一度鍋を下に置く。
「ごめんね、こんな風にロープで結んじゃって……あの、外しても、ここにいてくれる?」
私ったら、自分の欲望だけで、よく考えるとミノタウレスちゃんをダンジョンから連れ出しちゃった上に、ロープで縛って自由を奪うなんて……。
こんなかわいいもふもふに、何てひどいことを……。
どうしよう。外したとたんにダンジョンに戻っていくかもしれない。
って、それは仕方がないよ。
「あのね、その、ダンジョンに帰ってもいいの。ここにいてくれなくても、あの、時々、その、牛乳がもらえれば……」
ミノタウレスちゃんが、私の顔を見てから、ダンジョンの入り口に顔を向けた。
やっぱり、住んでたところに帰りたいよね……。
「モフ、モフモフモフッ、モフフフ、ウモウフゥ、モフモフモフ、モモフモフ、ウモーウモーフッウモモッ」
な、何?
なんか突然勢いよくミノタウレスちゃんが何かを話始めた。
ご、ごめん。
ミノタウレスちゃんは私の言っていることをよく理解してくれるのに、私の方は、ミノタウレスちゃんが何を言っているのかさっぱり分からないんだけど……。
(注釈*もう、あんなところになんて帰りたくないモ。お前は弱くて何もできない。俺が守ってやってるんだ、食事の準備をしろクズと、いつも雄に馬鹿にされ続けて肩身の狭い思いをしてきたモ。うんざりモ!……とか言ってます)
「ダンジョンに戻る?」
と、尋ねると、激しく首を横に振った。
「私たちといてくれる?」
と、尋ねると、今度は首を縦に振る。
「嬉しいっ!」
ぎゅっと思わずミノタウレスちゃんに抱き着く。
「あ、牛乳が欲しくて嬉しいんじゃないよ?ミノタウレスちゃんがもし牛乳を出さなくても、一緒にいられるのは嬉しいからね?」
背中をなでなで。
ああ、もふもふ。幸せ。
「モウフゥ」
私もと、ミノタウレスちゃんが言ってくれているようだ。
「うわぁ、すごいのよ、真っ白な水なの」
キリカちゃんが、鍋に溜まった牛乳を見て驚きの声を上げた。
おっと、こうしてはいられないのでした。
「じゃぁ、楽しみにしててね」
ミノタウレスちゃんのロープを外す。
それから牛乳が満たされた鍋を運ぶ。
「これはね、牛乳っていうの。美味しいのよ。ほんのり甘みもあって」
「飲めるの?」
キリカちゃんが私の顔を見る。
ああそうか。そうだ。
料理に使うことばかり考えていたけれど、牛乳として飲むこともできるんだ。
えーっと。大丈夫かな。
日本だと滅菌殺菌なんかいろいろ処理されて家庭に並ぶ。
煮沸したほうがいい?
取りあえず、ブライス君が戻ったら鑑定してもらおうかな。そのまま飲んでも大丈夫かどうか。今後のこともあるし。
それから、もしそのまま飲むとやばそうならば、今回はブライス君に浄化解毒魔法とかお願いしよう。
それ以降はやっぱり基本の煮沸だよね……。
あと、牛乳が弱いとお腹下るんだよね。なんだっけ、乳糖を分解する酵素が少ない人はお腹下すんだよね。
みんなは大丈夫かなぁ?一応、体に合う人と合わない人がいてと説明はしなくちゃ。
「飲めるけれど、後でね」
てなわけで、シチュー作りの続きを。
……と、シチューにパンでしょ。他に何を作ろうかな。
ご覧いただきありがとうございます。
ミノタウレスちゃん……の、過去……汗
ハズレドロップ品に【味噌】、連載開始からもうすぐ2か月です(*'ω'*)ご覧いただけるとうれしゅうございます。カニとか出てきます。ヤンデレ君が暴走気味ですがwww




