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めんどくさいので未成年ってことで

 そんなバカな……。

 ハローワークから出て、やっと現実が見えてきた。

 ここ、私が足を踏み入れたハローワークじゃない。ビルも車も全部なくなっちゃってる。

 正真正銘、中世ヨーロッパ風剣と魔法のゲームっぽい世界だ。ゲームの中なのか異世界なのかは分からないけど……。

 私の住んでいた日本じゃない。

 一人で、本当に一人で何とか生きていかなくちゃいけないんだ。お金も無ければ頼る親族も友達もいない。

 これから紹介してもらう仕事が生命線だ。

 ローファスさんが、荷台付きの馬車を持ってきた。

 御者台に並んで座る。

「あの、私に紹介してくれる仕事なんですけど……いったい、どういう仕事なんでしょう」

「ああ、5歳児にでもできる簡単で安全な仕事だから安心しろ」

 ……やけに5歳児を強調するけれど、さすがに私、5歳児よりももう少しましな仕事ができると思うんですけど。

「ポーション畑で、ポーションを収穫する仕事だ」

 ポーションって、ゲームでは回復アイテムとしてよく出てくるやつだっけ?飲むと傷や病気が治るという。

「あの、それで給料は」

「がんばり次第だな。ポーション1つ収穫すれば、パン1つは買える。だいたい一日に少ない子でもポーション5つ。多い子ならポーション10は収穫できるぞ」

 えっと、ポーション1つがパン1つ?パンって100円くらい?がんばっても1000円?

 あれ、それって生活できるの?パンは食べられるとしても……。

「住む場所?ああ、ポーション畑で働いている間は、小屋に寝泊まりすればいい。街から畑まで歩くと半日かかるからな。みんな小屋に寝泊まりして仕事して、月に1度家に戻るような生活だ」

 ほっ。

 当面の寝場所は大丈夫そうだ。

「なぁ嬢ちゃん、嬢ちゃんはどこから来たんだ?このあたりじゃ見ない顔だろう?」

 あ、やっぱりか。

 日本人顔は珍しいんだ。皆彫りが深い西洋風な顔つきだもんな。背が高い人も多いし。

 ってことは、定番の「日本人は若く見える。年齢が分からない」が発動されてるから嬢ちゃんって言われてるってことかな……。

 日本人の中でも、私って小柄だし童顔だから若く見られてたから。いったいいくつに見えてるんだろうか。

「ローファスさんこそ、何者なんですか?」

 今更だけれど、全然知らない男の人についてきちゃって、私、大丈夫なんだろうか?

「ん、まぁ、ただの冒険者のおっさんさ」

 おっさん?

「おいくつなんですか?」

「あー、いや、いくつだったかな、そろそろ30か31か……」

「え?」

 まさに同じ年くらい。

「いや言いたいことは分かる。よく言われるんだ。さっさと身を固めろとな。30にもなって独り身で、婚姻の腕輪してないからな……」

「早く結婚したからって、いいとは限りませんよ」

 こっちの世界ではどうかは知らないけれど。私は世間を知らないまま結婚して、後悔しかない。

 幸せだった時間もあるはずなのに、思い出せない。

「そうだろう、そうだろう。嬢ちゃんは小さいのによくわかってる!」

 ち、小さい……。

「ローファスさん、私のこと何歳だと思ってるんですか?」

「あ、すまん。そうだった。子供たちと同じに扱うなって言われてたんだ。俺が考えてるよりも年上ってことだよな」

 うーんと考えて、15歳くらいだろうか、いや、ひょっとしてもう成人してるとか?だがいくらなんでもレベル1のステータスで成人なんてありえないよなとか、いろいろぶつぶつと言っている。

 同じ年ですよと言ったらどんな顔をするだろうか。

「成人してるかしてないかで、何か変わるんですか?」

「成人すれば、酒も飲めるし結婚もできる」

 日本と変わらないなぁ。

 酒は特に飲みたいわけじゃないし、結婚はもうしてるんだよな。

 こっちで結婚なんかしたら重婚だよね。いや、結婚する気はないけどなんか知らないうちにプロポーズされててそれを受けてたなんてことになると厄介だ。握手を求めるのが求婚で、手を握るのがプロポーズを受けるなんて風習でもあったら間違いなく、知らないうちに結婚しちゃうわ。

 成人してないことにしておけば、間違って結婚することもないよねぇ……。って、モテてもないのになんの心配してるんだ、私は……。


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