150 雄か
取り落とす自信が!もっとキャッチボール的なことを練習しておけばよかったぁ!
飛んできた私の武器……まぁ、リングがいくつかついたただの木の棒なんですけどね。いや、ただのじゃないよ。ヒノキの木の棒だよ。
ヒノキのいい香りがするんだよ。防虫効果もあるんだよ。木は呼吸してるから、湿気からも守ってくれるし、大切な着物を入れる箪笥は……あ、ヒノキじゃなかった。桐か……。うぐ。まぁ、ちょっとした間違いです。てへ。
「わっ!」
飛んできた木の棒キャッチできました。
す、すごい!私、なんかいろいろ成長してる!
「ありがとうダイーズ君」
にこっと笑う私の顔を、カーツ君が青ざめた表情で見た。
「ユーリねえちゃん、危ないっ!」
え?
後ろからなんか、コツンと頭に衝撃があった。
コツンっていうか、うーん、表現するならば、ポップコーンが飛んできて当たった感じ?
振り返ると、でっかい蹄が目の前にあった。
あら、もしかして、頭撫でられた?
「大丈夫、……か?」
カーツ君がポカーンとしている。
「あー、うん。……あ、なんか、この木の棒についてるリングにも補正値あったっけ……?防御力の補正値が上がってるからかな?痛いどころか、頭を撫でられるほどの刺激も感じない」
ほっと、ダイーズ君が胸をなでおろした。
「よかったです。えっと、では、どうしましょうか。倒しますか?ユーリさんが盾役になってくださるなら、何とかなるかもしれない」
とダイーズ君が問うと、キリカちゃんとカーツ君が目を輝かせた。
「俺、頑張るぞ!」
「キリカも、頑張るのよ!」
いやいや。
「3人ともダンジョンから外に出てね。無理に倒す必要もないと思うの。念のため、これで補正値つけて」
と、さっき3人のために作ったプチサンドイッチをキリカちゃんに向かって投げる。
ぱくんっ。
へ?
プチサンドイッチは、キリカちゃんの口に到達する前に、横から飛び出した何かによってかっさらわれた。
「カーツ君っ!」
今度はカーツ君に向かって投げる。
再び、横から何か……柴犬みたいなサイズの塊が飛び出してきて、ミニサンドイッチをかっさらった。
「何、いまの……」
「新たなモンスターが出たようですね」
ダイーズ君が弓を構える。
あ、新たなモンスター?
背後のモンスターとは別に?
「もしかして、ミノタウレスかもしれませんね」
ミノタウレス?
ダイーズ君があたりを警戒しながら口にした。
「あ、そうか、ユーリお姉ちゃんの後ろにいるの、ミノタウロスだもんな。ミノタウロスがいるところって、ミノタウレスも出ることがあるって」
はい?ミノタウロス?
後ろを振り向く。 今まで蹄が目の前に迫りすぎていて、まともにモンスターの姿が確認できなかったけれど。
巨人……えーと、2階建ての家くらいありそうな大きな牛っぽい二足で立ち上がってるモンスターの姿がそこにあった。
うわ、デカっ!
っていうか、牛、2足で立ち上がった巨大牛。
……牛?
牛ってことは……!
牛乳!
コカトリスが鶏みたいに卵産んだんだから、ミノタウロスが、牛みたいに牛乳出すって可能性もあるよね!
「あ、雄……」
残念ながら、牛乳出しそうな胸はしていなかった。うぐぐぐぐ。
でも、牛肉みたいな味するのかな?




