番外編 ローファス視点 中編
ユーリにプレゼント……あ!
そうだ!頼まれていたんだ!
「酒だ、酒をくれっ!たくさんだ!」
カウンターに向かって叫ぶ。
酒樽が欲しいと言っていた。
お礼に幕の内弁当もらえるんだ。
幕の内弁当……どんな弁当だろうか。さぞ、美味いんだろうなぁ。
ぐふふふ。
「おい、待て、ローファス、どういうことだ」
マニクがポカーンと口を開けた。
カウンターに酒の入ったジョッキが差し出される。
「違う、そうじゃない、俺の欲しいのは、樽だ!」
「おい、ローファス、急に帰りたくなくなったのか?どういうことだ?もし大事な人を怒らせてしまったならな、こうだ、こう!プレゼントを両手いっぱいに抱えて、ドアノックしたあとはこうしてドアがあくまでたっているんだ!」
マニクが頭を腰より下に下げた。
「そうだ、ドアが開いたら『すまん、許してくれ、俺が悪かった』と、そういうんだ、な?」
ん?
マニクもフップも何を言っているんだろう。
それ、奥さんを怒らせたときの対処法じゃないのか?
「樽で欲しかったら酒屋へ行ってくれ」
「おお、そうか。分かった」
ポケットから酒代を取り出しカウンターに置く。
「マニク、フップ、それ飲んでくれ。俺は急いでるから!」
カウンターに残されたジョッキを眺めて首をかしげるマニクとフップ。
説明しろという視線を感じるが、それどころではない。
酒樽。
ユーリが契約魔法を持ち出してまでも欲しがる品だ。
色々バタバタしていたからと言って、今まで忘れていた俺はなんと愚かなのだろう。
待ってろユーリ。立派な酒樽を持って行ってやるからな。
いくつ欲しいんだろうか?
酒樽を使って料理を保存するという可能性もあるな。
いや、それより、あれだ。
もしかしたら忘れて遅くなっていることをユーリは表情に出さないけれど怒っているかもしれない。
なんだ、怒らせたらどうするとマニクとフップは言っていたか?
両手いっぱいにかかえて?
樽は両手で1つしか抱えられない。いや、上に積み上げればもっと持てるな。いっぱい……いくつくらいだろう。
それあから頭を下げてすまんと謝る。
ん?樽を抱えたままじゃ頭を下げられないじゃないか?
いったん置かないとダメだよな。いや、樽を抱えたままドアの前で頭を下げて待つ方法がどこかにあるのか?
と、違う、マニクもフップも奥さんを怒らせたときの対処法だ。
ユーリは俺の奥さんじゃない。そうだ、うん、そう。もっと大切な存在だ。
あれ?いや、奥さんが大切じゃないっていう意味じゃないぞ。奥さんを持ったことがないからどれほど大切に思うのか俺には分からないんだ。今まで恋人関係にあった人間と比較するしかないが……。
恋人だった女たちを100とすると、ユーリの大切さは、あれだ。えーっと、……うん、例えにくいな。
恋人だった女たちがF級冒険者だとすると、ユーリはS級だ。
いや、待てよ?キリカやカーツやブライスもS級だろう?おや?
うーんと首をひねっても、これ以上いいたとえが思い浮かばない。うーん。
「おや、ローファスか。こんなところで会うとは珍しい」
考えことをしながら酒屋に向かうと、不意に声をかけられた。
「王都に何の用があったんだ?」
「指名依頼だ。それがなきゃわざわざこんなところまで来るもんか!
苦虫をかみつぶしたような顔になっていたのだろう。
目の前の背の低い男……ドワーフのハンノマがかっかっかと笑った。
「なんだ、まだ実家に顔を出すのを嫌がって寄り付かないのか?坊主」
うっ。
ハンノマが、昔のように「坊主」と呼んだ。懐かしい……が!
「ハンノマ、俺はもう立派な大人だ」
と返すと、ハンノマがニヤリと笑う。
いつもありがとうございます。
終わらなくて中編になってしまった。
ハンノマさんとローファスの昔の話は書籍何巻かの番外編に書いたんだけど、そういう昔からの関係みたいなのっていいですよね。ローファスは色々な大人に育てられたんですよね(*'ω'*)
以前に番外編ばかり続けるなと感想をいただいたことがありますが、申し訳ありませんがもう1話か2話か、続きます(*'ω'*)




