238 初めてのご飯再び
「昼ご飯は簡単に済ませましょう」
と、私が言うと、ダイーズ君がそうですねと言って、パンを取り出そうとした。
「ああ、パンがよかった？朝の残りのご飯でおにぎり作ろうと思ったんだけど」
そう。朝に、ちょっと多めにご飯を作っておいた。
「キリカ、あれがいい！焼きおにいい！」
「俺も！あ、でもかまどがないとできないか？」
かまどのオーブンですね。あれがあるとうまくできますが……。
フライパンで作る焼きおにぎりというのもあるので、大丈夫かな……？
「フライパンで焼くことになるから、あの時のとは少し違っちゃうと思うけど、作ろうか？」
にこっと笑うと、キリカちゃんとカーツ君が嬉しそうな顔をした。
ダイーズ君だけが蚊帳の外になってるんだけど、すぐにキリカちゃんがダイーズ君の手を引く。
「あのね、キリカが教えてあげるの。まずね、お米を三角にするのよ」
「三角？」
ダイーズ君が首を傾げた。
「うんと、キリカはうまくまだ三角にできないんだけど、いつかユーリお姉ちゃんみたいに上手に三角のおにいい作れるようになるんだっ！」
ふふふ、キリカちゃん、おにぎりですよ。おにぎいって言ってたりしたけど、糒のほしいいに釣られたのかな。おにぎりが、おにいいになっている……。
「おにいい？」
ダイーズ君、違う、おにぎり。
「まずは手を綺麗に洗いましょうね。それから少し手に水をつけて……」
ご飯は保温になるように鍋ごと布でくるんで置いたので、まだほんわりとぬくもりがある。
あ、そうだ！せっかくだから！
冷えたご飯だとなかなか難しいんだけど、あったかいなら大丈夫。
「握る前に、味をつけましょうか」
「え？醤油塗って焼くんだろ？」
カーツ君は良く覚えてますよね。
「その前に……」
えーっと、カーツ君に見られても大丈夫かなぁ？いい子だし、内緒だよと言えば内緒にしてくれそうだけど。
補正効果の方も、一緒に食事する限りいつまでも黙っているわけにもいかないしなぁ……。難しいところ。
取りあえず、隠しておける間は隠しておこうか。
というわけで、体で隠すようにして、ハズレポーションの醤油と味醂を器に注いで混ぜる。
それを、鍋のご飯に投入。混ぜ混ぜ。
混ぜ混ぜ。薄茶色の色がつきました。冷えたご飯と混ぜようとするとかなりムラになっちゃうんだよね。
「じゃ、これを握ります。こんな感じ」
一つだけ見本で握って見せる。
「え？あれ？本当に、三角だ！」
ダイーズ君がおにぎりをキラキラした瞳で見つめていますよ。
「すごい！三角の食べ物ってはじめて見たかも！」
あ、確かに。そもそも三角の食べ物って世の中にそう多くないか。
「じゃぁ、握ったら、ここに並べてね」
せっかく油もあるので、フライパン代わりの底の平な鍋にハズレＭＰポーションごま油を薄く引き伸ばす。
ん？
あれ？ごま油の補正効果って何だっけ？
ポッケからメモを見る。
火事場の馬鹿力……という名前だけど、正体不明――か。
うーん。火事場の馬鹿力から想像できるのは、危険な時にいつも以上の力が発揮できるみたいな感じかなぁ？
危険は、うん、無いですよねぇ。安全なダンジョンだし。ってことは、補正効果ついても「なんだ、この力は……！」みたいなドラマチックな展開にはならないよね。
ごま油風味の焼きおにぎり美味しいんだよぉぉ！
じゅるり。
鍋に火の魔石入れる。鍋を熱する２００度。ホットプレートの高温設定温度。
でもって、焼きます！両面こんがりカリッと。それから醤油を塗って、また焼きます！
じゅわーと、ごま油と醤油の混じった何とも言えない……いい香りが！
「すごいのよ……なんだか、前に食べた焼きおにいいよりも、おいしそうなにおいがするのよ」
「だよな！何使ったんだ？ユーリ姉ちゃん！」
何って、外れＭＰポーションのごま油。……とは言えないので。
「話はあと。焼けたわよ。さぁ、いただきましょう」
それほど大きくない鍋なので、食べている間に残りのおにぎりを焼かないといけない。
「ダイーズ君、口に合わなかったら別のもの用意するから、遠慮なく言ってね」
ごま油って、苦手な人もいる。
「はい。いただきます」
はうっ。いただきますって、言ってる。
私とキリカちゃんとカーツ君をまねて、ダイーズ君も手を合わせている。
なんだろう、この、幸福感。
すいません。全話の数字間違ってました。こっちが２３８でした。……(´・ω・`)
え？直せと？すいません……。謝り倒す。
さて、あっという間に８月です。
何があったのか、さっぱり分からないまま８月です。
うーむ。
というわけで、今後ともよろしくお願いします。なかなか更新がままならずすいません。
