226 ハンノマ印のハンドミキサー
「あの、本当に、これ、えっと、危険なコカトリスじゃないんです、えっと、その、毒もないし、鶏、似てるけど鶏で、あの、その、ローファスさんとサーガさんに聞いてもらえれば……」
あうううっ。
少なくとも、S級冒険者のローファスさんや、軍所属のサーガさんの言葉なら信用してくれるよね?
って、名前出したものの、ローファスさんのことは知ってるかもしれないけどサーガさんは知らないかな?
「なんと……お二人も一枚かんでいると?」
ん?二人とも知ってる?
「目的は……どうやら、不穏なものではないようですね……」
ふぅっとセバスティアンさんが息を吐きだす。
すると、ピリピリとした空気が和らいだ。
はー。良かった。
「で、これがユーリさんの言うように鶏だとすると、鶏をなぜ飼育しているのですか?」
うぐぐぐ。
「【契約】表に情報が出るまで秘密にしてください 秘密を教える」
「【契約成立】」
オレンジ色の光が額に溶けていく。
えーっと、契約条件我ながらおかしなことになっている。とっさなので出てこなかった。
「あの、まだ少しお時間ありますか?」
「ええ。大丈夫ですよ」
そっか。じゃぁ……。
鶏小屋の中を卵を探して歩く。うん、5つあった!
「それは、卵ですね?」
「はい。おやつを作りますので」
「おやつとは?」
あれ?そういえば、おやつって一般的じゃなかったっけ?
「あの、お菓子?軽食?えーっと、間食?」
「料理の類、ですか?まさか、卵で?」
そうです。おやつを作ります。食事の時間には早いし。
それに、卵を使う料理はいろいろあるけれど、一番に思い浮かんだのはホットケーキ。
またか!と思うかもしれないけれど、ハンノマさんからもらった手動ハンドミキサーを使ってみたいのです。
あと、うっかり油必要なレシピのもの作っちゃうと補正効果が……。
「はい。あの、卵を産んでもらうために、その、飼育してます」
で、納得してもらえるのかな?
「なるほど。ローファスならやりかねん……」
あ。
ローファスさんの名前で納得してもらえた。
「ユーリさん、ごちそうになってもよろしいですか?」
「はい。もちろんです。えっと、できたら呼びますので」
セバスティアンさんは干し肉とか燻製肉とか作るのの手伝いをしながら待ってくれるそうです。
コンコンパッカー。
卵にさっそくハンノマさんの手動式ハンドミキサーを投入。
取っ手を上下上下。
ぐーるぐる。
ぐーるぐる。
ぐーるぐる。
うひょーい!あっという間にメレンゲできるぅぅぅ!素晴らしい!なんて、素晴らしいの!
ありがとう!ハンノマさん!
あ、やっぱりこれ、武器じゃなくて泡だて器だったよぉぉぉ!
「パンケーキにしようかな」
甘くないやつ。
うん、そうすれば、ベーコンとか挟んで食べてもいけるよね!甘いのははちみつかけて食べればいいし。好みで食べてもらえるほうがいい。
よし。ベーコン薄切りにしてカリカリに焼いたものも作ろう。
あと、せっかくだからベーコンエッグも作るかな?
あ、セバスティアンさんが鶏小屋見に来てくれる時に卵も取って食べてもらえばいいから、ベーコンエッグとかならすぐ真似できる?
まぁ、なんせベーコンに目玉焼き足しただけだし。
出汁巻き卵食べたいなぁ。
出汁……海沿いに行けばあるだろうか……。海産物欲しい。
「おやつの時間ですよー」
おっと。おやつって一般的じゃなかったっけ。キリカちゃんやカーツ君はもう慣れてるけど、ダイーズ君は首を傾げた。
そして、テーブルの上に乗っているおやつを見て、また首を傾げた。
「わー、ホットケーキだ!キリカ大好き!」
「そう、今日はね、パンケーキにしたから、あ、甘くないから、えっと、本当にパンみたいにベーコン挟んだりして食べてもおいしいのよ?甘いのがよければはちみつね」
キリカちゃんがセバスティアンさんにはちみつの瓶を差し出す。
「あのね、はちみつかけて食べるとおいしいのよ!キリカのおすすめなの!」
うーん。キリカちゃん、大人の男の人はあまり甘いもの好きじゃない人もいるんだよ。
えーっと、困っているようなら助けようとセバスティアンさんを見ると、にこっと笑った。
「ありがとうございます。はちみつは大好きですよ。なんせ、食べるものがなくなってもはちみつをなめていれば数日は大丈夫ですから。ずいぶんお世話になりましたよ、冒険者時代に」
……あう、理由が遭難者!
「その時は空気と混ぜて固まらせて持ち歩くんですけどね」
ああ、白く結晶化しちゃうあれ!まさか、わざとそうするとは!
キリカちゃんからはちみつを受け取ったセバスティアンさんは、どばどばとパンケーキにはちみつをかけた。
ふおうっ!あのかけっぷりは、はちみつ本当に好きな人のかけ方だ!
いつもありがとうございます。ちょっと、更新速度落ちますごめんね。てへっ。
単にストックがなくなってきただけだから。




