263 ミノタウレスちゃんはかわいいです
「えーっと……」
どうしようとミノタウレスちゃんを見る。
つぶらな瞳で、ミノタウレスちゃんが私を見てる。
か、か、かわいい。
「モフゥ?」
ミノタウレスちゃんが首を傾げた。
私が何か言おうとした言葉の続きを待ってくれてるのかな?
か、か、かわいい。
「あの、えーっと、ご飯を作ってるんだけれど……」
果たして言葉が理解できるのか分からないけれど、話かけてみる。
「モッフゥ、モッフゥ」
おや?
突然興奮した様子で前足……をバタバタと上に上げたり下に下げたりし始めた。
これ、喜んでる?
えーっと……、まさか……。
「ご飯」
「モッフゥ!」
「ご飯」
「モッフゥ!」
……か、か、か、かわいい!
ご飯って言葉に反応する犬みたい。サイズ的にも犬感半端ないし。なんか、なついてくれそうだし。犬なの?この世界の犬的存在なの?そうでしょ?
ねぇ、そうだと言って!
思わず両手をのばしてミノタウレスちゃんを抱っこして、なでこなでこもふまわす。もふもふっ。なでまわすんじゃないのよ、もふまわすの!
もう、白い液体まみれになったってかまわないよ!
もふりたいの!
ああ、そう。子供を預かっていたし、主人に言ってもダメだと言われるだろうから言わなかったけれど……本当は犬が飼いたかった。
ペットなんて無駄なものに金なんて出せるかと……主人は言いそうで。そんな言葉は聞きたくなくて言えなかったんだ。
「モ、モ、モ、モ、モ、……」
あ、白い液体出さないどころか、甘えるようなしぐさをし始めた。
いやーっ、もう、可愛すぎて、やばいんです。
ああ、幸せってこういうことを言うのね。言うのね。言うのよ。
「ユーリお姉ちゃん、野菜これでいいの?」
はっ!
キリカちゃんの声で我に返る。
そうでした。食事の準備中で、キリカちゃんもカーツ君もダイーズ君も頑張って働いてくれているのに……。
私ったら。大人なのに。子供達だけ働かせて、一人もふもふを堪能するなんて……なんて、堕落した大人。
でも、もふもふには抗えないの。いや、抗わないと……。
「うん、キリカちゃんありがとうね」
「えへ。だってね、ダンジョンルールだから。ちゃんと働かないと食べちゃだめなの!」
うぐ。
心に矢が突き刺さるようだ。働いてない私……。
「ウモーーーッ」
唐突に腕の中のミノタウルスちゃんが叫んで腕からすり抜けた。
「ウモ、ウモ、モフモッ」
四つん這いになって、後ろ足で、土を蹴っている。
何?どうしちゃったの?
私の服の裾を加えてくいくいと引っ張り出した。
さ、散歩?
散歩に行きたいってこと?
「邪魔しちゃメよ」
キリカちゃんがミノタウレスちゃんを小さな子をたしなめるように叱った。
「ウモフゥ、ウモフゥ」
邪魔してないよーというように、ミノタウレスちゃんが首を横に振る。
うん、なんか、言葉しっかり分かってるよね、これ……。
ご無沙汰本編……。今回は単にミノタウレスちゃん可愛い話になってもうた。いや、でも……ご飯に反応するミノちゃん、これ、確実に、同じ匂いがする。ローファスさんと同じ匂いが……なんか、いつまミノVSローファスが始まりそう。当然ユーリが「ローファスさん、ミノタウレスちゃんを虐めちゃだめですっ!」とか……あああ、目に浮かぶようだ。あわれなローファスさん。
================ちょいと書きかけていた別シーンを=============
そういえば……日本の気候と違って、ここって湿気が少ないなぁと思った。
もしかして、あれが作れる?
失敗するかもしれない。でも、でも、作ってみたい。
日本で食べると、高かったんだ。本当に高かった。焼肉の何倍もの値段がした。
「おーい、ユーリ、どうだ、狩ってきたぞ!今日のは大きさはいまいちだが、その分若いから柔らかそうだぞ」
どすんと、軽自動車ほどの大きさの巨大な猪のような動物を小屋の前に置くローファスさん。
「また……肉が増えた……」
思わずぼそりとつぶやく。
ダンジョンの中も、乾燥小屋も、それから急きょ増設した(ローファスさんが喜んで作り、それに対抗するようにちょうど顔を出したセバスティアンさんが隣にそれよりも大きなものを建てたため、2つある)燻製小屋にも、干し肉や燻製肉の製造途中の肉がぶらぶら、ぶらぶらぶらぶら、ぶらぶら……。
「あはは、ほら、俺、しばらく依頼で帰れなくなるからな?そうなると、肉が足りなくなると困るだろう?」
……たぶん、10年食べ続けても食べ終わらないくらいの肉、ありますけどね?
というか、そもそも、肉は食べなくても困らないといえば困らないです……。
「大丈夫ですよ、肉が食べられなくても、今は卵もありますし。牛乳も飲めるようになったので」
にこりと笑うと、ローファスさんが両膝をついた。
「肉、食べられなくても、困らない……?」
あ、泣きそう。
「いえ、いえ、私は困らないですけど、成長期のカーツ君やキリカちゃんにはしっかり食べてもらわないと困るから、あの、肉、大事です!」
って言ってみたものの。
よく考えたら、キリカちゃんもカーツ君も私が来る前は、自動販売機もどきから出てくるパンとジャガイモしか食べてなくて、栄養補給にポーション飲んでれば大丈夫だったわけだから……。
肉、本格的に要らなくない?
「だよな、肉、大事だよな、じゃぁ、もう一頭」
と、背を向けて飛び出していきそうなローファスさんの背中に声をかける。
「あ、もういいです。さばいてもらっていいですか?早速焼きますから、食べてください」
もう、いらないってば。いらない。
完成した干し肉や乾燥肉も食糧庫にたっぷりある。
セバスティアンさんに渡す分を抜いてもかなりの量。
ギルドに売って、それから……。消費するために毎日毎日干し肉や乾燥肉食べてもいつなくなるやら……。
「お、おお!もしかして、あのうまいやつつけて食べるやつか?」
ローファスさんのいううまいやつっていうのは、焼肉のたれ。
醤油にニンニクとジンジャーエール(砂糖とショウガ)と酒と玉ねぎで作るもの。
本当、ニンニクって有用よねぇ。唐揚げも美味しいけれど、焼肉のタレが作れちゃう。ふふぅ。
ただ、玉ねぎのすりおろしがちょっと手間がかかるので……。なんせ日本のようにフードプロセッサーがあるわけじゃないし、すりおろすためのおろし器がないから。なんとなく似たもので代用しているものの、やはり専用の物が欲しい。穴があいていてすりおろしたものが下に落ちていって、それから、えーっと、どんな形がベストかな?山葵とかはサメ肌みたいにざらざらでこぼこだけでもいいけれど。うーん。
ハンノマさんに絵をかいて頼んだら作ってもらえるかな?取っ手がついていたほうがいいよね。
それから……。と、それは後々。とりあえず準備をはじめよう。
今日は久しぶりの焼肉。
「キリカちゃーん、カーツくーん、玉ねぎとキャベツとトウモロコシとかぼちゃお願い。あと、ご飯も」
ローファスさんがふひふひと笑っている。
「ブライスのやつ、自分がいない間に焼肉食べたって知ったらうらやましがるかな」
まさか、ローファスさん……。焼肉食べたんだぞうらやましいだろうと、ブライス君に自慢する気なんじゃぁ……。
大人げない……。というより、ブライス君はそこまで焼肉にこだわりはないと思う……。焼肉食べたことが自慢になる相手といえば……。
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