261 ブライス君のしてほしいこと
ダイーズ君が口をぽかんと開けた。
「た、確かに……。街を歩いている人にいきなり友達になってくださいなんて言いませんよね。獣人が歩いている時だけ近づいて友達になってくださいっていうのはおかしな話ですよね」
ダイーズ君がうんと頷いた。
「本当に、ユーリさんはすごい人です。勉強になります」
「知れば知るほど、ユーリさんは素晴らしい人で……いつまでも僕はユーリさんに追いつけない……」
いやいや、まって、ブライス君っ。
「わ、私のほうがよっぽどブライス君に追いつけないよ?まだ冒険者見習いだし、魔法とか全然使えないし……。あ、そうだ、ブライス君は独学で冒険者見習いの時に魔法を勉強していたんだよね?私にもできるかな?」
ブライス君がふっと笑う。美少年ってなんでこう、ほほ笑みが絵になるんだろう。
「僕でよければ、教えますよ?」
「ほ、本当?ブライス君に教えてもらえるなんて、なんかそれだけでうまく魔法が使えるようになりそう!」
思わずブライス君の手を取る。
氷魔法、私も使えるようになるかな?
リリアンヌ様が使える人は少ないから、教えられる人も少ないみたいなこと言ってたよね。
ってことはさ、氷魔法を教えてもらえるチャンスってめちゃくちゃ貴重な話なんだよね?
ブライス君に教えてもらえるなんて、本当にラッキー。私、幸せ者だよ。
「え、あ、いや、うまく教えられるかどうかは……その……」
ブライス君が頬を赤らめて視線を落とした。
「キリカも教えてほしいのよっ!」
「俺も俺も!ブライス兄ちゃん魔法教えてくれよ!」
「あ、あの、僕もできれば……」
ブライス君が、もちろんですと返事をする。
「あ、でもダンジョンルール……してもらうばかりじゃだめなんだよね……。ブライス君、教えてもらう代わりに、私に何かできることないかな?」
ブライス君の顔を覗き込む。
「ユーリさんに、してもらいたいこと?」
びくっと体を引いて、手を引っ込めた。
あ、手を取ったままだったんだ。
「ご、ごめんなさい、えっと、その、5年は待つつもりで、あの、その」
は?
「5年?私がそのころならもしかして冒険者になってるかもしれないから?」
冒険者になった私にしかできないお礼だろうか?
「いえ、そうではなくて、あーっと……な、何でもないんです。本当に、その、ああ、もう、頭冷やしてきますっ」
ブライス君が立ちさてしまった。
「ユーリ姉ちゃんなら、縫物とか何かお礼に教えてあげられるだろう……俺は何もない」
「キリカもなの……」
「ああ、僕もです……」
3人が落ち込んでしまった。
「だ、大丈夫よ、例えば、キリカちゃんとカーツくんは私と一緒に料理作ってるから、料理のこといろいろ覚えるでしょう?だからブライス君には覚えたことを教えてあげればいいと思うの。それからダイーズ君は……」
ダイーズ君は、えっと、えっと。視界に手にもった弓が目に入る。
「弓とか、何か得意なこと教えてあげればいいんだと思うけど……」
言ってみて、なんか苦しいなと思った。
いるかな、だって、ブライス君に弓。
謎である。
ブライス君はいったい何をしてほしいと思ったのか。
ご想像にお任せしまぁぁぁす。てへ。




