224 始まりの村
ハンノマさんの店で買った菜箸を思い出す。あと泡だて器とか。
大きさが変わる……小さくなるということが発展してるのはそういうことなのかな?
小さくすれば、カバンがマジックバックじゃなくても、たくさんものをいれて運べるようになるし。
うーん。とりあえず、マジックバックがないイコール、物を運べる量には限度がある。つまり、無駄なものは持っていけない。
よく考えないと。
それからいくつかセバスティアンさんに教えてもらいながら必要なものを買っていく。
「毎度ありがとうございます。ご一緒に武器屋防具はいかがですか?」
会計のお姉さんがにこやかな顔でのたまった。
ポテトじゃないんだからっ。そんな簡単にご一緒するものじゃないよね?
「あのね、すんごい武器を買ったばかりだからいらないのよ!」
誰が?
「そうですね。小さくなって見えないので何も持っていないように見えますが、武器を携帯していますよ」
って、私?
キリカちゃんとセバスティアンさんが言ってるのは、私?
武器なんて買ったっけ?携帯なんてしてたっけ?
っていうか、そうだった!ハンノマさんの店で武器を買うつもりだったのに、私に使える武器がなくて、……使えるどころか使いこなすどころか、手に取ることすらできなくて買えなかったんだ。菜箸は買ったけど。
「武器、ください!えっと、私でも使える……いえ、せめて手に持つことができる……その、怪我しない、安全な武器を……」
お姉さんが困った顔をした。
「……えっと、こ、これなんて、いかがでしょうか……」
カウンターの下から出てきたのは、木の棒だった。
「初心者用の武器です。見た目は変わっていますが」
見た目は、だから、ただの木の棒です。
「強度があり」
硬い木?ヒノキか何か?
「ちょと手に取らせてもらっても?」
「はいどうぞ。誰にでもよくなじみますよ。初心者用の武器ですから……」
くんくん。匂いを嗅ぐと、これは、なんということでしょう!
ひのきの香りが胸いっぱいに広がります。
いい匂い!
ああ、そうだ。ヒノキで燻製するとどんなものより香りのよい燻製ができるとか聞いた。
「買います!えっと、とりあえず10本ほど!」
「10本ですか?万が一折れてしまった予備にしても、それほど数は必要ないかと……」
10本では足りないかな?でも、今度からはダンジョンじゃなくて、こう、もっとコンパクトサイズで少量の燻製を楽しくつもりだし……。
「あー、まぁ、とりあえず10本でいいです。足りなくなったらまた買いに来ます!」
「へ?」
お姉さんが変な顔したよ。なぜ?
しかし、そこは販売のプロなのか、すぐに気を取り直して、笑顔になった。
「ありがとうございます。ご一緒に防具はいかがですか?」
防具、そういえば、私……着替えとかそういうのも買わないと……。
「着替えとかは売ってますか?」
「き、着替え、と、申しますと、その、防具の下に着る服のことで?」
お姉さんが困った顔をする。
「初期装備のこちらでしたら、取り扱いがございますが……」
と、出してれたのはきなりの綿でできているシャツと、ジーンズ地のように厚手に織られた生地でゆったり目に作られた茶色のズボンだ。
素敵!
肌触りもいいし、ズボンは丈夫そう。
夜寝るときに着ている服を選択して干している間にパジャマにして寝てもいい。いえ、普段着に使うのもありだよね。
この間買った布と合わせてリメイクするのもありだ。うん、ポケットを増やそう。それからズボンは丈を短めにして、それから……と、リメイク方法を考えながら服を眺めていると、お姉さんが申し訳なさそうに服を畳んだ。
「やはり、お望みなのは、こちらではありませんよね?」
あ、違う!
「買います!買います!えっと、とりあえず2着、ください!」
ユーリは、
武器:木の棒
防具:布の服
を、手に入れた。ちゃっちゃちゃーん。
なんだろう、お姉さんが苦笑いしている。2着なんて少ない?もっと着替えを持ったほうがいいと思ったのかな?
「また、今度買いに来ますね」
にこっと笑って見せたら、お姉さんが憐れむ目を向けて来た。なぜ?
ご覧いただきありがとうございます。
分かるだろうか。
布の服と木の棒。
木の棒ですら、装備せずに旅に出ると、死にます。
(´・ω・`)
いやいや、ユーリさん、斜め上すぎますね。はい。
エイプリルフールなので、何か嘘ついとこう。えーっと、ローファスさんは、実はできる子です。




