閑話*日本では
ども。後編です。もうちょっと書きたいので中編にしたかったのですがあんまり続くと苦手な方もいるのでひとまず。
もう一度熱を測り直す。
37.4度。
どういうことだ。こんなに苦しいのに。38度どころか、39度あったって不思議じゃないぞ。
くそっ。体温計が悪いんだな。
そうだ、聞いたことがある。予測式は正確に測れないと。
ああ、それともあれだ。これから高熱になるに違いない。
はぁ。
はぁ。
苦しい。
おかしい、前は38度あっても仕事に行ったこともあるのに。
はぁ。
熱が出たらどうするんだ?
あいつは、熱が出たときどうしていた?
「大丈夫?苦しくない?」
と、声をかけられた俺は……。
そうだ、寝ていた。
馬鹿なことを聞くやつだと思った。
会社に行くこともできずに寝ているんだから、苦しいに決まっている。
あいつは本当に馬鹿だ。
「ちょっと出かけて来るね」
そう、あいつは苦しんでいる俺を置いて、買い物に出かけた。
ああ、そうだ。それで俺は眠ってしまったんだ。ムカつく気持ちを抱えながら。
起きたら頭がひんやりしていた。
そう、氷枕だ。母もよくそうしてくれたように、あいつが用意したらしい。
遅いんだよ、何もかも。すぐに持ってくるもんだろう!
枕元には経口補水液が置いてある。
母は、いつも熱を出すと砂糖と塩を入れた麦茶を用意してくれていた。甘い麦茶が美味しくてごくごくと飲んだ記憶だ。
それに比べてあいつは、それすら用意してくれないのか。
経口補水液なんて、熱中症になったときの飲むものだろう?
飲みすぎると糖分を取りすぎるって話を知らないのか。くそっ。
麦茶が飲みたい。
ああ、そうだ。思い出したぞ。思い出した。
熱が出たら頭を冷やして、何か飲むんだった……。
冷蔵庫へ這うようにして向かう。
冷凍庫を開ければ、氷枕が2つ凍らせてある。
1つを手に取る。それから、飲み物だ。
冷蔵室を開ける。
……何も、無い。
いや、何かは入っているが、すぐに飲めるものがない。
ちっ。
どっかにペットボトルのお茶とか残ってなかったか……お湯を沸かせばお茶が作れるのか?
ヤカンはどこだ?
台所の棚を開ける。引き出しも、入ってない。めったに開かない上の棚を開く。
「あった」
上の棚の一つにヤカンがある。
はぁ。
はぁ。
ったく、もっと分かりやすいところに置いておけよ。くそっ。
俺は病人だぞ?熱があるんだぞ?
体温計では37.4度だが、絶対39度はある。
こんなに辛いのに、何故、俺がお茶を作らなくちゃならないんだっ。
お茶の葉はどこだ?
見上げれば、ヤカンの上にプラケースにメモが貼ってあった。
賞味期限が、いついつまで……と、品物の名前。いくつか書いてあるけれど、そのいくつかが……
「は?先月賞味期限切れてるじゃないかっ!クソ、ふざけやがって。そんな機嫌が短い物をなんで見つけにくいところに置いておくんだよっ」
うんざりだ。
あいつのやることなすことうんざりだ。
プラケースを引き出す。
「重たいっ」
馬鹿だ、あいつは馬鹿すぎる。重たい物をこんな上の方に置いておいて、落ちてきたら危険じゃないかっ!
「なんだ、これは……」
俺の嫌いな栄養補助食品。
ちゃんとした料理を食べない人間の証明のような物だ。
あいつも知っているはずなのになんでこんなものが?
それから、レトルトのカレー。
ちっ。レトルトカレー?なんだよ、あいつは俺がいないときにこっそり食べてたのか?
それから、経口補水液。
「なんだ、あるじゃないか、これでいい」
喉が渇いた。
仕方がない。
麦茶が飲みたい。
だけれど、今はこれでいい。
いつもありがとうございます。
さて、お分かりですね。
急に病気しちゃったときの非常用グッズを、それらが嫌いな主人の目にとまりにくいようにと置いてあったユーリさんです。
泣けるわー。
いい加減色々なことに気が付きなさいよって思うよね。自分基準でしか物事を考えられない人って、本当あれよ。
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では!




