248 呪いの正体
「え?これ、まさか魔力増強剤ですか?」
「ああそうだ。一時的に魔力を増やすことができる薬な。知ってると思うが、成長幅がないと飲んでも増えない。ブライスならまだ魔力は上がる成長幅あるだろ?それ、t飼えば高度鑑定できるんじゃないか?」
ローファスさんの言葉にブライス君がちょっと嫌そうな顔をする。
「飲んで魔力があまり増えないと、成長の限界が分かってショックなんですけどね……」
う、そうか。
便利なようで怖いな。
「ふっ。ブライス、レベルが10になったばかりで魔力が何百もあるやつの限界が早々来るわけねぇだろ。その魔力増強剤飲んでも増えるのはせいぜい2~3000だから、全然お前の限界は超えないと思うけどな」
すごい……。
魔力、私、今、一桁ですよ……3桁とか4桁とか……。わ、私もせめて、二けた後半にはなりたい……。
「ったく、ローファスさんのその自信はどこからくるのか……。分かりました。呪いのネックレスの高度鑑定ですか?それとも、別のレアアイテム?何を鑑定させたいんですか?」
ローファスさんがふっと笑う。
「色々だな。魔力尽きるまで適当に鑑定してくれ」
「ったく……」
ローファスさんの言葉に、ちょっと呆れたような顔を見せながらも、ブライス君は魔力増強剤を飲んだ。
「【高度鑑定】って、ちょっといくら魔力増えても1回しか使えないみたいですよ」
というブライス君の言葉に、ローファスさんが私を見た。
「こっからは実験だ。ユーリ、MPポーションを使った料理を持ってないか?」
「ありますよ。ちょっと待ってくださいね」
何かのために少しずつ持ち歩くことにしているのである。
干しブドウにMPポーションを振りかけて、パンにはさむ。
ブドウパンみたいな感じで、簡単だけれどなかなか美味しく食べられるんですよね。
「ありがとう。ほら、ブライス食え。食ってステータスで魔力を確認してみろ」
と、ブライス君が簡易ブドウパンを食べた。何を確かめさせるつもりだろう?
「ステータスオープン、ああ、なるほど。魔力増強剤で、一瞬だけ魔力が上がるんじゃなくて、魔力上限値がしばらく上がるようですね。とすると、MPポーションと魔力増強剤を組み合わせれば、何度か高度鑑定魔法も使えそうですね」
ブライス君の言葉に、にやりとローファスさんが笑った。
「効果が分かれば、ギルドにいくつか売りつけることもできる。頼んだぞブライス」
「マジか?すげーな、ブライス兄ちゃん!」
「じゃぁ、何か高度鑑定するのよ!これ、これ見てほしいのよ!」
キリカちゃんが指さしたのは、赤い石のついた、呪いのネックレスと言われていたものだ。
「【高度鑑定 結果表示】」
うん、不思議なことにステータスもそうだけど鑑定結果も文字が読めないのに分かる。だって、日本語に私の目には映っているから。
強い防御能力のあるネックレス。あまりにも強い防御能力があったため、過去に身に着けた王女に手を出せる男性が一人もおらず生涯独身となってしまった。結婚を夢見ていた王女の怨念が呪いとなり、このネックレスを身に着けた者は結婚できない呪いにかけられる。
なんだ。結婚できない呪いなんだ。
もう結婚してる人はどうなるのかな?離婚しちゃうっていうことかな?
ブライス君も鑑定結果を読み終わったようだ。
「呪いが命に係わるようなことじゃなくてよかったですね。ほかも鑑定してみましょう」
と、ブライスくんが棚から何を鑑定しようか品定めを始めたら、キリカちゃんがネックレスをつかんだ。
「キリカちゃんっ!駄目よ!」
「え?でも、命に係わるわけじゃないんだよね?ちょっとだけね、ちょっとだけならいいよね?」
キリカちゃんの目がキラキラしてる。
うーん。気持ちは分かる。小さな子って、宝石とかネックレスとか指輪とか、とにかくアクセサリー類好きだよね。
「ちょっとだけなら……いいかな?ちょっとだけよ?」
「うわーい。はい、ユーリお姉ちゃん、つけてあげるのよ」
え?私?
いつもありがとうございます。
結婚できない呪い……。
う、うん。そういうアイテムもあるよね。防御力強化……虫が寄り付かないというより寄り付けない……。
10月末にコミカライズ版2巻発売になりました!
そして、小説版4巻は11月9日発売です。よろしくお願いいたします。




