152 いじめはダメ
うんしょっと。サイズは柴犬。……重さも柴犬なのかな。とりあえず、んー、10キロ前後といったところか。
10キロなんて全然平気。
日本で面倒見ていた子供たちなんて、20キロ近くになるまで抱っこして歩いてたんだもん。
あ、体力なくてもね、子供を抱っこして歩くのは別の何かが働くんだよ。うん。まぁ、無理しすぎると次の日どっと疲れが出てしまうんだけど……。
ぎゅっとミノタウレスちゃんを抱っこすると、ブシャーッと再び体から白い液体をまき散らす。
うはー、素敵。こんな小さな体で、無限の液体吐き。
ミノタウレスちゃんをかかえたまま、すたたたたっと、ダンジョンの外までかけていく。途中何度か背中に蹄の感触があったんだけど、完全に無視です。ポップコーンを何度かぶつけられた感じ。あ、うーん、教室で消しゴムちぎってぶつけるいじめっ子がいるくらいの感情しかわかない。
あ、いじめはダメだよ。痛くないとはいえ、何度もしつこく授業で邪魔するのは立派ないじめ。
繰り返し相手の嫌がることをするのは、いじめ。遊びじゃないの。楽しいのは自分だけ。やられてるほうは、いじめ認識。
「よかったのよ、ユーリお姉ちゃんも出てきたの!」
「大丈夫だったのか?って、ユーリ姉ちゃん、ミノタウレス連れてきたのか?」
「危ないですよ。液体を吐いた隙に逃げるだけの害のないモンスターとはいえ、モンスターには違いありませんから」
にまぁと笑う。
あ、そうだ。その前に。
「ねぇ、この傷、治してあげるにはどうしたらいい?矢を抜いてなんか巻いておけばいい?傷薬とか何かある?」
私の言葉に、ダイーズ君の目が丸くなる。
「え?ミノタウレスの傷を治す?」
カーツ君とキリカちゃんはコカトリスの前例もあるので、目を輝かせた。
「ユーリお姉ちゃん、飼育するの?うんと、卵産むの?」
いや、卵は産みませんよ。……いや、モンスターだから生むのかな?私の知ってる哺乳類は産まないけど……。
「なぁ、美味しいのか?」
はい。もちろんですっ。
「し、飼育?卵?美味しい?えーっと、ユーリさん、僕は冒険者になりたてでいろいろ知らないことが多いのですが、ミノタウレスは捕獲対象だったんですか?申し訳ありません、モンスターはすべて討伐対象かと……。矢を放ってしまいました……」
ぺこりとダイーズ君が頭を下げた。
「あ、違うの。えっと、たぶん、捕獲対象とかじゃなくて、私が勝手に捕まえてきたの」
ダイーズ君が申し訳ないという顔のまま、ガサゴソと荷物をあさる。
「傷薬と、包帯です。あと、それからロープはいりますか?」
ロープか。うん、そうだね。足が速いし逃げたら捕まえられないんだろうなぁ。
「ありがとう」
「傷の手当しておけばいいのか?俺がしといてやるから、ユーリ姉ちゃん着替えてくるといいよ」
「あー、そうだね。確かに……ちょっと、あっちで着替えてくる」
水の魔石も持って、町で買ったパジャマ代わりの服を持って森の奥に行く。
服を脱いで水の魔石を手に掲げる。
「シャワー状に【水】」
と水の魔石に命じると、水がシャワーのように出てきた。
「冷っ」
あー、火の魔石と一緒に使って、お湯にしてから浴びればよかった。とはいえ、うーん、簡易シャワーみたいなの作れないかなぁ。うーん。
体中に浴びた、ミノタウレスの吐いた液体を洗い流す。いや、洗うってことでもなく、ただ体から流すだけ。
……やだなぁ。頭とか絶対臭くなりそう。
「あー、ブライス君に会いたい」
ブライス君がいれば、浄化魔法をお願いできるのに。
えーっと、一応書いておこうかな。
白い液体に過剰反応しないようにお願いしたい(´・ω・`)




