209 問題山積
村では食料の確保がダイーズ君の肩にかかっているみたいなこと言ってなかった?それって、誰かが欠けたら立ち行かないみたいな村じゃぁ、さすがに、なんていうか……不安だよね。
誰かに頼らないと生きられないっていうのは……自立?あれ?
やっぱり、ちゃんとまずは一人でも生きられるだけの能力を身に着けてから考えることだね。
「うん。あの、母さんも、いつか僕の友達に会ってみたいって言ってたし、あ」
ダイーズ君が口をふさぐ。
「村に行くときは友達として連れていって。ここにいるときはパーティーの仲間だけど、パーティーじゃないときは友達ね」
にこりと笑うと、ダイーズ君が嬉しそうに顔を輝かした。
かわいいね。真面目で素直なダイーズ君。常に一生懸命で……。
「じゃぁ、時間もないし、たくさんの肉の加工を頑張りましょう!キリカちゃんのアドバイスを参考に、角煮の干し肉はローファスさんが使う部屋以外にして、ローファスさんの使う部屋には、塩漬けの普通の干し肉をつるしましょうか」
「普通の干し肉なら、僕にも作れます!」
「じゃぁ、お願い」
角煮のレシピは見せたくなかったからちょうどいい。
といいわけで、各自別れて作業再開。
角煮を大鍋で作ること4回転。
「ああ、圧力鍋があれば、もっと手早く何回もできるのにっ!」
それから桶を良ーく洗って熱湯で消毒して。
あ、熱湯は沸かさなくても火の魔石放り込んで沸騰って言えば沸騰した。
そこに、醤油味醂酒少しの酢とジンジャーエールを入れて肉を漬け込む。もみもみ。
……あれ?桶でも火にかけずに火の魔石使えば煮ることはできるんじゃない?おや?
やってみる?いや、大量に破棄することになると怖いからやめておこうか……。
さて、干した。干して干して、干せる場所には干しまくった。
小屋、部屋、それから軒下。風の魔石で上手に風を当てるようにして干しまくった。
使ってない部屋限定ではとても足りず、廊下にも食堂にも。うーん、つるしまくってます……。
それでも、軽自動車3台分の肉は処理しきれず……どうする、私!
「あそこにもつるせる?」
キリカちゃんが指さした。
「ああああっ!」
指さした先には鶏小屋!
鶏小屋って、鶏小屋ってっ!
「ねぇ、私たちがダンジョンに遠征に言っている間、あの子たちの世話は誰がするの?」
外に放し飼いなら餌の心配もないだろうけど、そういうわけにはいかない。きっちり小屋から出ないように世話しないと駄目なのだ。
餌を大量に置いておけばいい?それで大丈夫なの?
糞の処理は?
卵の回収は?
……3日4日くらいならまぁ、何とかなりそうだけど……2週間とか放置しちゃうとさすがに心配だよね?
誰かに世話を頼むにも……。
コカトリスのこと知ってるのって、私とカーツ君とキリカちゃんとブライス君とローファスさんとサーガさん……だよね。みんな無理じゃない?
うぐぐぐぐのぐ。
あ、でも、尻尾が切ってあるし、見ても鶏だって思ってもらえるかも?
コカトリスなんて分からないかも?
そうだよね!うん!
見た目、ただの鶏だもんっ!
大丈夫、大丈夫!
って、どちらにしても、小屋周辺に人がいないから頼めないじゃない!
連れてく?
鶏を?いや、コカトリスを?でももし逃がしたら危険だよね。ああ、どうするっ!
「世話?」
ダイーズ君が鶏小屋に目を向ける。
「あのね、あそこにコカト」
「あー。キリカちゃん、えっと、そう、鳥をね飼育してるの。うんと、その……増やして食べるため?」
目が泳ぐ。
嘘じゃない。
増やして卵と、鶏肉とを美味しくいただけたらいいなぁと。
「へぇ。じゃぁ、次はあそこに干しますか?」
と、ダイーズ君が肉の入った容器を抱える。
「えっと、さすがにその、鶏糞の匂いとかいろいろ、さすがに……あそこには肉干すのやめようか?」
「じゃあ、あそこは?」
カーツ君がダンジョンを指さす。
ご覧いただきサンキューベリーマッチ。
……久しぶりにベリーマッチ使ったよ。
さて、コカトリス忘れてたーどうしよう……




