閑話*世界の不思議
どうも。
コミカライズの連載がニコニコ静画で始まっております。コメント欄にご都合主義世界とありましたので、そのご都合の歴史を書いてみました。
昔、昔、その昔。
この世界ひ一人の勇者が現れました。
人々が望み、人類の希望として異世界から勇者を召喚したのです。
召喚された勇者は、この世界に降り立つ前に、神様に会いました。
「すまぬ、世界を救ってくれ……。元の世界に帰ることはできぬが、三種の神器を与えよう」
勇者は神様から、剣と鏡と石をもらいました。
「他に何か望みがあるか?聞いておきたいことがあるか?」
勇者は尋ねます。
異世界のご飯は美味しいか?と。
神様は答えました。
「味覚は人それぞれなので、美味しいと思う人間もいれば、美味しくないと思う人間もいるだろう」
そこで勇者は質問を変えました。
「じゃぁ、その世界に醤油や味噌はあるか?」
神様は少し待てと勇者に言い、勇者が住んでいた国の食事についてのデータを収集した。
「なるほど、醤油や味噌というものが何なのかは理解した。故郷の味を再現したい……それが美味しい物ということじゃな」
勇者が頷いた。
「残念だが、日本に比べて、今から行く世界は料理はあまり発展しておらぬ。美味しいものはある。取れたての甘い果物もある。柔らかくてとろけそうな肉もある。じゃが、料理としてはいまいち発展しておらぬ」
勇者が尋ねた。素材が美味しすぎて料理する必要がないからなのか?と。
神様が首を横に振った。
「ポーションがあるからじゃ」
「ポーション?」
勇者はその単語に少し心が躍った。
日本には存在しない不思議な飲み物。
「地球では、生きるために食べる。食べるものがなければ、毒だろうがなんだろうが食べて生き残ってきたじゃろう。どれほど見た目が気持ち悪い生き物だろうと、生きるためならば食べてきた。あれほど刺激が強くて、他の動物には毒だとしか感じられないハバネロもわさびも胡椒も……何もかも食べものとしてしまった。ウニも、タコも、誰が初めに食したのか……」
勇者は確かに、初めに食べた人は勇気があったよなと思うし、ワサビもよくあれをまた食べようと思った人がいたなとは思う。
生きていくために、なんでも食べられれば食べるという時代を経なければ、食材とならなかったものもたくさんあるのだろう。珈琲だって、火事で燃えてしまった豆がもったいなかったから使ったら美味しかったという歴史から焙煎が生まれたとも……。
「この世界ではな、ポーション……そうじゃな、日本円で100円くらいの価格のものを3日に1度飲めば生きていけるんじゃ。生きるために何かを必死に食べなければならないということがない。しかも、そのポーションは、誰もがお金がなくてもポーション畑に行けば手に入れることができる。よって……食に対して貪欲な歴史がなかった……もちろん、美味しいものが食べたい、美味しいものに目がない者もいる。いや、多い。だが、美味しいものを作るための下地……工夫してなんでも食べるという貪欲な歴史がなくてな……」
「あー、そういえば、味噌も醤油も納豆もヨーグルトも発酵食品って全部腐った感じですもんね……チーズや鰹節はかびてるし……。腐ってもかびても食べようと思った人がいなきゃ、それらもなかったわけか……」
勇者ははぁーとため息をついた。
美味しいものは期待できないってこと……かぁ……。
「いや、ワシが美味しいものを用意しよう。醤油も味噌も、それから何が欲しい?コーヒーか?チョコレートか?カレールー?それから?うむうむ、わかったわかった。口に出さずとも、思い浮かべればよい。ほうほう、なるほど、ずいぶんたくさん……大丈夫じゃ。うむ。流石にいきなり世界に流通させるわけにもいかぬが、ちゃんと手に入るようにしておこう。大丈夫じゃ、すぐに見つけられる。勇者が通るであろう場所に……」
つまり、そういうことで、よくある「神様のおかげ」っていうとんでもご都合主義ですね。
んでもって、神様がなんでそんなことしたのかって言ったら、異世界チート主人公が昔お願いしたからなんですね。
でもって、時々聞く「異世界料理基準を下げ」っていうのも、ちゃんとこの世界ならではの「ポーションが有能過ぎて料理発展する隙がなかった」という片鱗は書いておいたのですが、流石に分かりにくすぎたのか伝わっていなかったようなので、書いときました。
いつもご覧いただきありがとうございます。
ちゃんと次は本編書くよ。
でもさ、ふと、見た目25歳のブライス君の話が思い浮かんじゃって、100年後とかの話が今書きたくて仕方がない。書かないけど。脳内でストーリーが独り歩きしてるの。
ちなみに、大好物は「カレー」になってます。




