149 逃げるが勝ち
でさ、あのさ……。
ネックレス、ローファスさんが私にプレゼントすると言ってくれた話じゃないけど……。
なんか取れなくなっちゃったから、仕方がないよね?奪い取ったわけじゃないよね……。
と、とにかく、……。
「ネックレスのおかげで助かったぁ~」
ほっと息を吐きだす。
とりあえず、慌ててぽっけに手を突っ込んで、小さな干し肉のかけらを小さなパンで挟んで、小さな小さなサンドイッチをパクリ。
料理認定されたから、これで、補正値Maxゲット。
えーっと、たぶん、呪いのネックレスの補正値も倍。
さっきの攻撃が防げたんだから、その倍の強い攻撃を受けても大丈夫。うん。よし。
くるりと敵に背を向けて、ぽっけから出した干し肉とパンでミニサンドを作る。
「キリカちゃん、カーツ君、ダイーズ君、これ食べて、ダンジョンから逃げて!」
ダンジョンの外にモンスターが出てしまう可能性もある。スタンピートが起きた時がそうだった。
だけれど、通常モンスターは、それぞれの領域……縄張り?みたいなのがあって、出るダンジョンは決まっているし、縄張り外のダンジョンには入ることができないって言ってた。自分から進んでダンジョンの外に出ることもほぼないって認識でいいんだよね?
もし、頻繁にダンジョンからモンスターが出てくるなら、どのダンジョンにもモンスターが出てきた時のための見張りとかいるだろうし、もっと世界中にモンスターが散らばってるだろうし。
それに、クラーケンとか食べられるモンスターが、すでに食料の対象として広まっていたっておかしくないんだもんね。
まぁつまり、ダンジョンから逃げ出せば、いくら強いモンスターが出たからって何にも問題ないってこと。
幸いにして、このダンジョンは、入り口から、直線で、3つ目の部屋に入っただけだ。
距離にして100mか200mか。大した距離ではない……。
あ、わたしにとっては200mはずいぶん長い距離ですけど……。キリカちゃんやカーツ君やダイーズ君の運動能力からすれば、大した距離じゃない。
私は……う、うん、レベルが上がってHPも上がって、体力も上がった今なら、あ、俊敏性も補正値で底上げされてる今なら……た、たぶん、全力疾走で走り切れる気がする……スピードは、自信ないけど……。
え?前の私?う、うん、200mって長いよね……。ねぇ?全力疾走するには、200mって……って、すいません、体力なさすぎですね。ううう。
まぁ、とにかく、とにかく、3人ならさっさとダンジョンから外に出られるはず。
念のため、ステータス補正値つければ俊敏せいも上がって間違いない。
私は、足が遅くて足手まといだけど、めちゃくちゃ防御力だけはあるようなので、大丈夫。盾になって、それから3人が逃げたの確認してからダンジョンから出るから。
ふふ。「私は大丈夫だから!先に行って!」ってやつですよ。なんか、かっこいいよね。うん。ローファスさん、素敵なネックレスをありがとう。
……プレゼントでもらったわけじゃないけれど……。
「ユーリお姉ちゃんは?」
キリカちゃんが叫んだ。
「うん、なんかこれと、これのおかげ、あと補正値倍で、なんかすごく防御力高くて平気みたい」
そう。ネックレスだけじゃなくて、セバスティアンさんに買ってもらったオレンジ色の長ベストも結構防御力あるみたいなんです。
「ユーリさん、これを」
ダイーズ君が私の武器を拾って投げてよこした。
うわぁ!投げよこすのは、キャッチが、キャッチに自信がないのですよぉっ。




