閑話*日本では=奈々視点=
大丈夫。旦那サイドじゃないよ。でも、旦那サイドとばしてる人には意味わからないよ。
「マンション売ろうと思うんだ……」
「え?まだローン残ってるだろう?」
スーツ姿のサラリーマンが2人。
休み時間だろうか。ファーストフードの店で、一番安いセットを食べながら会話をしていた。
「ああ、ローンな、あと半分……売った金で払うからそれはいいんだ」
「大丈夫なのか?中古だとマンションの価格ってがくっと落ちるだろ?」
ふと聞こえてきた会話。何も盗み聞きしようと思ったわけではない。
奈々は、一人で店にいる。
待ち人がまだ来ないからだ。
「今日も……来ないのかなぁ……」
奈々は店内の時計を見て小さくため息をついた。
結婚した親友との約束。
毎月第2火曜日にお茶しようという約束。
あまり頻繁に連絡が取れないため、行けないときだけ連絡をする。行けるときは連絡不要という約束だ。
約束の時間、12時をすでに40分もすぎている。
先月も、先々月も、連絡もなく親友は現れなかった。
これまで、10年……。連絡もなく来なかったことなんて一度も無かったのに。
知り合いの子供を預かっていた時は、2年ほど会えなかったけれど。子供を預からなくなってからは、また毎月会うようになった。
「今日は、ちょっと贅沢してアップルパイも買っちゃおう」
ニコニコしていた親友の顔を思い出す。
貧乏しているわけではないのに、節約していた。自由になるお金が無いのは、見ていて明らかだった。
無駄使いをするとすぐに旦那に叱咤されていたようだ。だから、いつも、買い物で貯めたポイントで支払いをしていた。一番安いハンバーガーとドリンク。
奢るよと、一度だけ声を行ったことがある。でも、彼女は少しだけ寂しそうな顔をして笑った。
「いいよー。普段はちゃんと食べてるから、心配しないで。毎日手作り料理。むしろ、ごめんね。ポイント使える店にいつもしてもらって……」
あの寂しそうな顔の意味は何だったんだろう。
専業主婦で、毎日手料理。自由になるお金は少ないけれど、それでもポイントを貯めて時々そのポイントで楽しむ。
奈々が再び時計を見た時には、12時50分になっていた。
「あと、10分……」
待ち合わせは12時だけれど、13時までに来なかったらそれ以上待たないというルールもある。
……なんで、来ないの、優莉。
先月も、先々月も連絡もなく来なかった。しかも、その後「連絡できなくてごめんね」の連絡もなかった。
そして、今日……も、来ないなら……。
何があったんだろう。
優莉は今時携帯電話もスマホも持たされていない。固定電話でしか連絡は取れない。何度電話をしても、優莉は出ない。
「もったいないって言われてもさ、一刻も早く引っ越したいんだよ」
「なんで?」
「……実はさぁ……ちょっと怖い話なんだけど、もしかしたら、近々、あのマンション、事故物件になるかもしれねぇんだよ」
「は?事故物件?」
不安をかき消すために、サラリーマンの会話に奈々は耳を傾けた。
「そう。事故物件って、部屋がじゃなくて、あのマンションの別の部屋がなんだけど……それでもさ、あのマンションで殺人事件が起きたとか言われたら、価値が下がるだろう」
「殺人事件?」
「しー、声を落とせって」
殺人事件?
奈々って誰だよ。
読んだら分かったよね。
マタギになりたいって彼氏がいる友達だよっ!
ところで、しばらく本編週1、閑話週1での更新になります。なんと週2.
連載を追っている人にはその状況なのですが、まとめて読む人で、閑話飛ばしたい人は、1話飛ばしでごめんね。
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