158 私、平均値ですらない
「えーっと、そうだね。ダンジョンルール。それぞれができることをする。力を出し惜しまないなんていうのもあるんだよね?」
ブライス君がちょっと肩を落とす。
「そ、そうですね、ダンジョンルール……」
「ブライス君がいる間に、じゃぁ氷を作ってもらおうかな。ああ、でも……。
氷を直接牛乳の近くに置いたら牛乳が冷えすぎちゃう?昔の氷を使った冷蔵庫ってどんなんだっけ。
確か、上下二段になっていて、上に氷を置いて、冷気を下に流す感じじゃなかった?
なるべく外気を遮断して、氷も長持ちさせるには……発泡スチロールみたいな空気を含んだ素材があるといいよね。
それで箱を作ってその中に……。
何かいいものないかな。うーん。
そもそも、だれがどうやって作るの?
カーツ君を見る。次にキリカちゃんを見る。それからブライス君を見る。
……うーん。ダイーズ君は未知数。
できれば保温効果が高い…そう、ステンレスボトルみたいな空気の層がある構造……って考えると、やっぱりハンノマさんとかプロに頼んだ方がいいよね。
「ちょっと今は必要なものがそろわないからむつかしいかな……。準備が整ったら、その時はお願いしてもいい?」
「ええ、もちろんですよ」
綺麗な顔が嬉しそうにほほ笑む。
ダイーズ君がポカーンとした顔をしていた。
「す、すごい。村にいたときには知らないものがいっぱいあるんですね。牛乳、生クリーム、初めて聞きました」
ブライス君がクスッと笑った。
「ダイーズ君、違うんですよ。僕も初めて聞いたり見たりするものばかりです。ユーリさんが特別なんです。すごいでしょう」
「そうなのよ、ユーリお姉ちゃんが特別で、すごいのよ!」
「ユーリ姉ちゃん本当にすごいんだぜ」
三人ともほめすぎ。ほめすぎ。
そもそも、私がすごいんじゃないよ。きっと日本人だったらみんなハズレポーションが醤油だって気が付くと思うし……。
私が特別なんじゃないよ。
「すごいんですね。ユーリさん。そういえば、僕の名前に似た大豆も初めて聞きました」
ニコニコと笑うダイーズ君。
ううう。心が痛む。
私は平凡というか、むしろ体力的には平均以下……。そして、身長も平均以下。バストも平均以下……って、やめよう。落ち込む落ち込む。
レベルだけは、平均レベルまで上がったけど。
それは、普通の人の平均で、まったく冒険者見習いの平均ではないんだよね……。
「で、そのぎーにう?で何を作るの?」
キリカちゃんが期待に満ちた目を向けてくる。
う、ううん。どうしようか。料理に牛乳……子供が好きな味で……。
生クリームじゃなくて牛乳を使った料理……。お菓子以外で……今ある材料でできる物……。
「じゃぁ、シチューを作りましょう!」
野菜も肉も小麦粉もあるし。たっぷり煮込んで牛乳いれたらクリームシチューができるよね。
生クリームを分離する前の牛乳なら、脂肪分も多いだろうからきっとおいしくできる。
「シチュー?え?別に牛乳なくても作れるんじゃないのか?」
ああ、そういえば前にビーフシチューもどきを作りましたね。まだ牛肉が手に入らないから、もどきだけど。
ご覧いただきありがとうございます。
もう、令和2年だって知ってました?あまり令和と書く機会がないので、うっかりしますよね。
2つ前の元号って、もう歴史なのかな。現実じゃなくて。
平成時代の大正、昭和時代の明治、大正時代の江戸……みたいな風に考えると、歴史っぽいですよね。
令和からすれば、もう昭和は歴史……ちょ、いや、まって……




