25 レシピ研究の決意?
「補正値効果のあるレシピを狙う輩は多いだろう。ギルドに登録してしまえば誰も手出しはできなかったんだが」
嘘!
ゾッとして顔が青くなる。
ドラマや何かで見た秘密を知る人間を拉致して閉じ込め無理やり秘密を吐かせる悪の組織を思い出した。
「大丈夫だ。守ると言ったからには絶対に守ってやる」
ローファスさんの大きな手が私の頭の上に乗った。
まるで子供を安心させるようにゆっくりと撫でられる。
あ、子供扱いされてるんだっけ。
「っと、お前たちのことも守るからな……。【契約 ユーリがギルドにレシピを登録するまでポーションの秘密を誰にも言わないこと 力の及ぶ限り全力で守る】」
ローファスさんがキリカちゃんたちに向けて言葉を発する。
はっ。
そうか。レシピを登録するまでは、レシピを知る者は同じように危険なんだ。
私……、ちょっと考えなしすぎる……。
「【契約成立】もちろん誰にも言わないよ」
「キリカも【契約成立】」
ブライス君は鋭い目でローファスさんを見た。
「ローファスさんも誰にも言わないと契約してくれますか?」
「あ、いや、ギルドには言ってもいいだろう?ギルドもちゃんと秘密は守るぞ?」
ブライス君が首を横に振った。
「秘密は守ってくれるかもしれませんが、レシピを早くほしいと言い出すのではありませんか?」
ローファスさんが気まずそうに視線をブライス君からそらした。
「まぁ、その、それは、俺が止めるから」
「有事にも?スタンビート……大量のモンスターがダンジョンからあふれ出た場合も?上級ポーションの代わりに初級ポーションで作れる回復効果の高い料理のレシピを要求することはないと言えますか?」
ローファスさんは黙ったままだ。
「もう少しギルドにも内緒にしておいてください。まだ何もわかっていない。補正効果は装備と違って数時間で切れることしか分かっていない。切れるまでどれくらいの時間なのかも分かりません」
「それは、確かに、補正値に頼って戦い、途中で効果が切れるようなことがあったら逆に危ないな」
「レシピにしても、ユーリさんが作るからこそ効果があるのか、他の者が同じように作っても効果があるのかも確かめていない。それに、現状レシピが広まったとしても、材料であるハズレポーションの確保はどうするのです?全く流通していない。むしろ上級ポーションより入手困難ですよ?」
「なるほど。確かに言われてみればそうだ……分からないことだらけで、しかも準備不足となれば……。分かった。今はまだギルドに報告する時期ではないということだな」
ブライス君とローファスさんの会話をただ横で聞いていた。
分からないことだらけだけか。
スタンビートが何かは分からないけれど、いざというときにレシピが役にたつということは分かった。
ポーションの組み合わせで色々な効果があることも分かっている。
とすれば、私がするべきことは、冒険者としてレベルをあげ、ギルドにレシピを登録するときまでに「最高のレシピを研究する」ことだよね。
より効果の高い料理。
何をどう組み合わせると、どんな効果が出るのか。
……色々試してみないと。
「みんな、これからはハズレポーションの収穫も頼む。そうだな、1年……。1年の間に何とか主要都市で流通できるだけの量を確保したい」
「うん、わかった。キリカ頑張るよ」
「俺も。ジャンジャンポーション収穫するよ。いい方法もユーリ姉ちゃんが教えてくれたしな!」
そっか。いくらレシピがあっても、肝心の醤油がなければどうしようもないもんね。醤油ごときが一般人の手の届かない高級調味料とかじゃぁもったいなくて料理に使えないもんなぁ。
「ブライス、レベルが上がってこれからいろいろなダンジョンで力を試したいところだろうが、しばらくはポーション畑のポーションの運搬も頼まれてくれないか?他の者に知られない為にはこのメンバーで何とかするしかないからな。」
「ええもちろん。ここから一番近い初級ダンジョンでレベル上げをしながら、月に1度、いえ、月に2度はポーション畑に通いますよ」
ブライス君が私の顔を見て嬉しそうに微笑んだ。




