260 獣人差別
「サイズにもよるけれど、お肉がこれくらいあれば……えーっと、ちょっと面倒かもしれないけれど、取れたら1羽ずつ持ってきてもらえるかな?カーツ君、ダイーズ君が持ってきた鳥さばいてもらえる?今回は骨も使うから」
「おう、わかった!あれだろ、鶏がらスープ作った時のやつな!準備は任せてくれよ!」
カーツ君がすぐに頷いてくれる。
「え?骨も、食べるんですか?確かに、食べられる骨もあると聞いたことはありますが……あ、もしかして、耳とかしっぽとかありますか?」
へ?
ダイーズ君の言葉に思わず頭を押さえる。ま、抑えてもないんだけど。
キリカちゃんが身構えた。
骨も食べる獣人を想像したんだろうか。なんだろう。犬?狼?ハイエナ?
獣人を差別する人もいるという話を思い出す。
ダイーズ君がそういう人だとは思いたくないけれど、田舎の村では偏見がある人が住んでいることもないとは言えない。
「どう見てもないですよね?」
ブライス君がキリカちゃんをかばうように素早く対応する。
「そうですよね。あればすぐにわかりますよね。師匠に、都会には獣人がいると聞いたことがあって。街でもなかなか見ることがないから……師匠の話は本当なのかな?って思って」
いない?
いるよね。……あ、確かにあんまり見ないか。キリカちゃん以外で、見かけたのっそんなにないかも。キリカちゃんも耳だってわからないし、しっぽ出てないし。街で時々フードかぶっている人がいるから、ああいう人たちがそうなのかも?
「なんで、獣人を探してるんだ?」
カーツ君が警戒するようにダイーズ君に尋ねた。
「師匠が言うには、獣人はとても身体能力に優れていて、その動きは人にはとてもまねできない。けれど、とても勉強になることが多いと。一緒に訓練するだけで、能力が格段に上がるとも。だから」
ダイーズ君の返事に、カーツ君が緊張を解く。
「なんだ、訓練の相手を探してるのか」
ダイーズ君が首を横に振った。
「いいえ。めったに人をほめない師匠が、ある時、昔出会った獣人がとてもいいやつだったとほめたんです。だから、僕も会って、その……友達になれたらなって……」
ダイーズ君がちょっと恥ずかしそうに笑った。
ふっと緊張の糸がほぐれる。
友達になりたいから会いたいのか。
「師匠のことが好きなんだね。ダイーズ君は。でも、師匠の言っている獣人とダイーズ君が会う獣人は別人でしょう。同じようにいいひととは限らないよ?」
私の言葉に、ダイーズ君がはっとなる。
「あの、ユーリさんは、失礼ですけど、獣人に差別が?」
ああそうか。ダイーズ君は差別されることもあるっていうのも知っているんだ。
「ううん。私も、ブライス君もカーツ君もキリカちゃんも、それからローファスさんも、だれも差別なんてしてないよ。差別もしてないけど、特別視もしてない。同じ人だと思っているから、獣人でもそうじゃなくても、仲良くなって友達になれる人もいれば友達になれない人もいると思っているの。獣人だからって特別に考えてないって……いうか」
獣人だけど私は差別しないからねと思うことがすでに差別のような気もする。
差別しないように差別しないようにと、はれ物に触るように、気を使って接するのも変な話だし。
ダイーズ君が口をぽかんと開けた。
いつもありがとうございます。すいません、サブタイトルの通し番号おかしいことに今気が付きました。
(´・ω・`)




