211 なんとか終わったようだ
「さくら、ひのき……」
それからなんだっけ?
「さくらってなぁに?」
「ああ、桜はね、春になるとピンクの花でいっぱいになる木のことだよ。冬は葉っぱがなくて、春にピンクになって、数日で花が枯れるとそこから青々とした葉っぱが出て来て……」
日本では、花見をするんだよ。
「ああ、もしかしてあれかな?あるぞ」
あるの?桜あるの?!
「じゃぁ、春になったら花見しよう!花見弁当作って!」
まさか、異国の地……いや、異世界の血で桜が見られるなんて!やった!
「弁当か!またピクニックか!」
カーツ君に案内されて、桜の木の元に。って、すごい、小屋から目と鼻の先、森の入り口。
これなら、春には小屋からも桜が見える。
木の幹の横の筋。
それから、葉っぱのギザギザの形。
ん?葉っぱ?
……桜の葉っぱを塩漬けしておけば、桜餅が!って、ダメダメ、あとにしよう。葉っぱは逃げない。
さくらさん、ちょっと枝もらうね。
確か燻製するには、生木が一番よかったはずだ。生木を燃やすと煙がいっぱい出るから。チップを買わなくてもいいみたいなことどっかで見た。
というわけで、桜の木の枝を持って、ダンジョンの入り口付近で火をつけ……あれ?どうやって火をつけるんだっけ?
「火……」
「火ですか?魔法でいいですか?」
魔法!ダイーズ君の顔を見る。
「魔法使えるんだ!」
「はい。冒険者ギルドで登録したときに、魔法の使い方基礎講座を受講しました。火の魔法が使えるようになったんです。ほかの魔法はまだ勉強してなくて……」
なんと!冒険者になると魔法の使い方を教えてくれる講座まであるんだ!
「これに火をつけてもらえない?」
「え?生木ですよ?燃やすなら下に落ちてた枝ですでに乾燥しているもののほうが……」
いいんです。生木が。
「大丈夫だから、お願いね」
と、ダイーズ君に火をつけてもらう。
もくもくっと煙が出てくる。
それを仰いで煙を中に
うーんと、どれくらい実験すればいいかな。煙がダンジョンの中に充満したかな?よし、いったん煙を出している木をダンジョンから遠ざける。
目と鼻を抑えてダンジョンの中を覗き込む……煙で見えない。
「風中の煙を吹き飛ばす勢いで」」
風の魔石で中の煙を追い出す。
よしよし。
中に入ってきょろきょろ。
いない。
「うわー、スライムいなくなっちゃったのよ」
「どこに隠れたんだ?」
いないよ、やっほー!
ってことは、スモーク。燻製。虫よけ。煙ぃ!
あ、もう自分で何を言っているのか分からない。とりあえずですね、残りの肉は、燻製にすることにしました。
本当はいろいろ燻製にするには手順が必要なのですが……長期保存用燻製は水抜きのための塩漬け、乾燥、それから燻製なのだそうで。短期保存ならば、すっ飛ばして味付けて燻製でもいいそうなので、そうします。
あ、これ、マタギになりたいっていう彼氏がいる友達から教えてもらった燻製知識。猪肉で燻製とか干し肉とか作るために、キャンプに行くたびに練習だとかで作ったりするんだって。
へへ。これで安心して食べられる。食の安全大事。
安全も大事だけど、そこまでの過程も大事。トイレの床にこすりつけた肉で作った唐揚げとか知らずに食べたりして、後で知ったらたぶんトラウマで2度と唐揚げ食べられないもん。
というわけで、黒い悪魔が出ないダンジョン内でいざ、燻製作りですよー!
「えっと、煙の中に置いて大丈夫なんですか?」
「うん。故郷の調理法で、煙でいぶす……えっと燻製っていうのがあって……」
この世界ではないのか。
保存食作れるんだけどな。そもそも火の魔石を使うから、燃やすことが少ないので発展してないのかな?
わざと煙を出すなんてそんなにないし。狼煙とか?狼煙、あるのかな?魔法で代用できちゃいそうだよね……空に魔法打ち上げるとか。ブライス君もなんかやってたし。
あれ?そういえばブライス君、燻製作ってたよね?煙出してた。私の知ってる作り方と一緒?でも、なんか燻製食べたって記憶がないんだけど……私が知ってるのと作り方が違うからかな?味も違う?
そもそもあの煙って何の煙?
まぁいいや。私は私の知ってる作り方でしか作れないから。
さてと。
「じゃぁ、並べ終わったら、時々煙が消えないように木を継ぎ足してもらえる?」
てなわけで、なんとか……何とか、軽自動車3台分サイズの猪の肉、処理終わりましたー。
いつもありがとうございます。お疲れ様でした。ユーリさんたち。
ローファス「うおっ、なんだこの干し肉っ!食ってもいいのか?」
適当に手を伸ばして食う
ローファス「ほぐぅ、なんだこれ、普通の干し肉だ……。おかしい、おいしそうなにおいがするのに……くんくん、くんくん、くんくん、見つけた!これだー!」
ローファスさん、角煮干し肉ゲット。
ローファス「もぐもぐ。もぐもぐ」




