230 宇宙にはばたけ
……おっと、分量がよくわかんないけど……目分量でなんとなく入れちゃった。
目分量具合は、避難訓練の時に食べたアルファ米のあの感じ。
袋の中に入っていたアルファ米と、入れたお湯の分量を思い出してと。それから、蓋をする。ポイントとなるのは、あったかい状態を保つことだ。
あ、もちろんアルファ米って水でもできるんだよ。時間がちょっと長くかかるけど。でも、やっぱり、アツアツのお湯で短時間に作ったものは、まるで炊き立てのご飯みたいでかなり美味しい。
鍋はカマドで使うものの厚みのあるものと違い、携帯に優れた薄っぺらなものだ。保温性は小さいので、火の魔石を鍋の中に入れておく。100度は暑すぎるだろうか。80度に設定。
「これで、あとはしばらく待つだけ。出来上がりを楽しみにしてね!」
「分かった。俺、ベーコン焼いてくる!」
カーツ君と入れ替わるように、キリカちゃんとダイーズ君が何かを抱えて戻ってきた。
「ユーリお姉ちゃん、ほら見て」
どさどさと置かれる、木の実たち。
「すいません、リンゴは食べられると分かっていたのですが、あとは村では見たことがなかったので食べられるか分からなかったのですが、一応取ってきました」
何かないかと、キリカちゃんとダイーズ君はダンジョンの上に登っていったんだよね。
なんと、やっぱり、ダンジョンの上は不思議空間だったようで、季節感無視して収穫が……って、どうやら畑というよりは果樹園というか、実のなる木がいっぱいのようです。
二人が取ってきた実を確認する。
「栗に、リンゴに、梨と……梅っ」
う、う、う、梅だとぉっ!
「うめぇのは間違いないよな!」
は?
「ユーリ姉ちゃん、焼けたぞ」
振り向けばカーツ君がさらに焼いたベーコン持って立っていた。
いや、違う、誰が、梅はうめー!とか言いましたか!
そうじゃなくて、梅だよ、梅!梅っ!
梅と言えば、梅干し!梅干し!梅干し!
あとは梅酒。あ、みんなお酒飲めないから、梅シロップ作って、梅ジュース飲める。
「ありがとう。せっかくだから、冷める前に食べちゃいましょう。これもそろそろ大丈夫だと思うんだ」
熱湯入れて15分。水なら60分ってアルファ米には書いてあった。もう15分くらいは経ったはず。
「なぁに?」
キリカちゃんが興味深々に鍋を覗き込む。あ、キリカちゃんだけじゃないや。カーツ君も目を見開いてみてる。ダイーズ君も冷機正しくその後ろから覗き込んでる。
ご、ごめん……。すんごく期待してるところ悪いけれど……。
「ご飯だよ……」
パカリと鍋の蓋を開けるともわわんっと湯気をあげて白米が現れた。
「え?いつの間に炊いたのですか?」
ダイーズ君の声に、かぶせるようにカーツ君が声をあげる。
「なんで炊けてるの?さっきお湯の中に米入れただけだよな?こんな簡単に炊けるなら、俺がいつもやってたのって……」
あわわわ、カーツ君がショックを受けてる。
「ち、違うよ、えっと、ほら、よく見て、これ。さっきカーツ君もいつもの米と違うと思ったでしょう?」
アルファ米ならぬ、日本名干飯を手のひらに少しとりみんなに見せる。
「これはね、えーっと、干し肉のご飯版?一度炊いたお米を水洗いして干してカリカリにしたものなの。干飯っていうんだよ。完全にカリカリに乾燥させれば、10年でも保存できちゃう保存食であり、こうしてお湯を入れるだけでおいしいご飯になる携帯食にもなり、えーっとそれから、このカリカリにしたものを油で揚げると、美味しいお菓子もできたり……」
あ。
「油で揚げるとは?」
ダリーズ君が首を傾げた。
「あのね、ポテトフライとか唐揚げとか、おいしいんだよっ!」
キリカちゃん、待って、待って。
「あー、まぁ、そのうちダイーズ兄ちゃんにも分かるよ、な?今は、朝ご飯食べようぜ!俺、干飯の味が気になって仕方がない!」
ふー。カーツ君ナイスです。
「じゃぁ、食べましょう。いただきます」
私の言葉に、3人とも手を合わせる。うわーん、いい子たち。ちゃんと手を合わせるのよ。いただきますするの。いつの間にかダイーズ君も。
キリカちゃんが厚めにカットされたベーコンをほおばる。
「おいしいっ!」
「本当です。とても美味しいです」
ダイーズ君とキリカちゃんの言葉に、カーツ君が嬉しそうな顔をする。
「へへ。カリカリに焼いたベーコンもうまいし、厚めに切ったベーコンもじゅわっとしててマジうまいよな。さすがユーリ姉ちゃんのベーコンだよっ」
カーツ君もおいしそうにベーコンを食べる。
それから、ご飯をパクリ。
カーツ君が変な顔をした。
ども。ご覧いただきありがとうございます。
えーっと、宇宙飯っていう、宇宙食を食べました。アルファ米なのか干飯なのか。炊き立てご飯がそこには出来上がりました。うわー、前に食べた炊き込みご飯のアルファ米とは全然違うっって思ったよ。




