210 黒い悪魔なスライムカサコソ
……。
確かに、あそこには匂いはない。
温度も湿度も一定に保たれていて、風の魔石を設置すれば干し肉はできるだろう。
広さもかなりある。あと軽自動車1台分残っている肉もすべて干せそうだ……。
ただなぁ……。
「あそこはもしかして、ダンジョンですか?」
はい。そうです。
「どんなモンスターが出るんでしょう?肉を干しておいたら食べられてしまうんでは?」
だよ、だよ、そうそう。
「うーん、スライムはお肉食べるかなぁ?」
食べる。きっと、食べる。
「実験してみようぜ!」
いやいや、カーツくん、やーめーてー!
カーツ君が肉を持っていててポーション畑の床に置く。
「集まったらこれね」
キリカちゃんが木の板を持ってくる。
そういえば、玉ねぎとか何に寄ってくるか実験して寄ってこない食べ物もあったよね。
それをカーツくんもキリカちゃんも覚えてるんだね。
しばらく観察。
……肉、スライムたち無視してますね。
「あ、来た!」
1匹のスライムがカサカサこそこそと、あの動きをしながら肉の上を通過した。
通過、し、た!
「ああ、食べずに行っちゃった」
「これなら、肉干しても大丈夫じゃないか?」
「そうですね」
と、3人。
いやぁーーーっ!
黒い悪魔Gが徘徊する場所に保存した肉を食べるなんてそんな苦行むぅーりぃー!
「じゃぁ、早速まずは干すために」
と、ダイーズ君が何本か森から木を切り倒して運び始める。
って、なんでダイーズ君はそんなに行動力があるのか!
っていうか、めちゃ力持ちだよね。今、木を、素手でへし折りませんでした?直径10センチほどの細い木といえ、普通はそんなことできないんだけど……。
いや、レベル10を超える冒険者なら普通なのかな?うん、だって、通常死ぬまでにレベル5とか6とか言ってたし。
……ってことはだよ、単純に倍。普通の人の倍の力があっても不思議じゃないもんね?
違う、そうじゃない、今考えることはそれでなくぅ。
やだ、無理、どうしよう。ダンジョンで干した肉は、全部ローファスさんに食べてもらおうか……っていう、ずるい考えが頭に思い浮かぶ。
ほ、ほら、他の人はみなスライムのこととか気にしてないし……大丈夫なんだよね?
と思っては見たものの、キリカちゃんが黒い悪魔Gまみれになった干し肉を食べさせるなんて……私、鬼女、鬼女だよぉっ!
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
だからと言って、大量の肉を……せっかくダイーズ君が狩ってくれて、みんなで捌いてくれた肉を腐らせるなんてひどいこともできない。
……うぐぐ、どうする、焼く?とりあえず焼けば生よりは日持ちする?
でも焼いてどうする?
日持ち、干す以外に日持ち……保存、えっと……。
「どうするの?」
どうしよう……。
塩漬け、そう、塩漬け肉っ!長期保存というほど長期は無理だけど、生肉で置いておくよりも保存期間が長くなったはず。
「一部は塩漬け肉で置いておきましょう」
それでもまだたくさんの肉が腐敗待ち状態になっちゃう。
ちらりとダンジョンの中を見る。
G……実害はないんだよね。肉を食べるわけでもないし……病原菌を運んだりしなきゃ……っていうか、出来上がったものにまとめてブライス君とかに解毒浄化魔法とか使ってもらえば大丈夫だよね?
……浄化……。
綺麗になるのは理解できても、感情がついて行かない。だって、黒い悪魔Gが這いずり回った食べ物……。
なんか、こう、寄せ付けない方法ないかなぁ……。
虫よけみたいなの……。蚊取り線香みたいなの。
……蚊取り線香の煙は食べ物にかかると毒かな。煙がかかる?煙で虫除けはできるよね?スライムは?
試してみようか。
えっと、煙を出すにはチップ。チップって木だ。
確か、スモークに適した木って……。
いつもありがとうございます。
カサコソ。
カサコソコソ=====




