214 サンド
セバスティアンさんが、燻製肉を両手にぶら下げて出てきた。
ん?
不思議な顔してセバスティアンさんを見ると、セバスティアンさんがちょっと照れたような表情を見せる。
「ああ、さすがにちょっと味見にしては欲張りすぎましたか」
「いえ、好きなだけ食べていただいていいのですが、煙、大丈夫でしたか?」
「おや?そういえば、2度目は同じように煙が充満していたのに、平気ですね?」
……えっと、確か、桜の樹皮をゆでると咳止めの薬に……いや、去痰だよね?あれ?っていうか、煙を吸ったときの咳を止める?
よくわからないけれど……。
「カーツ君、キリカちゃん、ダイーズ君も、味見する?」
野菜採取から戻ってきた3人に声をかける。
「もちろんっ!」
「食べるのよ!」
「いいんですか?」
と、3人が煙の中に突っ込んでいった。
いやいや、だから、だから。
「げほげほげほ」
「ごほごほごほ」
「げほんげほん」
……もしかして、単に、煙があまり身近にないから、煙が煙いということを……知らない?
ねぇ、そうなの?そうなんだよね?
別に食欲で突っ走ってるわけじゃないよね?うん、きっとそうだ。火の魔石で煙なし調理が普通の世界だから。うん……。煙草とかもないし。うん。
セバスティアンも含め、皆で仲良く味見して、美味しいとのお言葉いただきました。
「じゃぁ、完成ということで、朝食のあとに外に出しましょうか」
ダンジョンの中に置いておくと煙を絶やすわけにいかないし。
「街に連れて行っていただくのはそのあとでもいいですか?急ぐようでしたら、移動中食べられる軽食を用意しますけど……」
ベーコンとレタスをパンにはさむだけなら数分で準備が整う。セバスティアンさんに尋ねると、ゆっくりしても大丈夫との返事をもらう。
とはいえ、視線を動かすと、そこにはダンプカー並みの大きな猪。
「大丈夫ですよ、ゆっくりと朝食をいただいてください。突然お邪魔した私のことは気にせず。そうですね、皆さんが朝食をいただいている間に、私がダンジョンの中の煙で調理したものを運び出しておきますから。そうすれば、時間の節約にもなるでしょう」
いや、それは申し訳ないというか。
「すぐに食べて、俺も手伝うよ!」
「キリカもなの!ご飯食べたらすぐ来るのよ!」
ですね。急ぎましょう。
キリカちゃんたちが取ってきてくれたレタスとトマトを切る。出来立てベーコンを薄切りにしてトーストしたパンにはさむ。
はい、できました。
卵も使いたいところですが、さすがに卵の存在を広めまくるわけにもいかないのでやめておこうと思います。
「じゃぁ、いただきます。慌てて食べるとのどにつかえるから、よく噛んでゆっくり食べるのよ?」
カーツ君が大きな口でベーコンホットサンドをほおばりながら頷く。
ベーコンホットサンドを皿に乗せて、ダンジョンに向かう。
「セバスティアンさんは朝食はおすみですか?もし食べられるようなら、いかがですか?」
自分たちだけ食べるのは気が引けるので、持ってきました。
「よろしいのですか?」
すぐにダンジョンからセバスティアンさんが現れる。
動き、早いよ、まじで。
「ええ、簡単なものしかありませんが……」
しかも、今さっき味見で食べたベーコン……と、もう呼んでるけど、猪の燻製肉を使ったものな上に、挟んだだけ。
「ほほー、これは、パンにいろいろと挟むことで、手に取って食べられますな。これは便利」
セバスティアンさんがホットサンドにかぶりつく。
「むほっ、なんでしょう、このパンのサクサク感。かみ切りやすい上に、サクサク感が気持ちいいですね。そして、煙の肉の塩味で野菜のうまみが引き立つ。シャキシャキっとした新鮮さもたまりませんな。一度にいろいろな歯ごたえを味わえるなど、なんと贅沢なっ!複合されたうまみ!……こ、これは……こんな美味しいものを私だけが食べたと知られれば……リリアンヌ様に知られれば……」
え?
何かまずいことでも?
クビになるとかないよね?
「どれだけ、リリアンヌ様が悔しがることか、ふふふ、ふふふ」
なんですって?いいの、それで。
「リリアンヌ様も食べに来ればいいのよ?キリカが作ってあげるのよ!」
すっかり食べ終えたキリカちゃんが来た。
「むむ、確かに……これを知られれば、リリアンヌ様はこちらへ駆けつけることでしょう」
駆けつける?
いつもありがとうございます。
にょー、セバスティアンさんおちゃめな面も垣間見えます……。
リリアンヌ様の気絶がそろそろ見たいような……でも、出てこないよー




