202 結局似た者同士?
「僕は、狩りくらいしか特技ありませんが……いえ、特技と言うのもおこがましいですね。人より少しは弓が上手……いえ、あの、僕の住んでた村の中では……ですが……」
ダイーズ君の声がだんだん小さくなる。
特技だよ!
「特技って言えばいいよ?だって、私は弓を使えないし……」
「そうなのよ!弓はむつかしいのよ!」
「矢を飛ばしても飛んでる鳥に当てるなんて、ユーリ姉ちゃんの料理食べなきゃ無理だぞ」
か、カーツくんっ、それ、ハズレMPポーションオリーブオイルの命中率100%効果の話だよねっ!
でもね、当てることができても、威力が伴わないとやっつけられないんだよ!……ってなわけで、今の私には絶対ダイーズ君の真似はできないっ!
ああ、そうじゃなくて、カーツ君、うっかりペラペラ話をしてまずいよ、まだ、秘密を共有するか決めてないのにっ。
「ユーリさんのこんなおいしい料理を食べたら、本当にいつも以上に力が湧いてうまく狩りができそうですね」
ニコニコとダイーズ君が笑う。
ふぅ、セーフ。
それはそうと……。
「いつ出発する?明日?」
土の魔法石畑へは歩いて2日。
「なー、何もっていけばいいんだ?」
あ、そういえばそうか。
「どれくらいダンジョンに入るかにもよりますよね?ダンジョンの外で野営することになるとすると、ギルドで教わった基本では」
ダイーズ君がギルドで教わったという持ち物の基本を思い出しながら指を折っている。
「まって、ちょっとまってね、メモするから!」
「ユーリさんは文字が書けるんですね!すごい!」
「いえ、この世界の……この国の文字は書けないし読めなくて、今勉強中なんだ」
「そうなのよー、キリカも一緒に勉強してるのよ!」
「俺も!数字とそれから自分の名前は書けるようになったぞ!」
はい。ブライス君の用意してくれた文字表に、私が日本語でふりがなとメモしたもので少しずつ勉強しています。
「僕も……僕も一緒に勉強……させてもらえませんか?」
おずおずとダイーズ君が口を開く。
「もちろんいいよな、ユーリ姉ちゃん!」
「ええ。仲間だもん。一緒に何でもやりましょう!いろいろなことを教えあうのも必要なことなんだよね?」
「そうなのよ!あのね、キリカは、他にユーリお姉ちゃんに縫物習うのよ!」
そうでした。そうでした。
「僕が教えられるものは……弓、なら……」
「弓かぁ。なあ、ダイーズ兄ちゃん、その鳥とかさばけるか?俺たち、まだ動物さばくの苦手なんだ。教えてもらえると嬉しい」
「ああ、それなら大概の動物ならさばき方知ってますよ?」
「あのね、じゃぁ、キリカ、あの使い方教えてあげる。えっと、猪とか皮をはぐのに便利なやつ」
「キリカ、猪がないから、またある時な」
「猪が必要なんですか?じゃぁ、ちょっと探してきます」
いいねぇ。
うん。仲良くなってお互いにいろいろ教えあって……。
って、ま、待って、ちょっと、必要な物教えてもらってる途中だったよね?
ダイーズ君、小屋から出ていっちゃったよ。
猪が必要って、あれ?土の魔法石畑のダンジョンに行くのに、猪って必要なの?
教えてプリーズっ!
……うん。
ん、なんか、思い立ったら小屋を飛び出して狩りに行くところは、ローファスさんに似てる。
……まぁ、動機が、うまいもの食いたい!じゃなくて、人のために何かしてあげたい!とか、迷惑をかけるわけにはいかない!とか全然違うけどさ。
キリカちゃんとカーツ君が、鳥を持って外に出ていきました。
えーっと。
とりあえず途中まで聞いた必要なものの準備をしますか。
まずは、装備。
武器と防具。それから非常時に必要な薬やポーション。
……ポーションは、私とキリカちゃんとカーツ君はまだ魔法が使えないからMPポーションは必要ないね。
ダイーズ君は魔法が使えるのかな?ブライス君は魔法特化型。サーガさんは魔法と剣とまぜこぜ型。ローファスさんも主に剣で戦ってるけど魔法も使えるは使えるんだよね。ダイーズ君も何かしら魔法は使うかな?とりあえず準備しておこう。
それから、こっちは料理用のポーション類。
何日くらい土の魔法石畑の外で野宿?野営?生活?するか分からないけど、あまり荷物を増やしすぎるわけにもいかないからどれくらい持っていけばいいのか……。
いつもありがとう。
さてさてさて、さてさてさて、ダンジョンにさっさと行く前に準備が必要でした。
何を持って行けばいいのかのぉ……




