212 まずい麦と普通の麦とおいしい麦
……。
夕飯は、作る暇がなくなったので、焼き鳥です。
塩の焼き鳥。
それから、青じそと鳥肉の焼き鳥。
ネギ間の焼き鳥。
それから、ニンニクと鶏肉の焼き鳥。
どれも補正値効果が付かないもしくは不明なので、問題ないでしょう。手抜きでごめんなさい。
と、心の中で平謝り。
今日のおかずはこれだけか?ほかにないのか?と、主人なら激怒案件だ。焼き鳥しかないんだもの。
「うんめー、やばいぞ、これ!ユーリ姉ちゃんさすがだな!」
「こ、これはなんでしょうか?初めて食べる味です。匂いはきついですが……なんか、癖になる味ですね!」
「キリカ、この臭いのは苦手なのー。でも、こっちのネギと一緒の美味しいのよ。ネギが不思議と甘いのよ」
うう、焼き鳥しかないのに、喜んで食べてくれる。
嬉しい。
「ダイーズ君、これはね、ハズレ増血草って言われてるんだよ」
「ハズレ増血草ですか?」
「そう。ギルドでは増血草は買い取ってもらえるけど、ハズレは買い取ってくれないんだ。だけど、こうして食べるとおいしいでしょ?」
「はい!ハズレ増血草美味しいです!」
ダイーズ君がニコニコ笑ってる。
「それからな、これはまずい麦なんだぜ!」
カーツ君が自慢げにご飯を差し出す。
「まずい麦?小麦よりも安く手に入るやつですか?村では外から食べ物が入ることが少ないので食べるのは初めてです」
と、カーツ君がご飯を口にする。
「え?これが、まずい麦?まずい麦がこんなにおいしいなら、おいしい麦は、どんな味なんですか?」
「あのね、おいしい麦は普通の麦なのよー。……あれ?ユーリお姉ちゃん、普通の麦ってことは、美味しい麦もあるの?」
キリカちゃんが、ダイーズ君の質問に新たな質問をくっつけて私の顔を見た。
美味しい麦……って、そもそも麦じゃないからなぁ、米も。麦に似た形で、おいしいもの?
「もち米?」
なんとなく、うるち米よりも高級なもち米が思い浮かんだ。
ああ、そう、桜の葉っぱを塩漬けにして桜餅つくれるね。もち米があれば。でもって、ハズレ土の魔石が本当に小豆なら……。
ぐふふふ。桜餅。完成するじゃない?
思わず味を想像してにやける。あの葉っぱの塩気と、あんこの甘さが合うのよね。合うのよっ!桜の香りもいい。ああ、花の季節には、花びらも桜付けしましょう。そうしましょう。……そういえば、桜の花びらの塩漬けでお茶も作れるって聞いたことがある。
二日酔いにきくんだとか。そうそう、桜の樹皮を煮込んだ汁は、咳止め、去痰剤になるとか聞いたこともある。昔は庭に桜を植えてる家で使っていたとか。
もし、ひどくせき込む風邪をひいたら試してみようかな。
「すげぇ、おいしい麦もあるんだ!なぁ、ユーリ姉ちゃん、どこにあるんだ?」
「え?あっと、さぁ?故郷でも売っているのを見たことしかなくて、どこにあったかは……」
米の産地で有名なのは新潟県魚沼市みたいなのは聞いたことがあるけど、そういえば、もち米の有名なもち米どころってあるのかな?勉強不足。あ、異世界では役に立たない知識か?それとも似たような気候の場所で栽培を考えるとかあると便利だった知識なんだろうか?もち米もうるち米と同じように作ればいいの?
「でも、ユーリ姉ちゃんの故郷にあったってことは、どっかにあるんだよな!俺、絶対見つけて見せるよっ!」
「キリカもー!冒険者になったら、おいしい麦さがしのたびに出るんだ!」
「はー、それにしても、本当に、噛めば噛むほど甘味が出てますね。こう、何とも言えない粘りというか、水分を含んだ食感もいい。肉でもどの野菜ともパンとも違う、不思議な」
もぐもぐと、幸せそうにダイーズ君が白米を食べています。
「村のみんなにも食べさせたいなぁ」
ふふ。ダイーズ君らしい。
「村に変えるときに、まずい麦を買って帰ればいいんだよっ!」
「だな!俺が、美味しい食べ方教えてやるからさ!まずい麦を美味しく食べるにはコツがあるんだ。白くすることと、はじめちょろちょろなやつな!」
カーツ君が自慢げに私の顔を見る。
はい。カーツ君はご飯炊きの名人です。
精米も頑張ってくれます。
次の日。
コンコン。
ノックの音が。
時間は朝食の準備中。
誰だろう?
ご覧いただき有難うございます。
本日の夕飯はヤキトリでございます。
塩味と、シンプルではありますが、葱やらニンニクやら大葉やら種類はございますので……
とまと「タレがいい!塩よりタレ!」
……(´・ω・`)




