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「は?おや?」
セバスティアンさんがパンケーキ……ちなみに、挟んで食べやすいように薄めに焼いてます。1センチくらいの厚み。フォークをさして首を傾げた。
ナイフもちゃんと出して置いたら、上品にナイフでカットし始める。
「ん?」
またもや首を傾げるセバスティアンさん。
そして、パンケーキを口に入れて、目を輝かせた。
「ふわっ、ふわっ、ふわっ、ですな!」
はい。メレンゲがね、ハンノマさんの手動式ハンドミキサーのおかげでね、きっちり泡立てることができたので。
「あまりにも食材……いや、パンケーキといいましたか、パンケーキの抵抗感がなかったもので、フォークやナイフの切れ味がいいのかと思っていたら……、ふわっふわですな!」
ですな。
「柔らかい、まるで、タンポポの綿毛みたいです。おいしいです」
ダイーズ君のたとえ方がかわいい。
「ユーリ姉ちゃん、カリカリの燻製した肉を挟んで食べるとめっちゃうまいっ!カリカリして焼きすぎかと思ったら、カリカリしたとこがうまい!」
でしょ、でしょ。ベーコンはそのままでも、焼いても、さらにカリカリにしても、美味しいのです!
私は、ベーコンエッグバーガーもどきにして食べますよ!
パンケーキにベーコンと目玉焼き……ちなみに、しっかり焼きです。半生じゃないです。生卵常食してる日本人じゃないので、生はハードル高いかもしれないので……。挟んで食べる系は手も汚れなくていいしね。うんうん。……主人みたいに「焼きすぎた目玉焼きなんか食えるか!」なんて言う人いないし。
……そう、本当は、私、しっかり焼いた目玉焼きが好きだったんだ。だけど、失敗したのかというさげすんだ主人の目が怖くて自分の分も半生の卵焼きで我慢してた。……もう、我慢しなくてもいいんだよね!目玉焼きくらい、好きな焼き加減で食べたって!
さて、いただきまーす。
はむ。
はぁー、おいしい。カリカリに焼いたのに、まだまだジューシーさが残っていて。卵もぷにぷにしてる。新鮮だからなか。
塩加減がちょうどいい。
「ふっわふわですな」
セバスティアンさんの語彙が、ふわふわ崩壊中。どうやら気に入ったらしい。
そして一つ分かったことがある。
そう、ふわふわ。ふわふわになるってことは、小麦粉は薄力粉もしくはそれよりの中力粉。パンも同じもので作っているのかな?パンは強力粉がいいはずだけど。……あらたな謎が一つ。
「さて、こちらも試してみましょうか」
セバスティアンさんが、はちみつパンケーキを食べ終え、パンケーキにベーコンと目玉焼きを挟んだ。
「この、卵が食べたくてローファスがわがままを言っているんでしたな」
はうっ。ごめんなさい。ローファスさん。すっかりローファスさんのせいになってる。
卵食べたいとわがまま一番言ってるの、たぶん私だよ……ね。は、ははは。
「こ、こ、これは……卵とは、これほど、うまいものであったか……」
セバスティアンさんが一口目で陥落?
「……確かに、卵がおいしいと分かれば……食べたくなりのは分かる……」
「あのね、鳥の卵は食べちゃだめなのよ。だから、あのね、キリカたちも、鳥の卵を取って食べたりしないの」
「そうだ。森から鳥がいなくなれば鶏肉も食べられなくなる。卵を取りつくせば鳥は減る。だから、森の鳥から卵を取るようなことはしないんだ」
セバスティアンさんがじーっと、食べかけのベーコンエッグサンドもどきを見る。
「しかし……なぜ、アレの飼育をしようと……」
あれというのは、コカトリスのことだよね。確かに危険なモンスターだもんね。
「えーっと、アレは、無精卵……繁殖用じゃない卵も産むんです。えっと、年に300個も卵を産む特殊な鳥です。それから、卵のサイズも鶉などに比べて大きく使い勝手がいいんです。あとは……」
キリカちゃんが自慢げに話しだした。
「あのね、卵をね使ったマヨネーズがすごくおいしいの!」
「あれは最高だったなぁー」
セバスティアンさんの目がきらりと輝く。
「マヨネーズとは?」
もうっ、ダメダメ。マヨネーズはハズレMPポーションの補正効果つくれないからね!
「このパンケーキも卵使ってるんだよな!」
ナイスカーツ君。話題反らしありがとう!
「なんと!このふわっふわのふわっふわにも卵が!」
はい。
「他にもいろいろと料理にもお菓子にも使えるんです。それでも、そのアレはさすがに危険だと思うんですが、高度鑑定魔法の結果、尻尾さえ切り落とせば毒も発しないということで、えーっと、今、その、ローファスさんとサーガさんが、ギルドや政府にかけあって、安全に飼育繁殖する方法を確立して広めようと……その、たぶん。その下準備で実験的にその小屋で飼育を始める……みたいな?感じ、でしょうか?」
セバスティアンさんの目がギラギラと。
「コカトリスの生息ダンジョンはたしか……ぶつぶつ」
何か言ってる。
「尻尾を切り落としてダンジョンの外に……止血剤が必要か。いや、炎剣で焼き切れば……ぶつぶつ」
ぎゃー、これ、絶対、ダンジョンにコカトリス取りに行くつもりだ。
もとS級冒険者だもん。きっと、どってことないことなんだよね?
「セ、セバスティアンさん、その卵のことは秘密の契約を……」
と、言ったら、セバスティアンさんの目のぎらつきが消えた。
「はっ、そ、そうでした。口で言わなくても、行動を怪しまれたら秘密を漏らす危険がありますね……」
がっかりした様子。
セバスティアンさんが崩壊……




