154 乾燥魔法
キリカちゃんが頭からぽたぽたと白いしずくを垂らしている。
……その後ろに、びしょ濡れのカーツ君とダイーズ君の姿もあった。
あ……。
「おやおや、みんなミノタウレスの攻撃を受けていたんですね」
ブライス君が何でもないことだと、順に浄化と乾燥の魔法をかけた。
「あ、あぶないっ!」
魔法をかけ終わったブライス君の背後に、ミノタウレスが近づいている。
「ブライス君、逃げてっ!」
後ろからブライス君をかばうように、タックルをかます。……そう、まるでタックルのようになっちゃったんです。ほんとは、ほら、かっこよくとんっと押し出して自分が犠牲になるみたいな、ああいうシーンを思い受べていたんだけど。
私の非力と、ブライス君の体感の強さがあだとなり……。
タックルで押し倒すような形になってしまった。
ええ、押し倒しました。そして、全然かばえなかった。二人の上からぶしゃー。
……ぽたりと落ちる水滴がブライス君のほほに落ちた。
「あ、あの、ユーリさん、えっと」
私の体の下で、ブライス君が固まっている。
「ごめんね、結局二人とも濡れちゃったね……」
ううう。
「いえ。全然平気です。えっと、それより、まさかスタンピードですか?なぜ、ミノタウレスがダンジョンの外に?」
ブライス君が起き上がるとすでに私を背にかばうような姿勢になり、ミノタウレスに目を向ける。
「だ、ダメ、だめだからね!」
ブライス君に後ろから抱き着く。
「ユッユーリさんっ」
ブライス君なら一瞬で、ちょちょいのちょいと、呪文を唱えてせっかくのミノタウレスちゃんがやっつけられちゃうっ。
「あの、ユーリさん、えっと、その……もしかして、ミノタウレス……を、ダンジョンから連れてきたんですか?」
賢いブライス君は、ミノタウレスに巻かれた包帯と、首をロープにつながれた姿を見て察してくれたようだ。
「そうなの。うん。そうなの」
「一体、なぜ?」
ブシャー。
「距離を取りましょうか……」
ブシャー。
ああ、もったいない。もったいない。
その白い液体、そんなまき散らすなんてもったいない。
うーん。どうにか手なずけられないかな……。あ、そうだ。
ポケットから……って、着替えちゃったからポケットがないよっ。
「【浄化】【乾燥】」
「ありがとう、ブライスくん。ちょっと着替えてくる」
急いでテントに入ってパジャマから着替える。それからポケットの中……はもう少ないので。
干し肉とパンを取り出し、挟んで食べやすいサイズに切って、それから皿にのせる。
ダンジョンの中で、キリカちゃんたちにと投げたサンドイッチを横取りするように食べてたんだから、お腹がすいてるんだよね?
ん?モンスターってお腹がすくのかな?そもそも、何食べるの?
まぁ、さっき食べてたことは間違いないから、大丈夫だよね?
テントから外に出て、ミノタウレスに近づく。ダンジョンの出入り口から見て左側の木にロープの端をつないである。
テントなど滞在する場所はダンジョンの出きり愚痴から見て右側にあり、距離が保たれている。
「ユーリさん、近づくと、また攻撃されますよ」
ブライス君の忠告に、ふっと笑って見せる。
おや?ブライス君が乾燥魔法を覚えた。ってことは、干し肉とか乾燥させる系の……
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