155 同期
「ブライス君がいるから、全然平気」
攻撃といっても、白い液体浴びせられるだけだし。
とはいえ、決していい気分じゃないので、できるだけミノタウレスを刺激しないように皿を手を伸ばして持ち、ゆっくりと近づく。
「ミノタウレスちゃん、ご飯をどうぞ」
じりじりと近づく。ミノタウレスちゃんは、隙あらば攻撃するぞという目でこちらから片時も目を離さないけれど、あと1mで皿がミノタウレスちゃんのところにおけるというところで、視線がさらに向いた。
「モフゥ、モフゥ、モフゥ」
鳴いた。
ミノタウレスちゃんが鳴き声を上げた。
今まで攻撃してくるときに声を上げたことはない。大丈夫かな?
そのままちかづき、ミノタウレスちゃんの足元に皿を置く。
「モウゥ=~」
嬉しそうな声を出し、ミノタウレスちゃんがお皿の中のサンドイッチをほおばり始めた。
か、かわいい。
「モ、モ、モ」
語尾に音符でもついてそうな鳴き方をしながら、しっぽがふるふると揺れている。
う、牛も嬉しいとしっぽが揺れるのかな?
っていうか、どう見ても牛だよね。
サイズは柴犬。体形はぬいぐるみ。……まるまるしてる。そして、見た目は……白地に黒の地図模様。……ホルスタインです。
皿が空になると、まんまるなお目目をこちらに向けた。
「モフゥ、モフゥ」
「なぁに?もっと食べる?ちょっと待っていてね」
と、お代わりを皿に置いた。
もきゅんもきゅんとおいしそうに食べるミノタウレスちゃん。
皿が空になると、ぷほっと、小さなげっぷ?息を吐き出して、ぽふっと地面に臥せって眠ってしまった。
「流石ユーリさんですね……」
へ?
すぐ後ろにブライス君が立っていた。
「本当にすごいのよっ!ミノタウレスがおとなしくなったの!」
おとなしく……っていうか、単に食べてお腹いっぱいになって寝ただけだよね?
目が覚めたらまたブシャーッてするかも。
「なぁ、ブライス兄ちゃんはどうしてここに来たんだ?」
カーツ君の質問に、ブライス君がにこっと笑う。
「偶然、僕の同期であるダイーズ君が3人と同じ依頼をこなしていると知って、様子を見に」
え?ダイーズ君が同期?
冒険者に同期とか、そういうのあるの?
「ブライス君心配させちゃったかな。僕は、ブライス君ほど優秀じゃないから……」
というダイーズ君の言葉に、ブライス君が首を横に振った。
「ダイーズ君が能力不足なんて思ったことはありませんよ。本当のことを言えば、たまには同期と一緒に活動してみたいと思ったんですよ。それから……」
ブライス君が私の顔を見た。
「会いたかったんです。単に」
どきっ。えーっと、うーんと。
きれいすぎる顔で、言われるとドキッとするよ。
「なぁ、よくブライス兄ちゃん一人でこれたな。ローファスさんも来るって言わなかったのか?」
ブライス君が何か嫌なことを思い出したような表情を見せる。
「しつこかったですよ。俺も行くって」
「なのに、なんでこなかったの?」
キリカちゃんが首をかしげる。
「S級冒険者への指名依頼が入ったんですよ。S級とA級の上位者への使命なので、僕に出番はありませんからね。僕はその間ユーリさんたちのところへ行っていますと言ったら……俺もユーリんとこ行くとか言い出して……」
カーツ君が笑った。
「ローファスさんなら、俺もユーリの作ったご飯が食べたいって言ったんじゃないのか?」
カーツ君の言葉に、ブライス君がむっとする。
ども。番外編覚えておりますか。同期です。
さて、今年も残すところあと……。早い物です。
来年もよろしくお願いします。続き、まぁ、うん、書ける時に書きたいように、書いていきます。




