221 箸はすごい!
「えーっと、その、2本でいいです」
「何々、遠慮するな。うんうん。投擲武器は数があればあっただけ便利だぞ?生憎20本しかないが……また今度来る時までに増産しておくからの!」
20本……つまり、10膳の菜箸。
キリカちゃんが手に取れないってことは、たぶん私以外誰も手に取れない菜箸が10膳……多すぎじゃないの!
「あ、これならキリカも持てるのよ」
つまようじサイズならキリカちゃんも使うことができるらしい。
つまようじ?
あれ?あると便利よね?お肉で野菜をくるくる巻いてつまようじでちょっと止めて置いたり。
お弁当にピック代わりに入れたり。
うん、いろいろ使えそうです。
「ありがとうございます。あの、でも追加はいらないので、えっと……増産は必要ないです」
「しかし、嬢ちゃんは不思議じゃのう」
何が不思議なんだろう?
それにしても、いい菜箸が手に入っちゃった。
嬉しいなー。なんか菜箸に仕えそうな棒は買ったけど、ちょっと使いにくかったんだ。えへへ。早く使いたい。
ニコニコ。
「それ、レベルがすんごくないと使えないような鬼設定の武器なんじゃがな?」
ニコニコ。
ん?ハンノマさん何か言ってる?
「よかったね、ユーリお姉ちゃん。いい武器を買うことができて」
はい?キリカちゃんも何か言ってる?
ちょっと菜箸で何作ろうか考えてて聞いてない。
あれ?そうだ。菜箸だけじゃなくて、普通の箸も、もしかしてあるんじゃ?
しまった!ハンノマさんに聞いてみればよかった!
と考えている間に、鐘の音が聞こえて、セバスティアンさんがやってきました。
「セバスティアン久しぶりじゃな。ちょっとこれを持ってみてくれ」
ハンノマさんが菜箸を手渡しました。
バチンッ。
あ、また静電気。
二人がひそひそと何か話をし始めました。
「またこのような、誰にも使えないような武器を作ったのですか?」
セバスティアンさんがちょっとハンノマさんにあきれたような声を出す。
「何を言うか。お前がいつか使えるだろうと思って作っておいたんじゃ。それなのにさっさと引退しおって」
「何年かすれば、ローファスが使えるようになるんじゃないですか?」
「はっ、坊主になどやらんし、残念ながら、もう売った」
声は小さくて何を話しているのか聞き取れないけど、昔からの知り合いだというのは分かった。
セバスティアンさんもハンノマさんの武器使ってたのかな?
「売った?まさか、私を超えるレベルの人間が?」
「いや、レベルは低すぎるのか、店の武器は全滅じゃったぞ」
「誰に?」
ハンノマさんが、私の顔を見てから、セバスティアンさんの顔を見る。
「は?」
セバスティアンさんがあんぐりと口を開ける。
何の会話をしているんだろう?まぁいいや。私には分からない難しい話をしているんだよね。きっと。
テーブルの上に置かれた菜箸を手に取る。
これも小さくして他のと一緒にカバンに入れておこう。
「クローズ」
その動きを、セバスティアンさんが目が零れ落ちそうなくらい見開いてみている。
ん?
「オープン」
大きくして見せた。
それから「クローズ」ともう一度小さくして見せる。
大きさが変わるのにびっくりしたのかな?
「大きくなったり小さくなったり面白いですよね」
にこっと笑うと、セバスティアンがふっと笑みを浮かべる。
「実に、面白い」
そっか。楽しんでもらえてよかった。
「くくくく、これは、本当に……」
セバスティアンさんがくくくと笑いが止まらないようだ。あれ?そんなに面白い?
まさか……!箸が転がっても面白いみたいなCMが昔あったけど、箸が縮んでも面白い!とかで笑いが止まらない?
すごいな、箸。異世界でも人を笑わせる才能が!
いつもありがとうございます。
……ほらいわんこっちゃない。
ユーリさんの手に入れるものはいわくつき……。
ただの投擲武器じゃなかったー!
だから、菜箸だもの。
小さくすれば爪楊枝にもなる、便利な菜箸だもの。
(´・ω・`)だそうです。はい。




