23 ローファスさん爆笑する
そうだよ、そうだ!
日本だって、子供に大人ようの栄養ドリンクを飲ませたりしない。子供には子供用の栄養ドリンクがあるし、カフェインが入っているエナジードリンクに至っては、ジュース代わりに飲んで死んでしまった子さえいるというのに……。
知らないでは済まない、ごめんなさいでは済まない。
「大丈夫ですよ、ローファスさん。初級ポーション2本使ってあるだけだから。子供でも初級ポーションなら1日10本まで大丈夫でしょう?中級なら2本まで。上級は子供は飲んではだめ、でしたね」
ブライス君がローファスさんに説明してくれた。
「ごめんね、ユーリさん。僕がユーリさんに教えておかなかったから不快な思いさせちゃったね」
ブライス君の申し訳なさそうな顔。
「初級ポーション?そんなはずないだろう?このスピード感……俺が間違っているっていうのか?ステータスオープン」
ローファスさんがステータスを表示した。
「【HP開示】ほら、見てみろ。ぐんぐんHPが回復している。これは中級どころか上級ポーション並みだぞ?」
初級ポーションを飲んだ時には数字が1上がるのに20秒くらいだったかな。
ローファスさんが開示してみんなに見えるようになったHPの数字は、毎秒3くらい数字が上がっている。
っていうか、HPが2300とかすごい。私なんて10。いいえ、レベルが2になっても15なんだけど。
冒険者って、こんなにHPあるの?
「ローファスさんはいろいろ装備してるから分かりにくいかもしれませんが、他の数値でも何か気が付きませんか?」
ブライス君に言われ、ローファスさんは宙に浮いたように表示されているであろうステータスを見た。
「は?いや、なんだ?守備力の補正値が上がってるぞ。上がり方が異常だ。倍になっている……HPの補正値も装備で補正されている数値が倍になっている」
「へー、そういうものなんですね。補正値がもともとあると、補正値が倍になるんですか。僕たちは補正値ゼロなのでプラス10になっています」
ブライス君の落ち着いた口調に、ローファスさんが半ばパニックになりながら
「どういうことだ、何なんだ、どうして、ちょっと待て、これは大変なことだぞ」
と、頭をかきむしった。
え?そんなに大変かな?
「まずは食事を終えましょう?もう食べないのなら片付けますけど」
余ったご飯はおにぎりにしておこう。あ、焼きおにぎりがいいかな。角煮が少しだけ残っているから角煮おにぎりというのもいいかもしれない。
なんて考えたら。
「食べる!」
ローファスさんがすっかり全部食べちゃいました。ご飯、3合分くらい食べたよね?すごい。
片付けはみんなで手分けしてしました。
「ローファスさんはテーブルの上を拭いてください。働かざる者食うべからずです」
キリカちゃんがお姉さん口調でローファスさんに言っていたのは面白かった。
「さて、それで、いったいどういうことなんだ?」
すっかり片づけられたテーブルの上に、ポーションの瓶を並べる。
「ローファスさんにも分からないってことは、ギルドも把握してないってことなのでしょうか」
ブライス君が黒いポーションを手に取る。
「これは、ユーリさんの故郷では醤油と呼ばれる調味料だそうです」
「調味料?」
ローファスさんが眉を寄せる。
「はい。これは料理酒、料理に使うお酒で、こっちはみりん。これはお酢です」
たぶん……。
液体の色が似ているから、瓶をシャッフルすると分かりにくい。分かりやすく何か印つけておかないとだめだな。リボンとか結んでおく?
料理酒は緑で、みりんはオレンジのイメージだ。いつも使っていたスーパー産の調味料の容器のふたの色だ。
酢は無印でいいかな。
「ぷっ。ははははっ!」
ローファスさんが笑い出した。
「まさかハズレポーションを調味料として料理に使うやつがいるなんてな!」
え?そんなにおかしなこと?
っていうか、ハズレだけじゃなくて、当たりポーションも使ったけど。生姜と砂糖の代わり。
砂糖が貴重らしいから、ありがたい糖分調味料としてこれからも活用するつもりだけど……。
「直接飲んでも効果はないのに、料理に使うと効果があるのはなぜか……」
ローファスさんが首をかしげる。
なんだろうね。
おいしいものを食べると力が湧くとかそういう話だったりはしないのかな。
「もしかして、薬草を調合するのと同じようなことなのかもしれませんね」
ブライス君の言葉にぽんとローファスさんが手を打った。




