201 冒険者とは
「これは、本当に美味しいです!」
よかった。
「ユーリさんは、料理が本当に上手なんですね。パーティーの食事係というのが分かりました」
「違うのよ、この料理は」
キリカちゃんがごくんとリンゴパイ……改め焼きリンゴパンを飲み込んで口を開く。
「これはうんと、普通のなの」
そうそう。ハズレポーションとか使ってないしね。よかった。ジンジャーエールとか使わなくて。
「そうだな、これは普
通のだし、ユーリ姉ちゃんだけじゃなくて、オレもキリカも一緒に作ったんだ」
「え?」
「あのね、働かざる者食うべからずなのよ」
「そうそう、料理を手伝わないと食べちゃダメなんだ」
って聞いたら、ダイーズ君が立ち上がった。
「あの、僕何も手伝ってなくて、すいませんっ」
あいやー、そうか、そうきたか。
「いいのよ。顔合わせの歓迎会だとでも思ってね?歓迎される側に手伝わせるわけにはいかないからね?」
カーツ君とキリカちゃんの顔を見る。
「そーだな、なんか引っ越しそばとかよろしくーっていうの、受け取らないとよろしくじゃなくなるんだよな?」
ああ、そんなこともありました。
「そうなのよ?キリカの作ったの、美味しく食べてくれたら嬉しいのよ?それから、今度から手伝えばいいのよ?」
キリカちゃんの言葉に、ダイーズ君がろうばいする。
「す、すいませんっ。僕、料理とかしたことなくて……手伝えないかも……しれなくて……」
なんだろう、この生真面目な少年は。
「んじゃ、ローファスさんと一緒だなー」
「そうなの。ローファスさんと一緒なの」
は?
「違うよね?」
おっと、うっかり言葉にしちゃった。
だって、ローファスさんこんなに生真面目じゃないよ?ってか、むしろ対極じゃない?
「え?そうなの?ローファスさんも料理できないから、だからいつもお手伝いしないのよ」
「そうそう。その代わり、動物狩ってきたきたり、材料を持ってくるんだ。そういうのも手伝いなんだぞ?」
あ、一緒って、そこが!
「それなら僕も大丈夫です。えっと、はちみつは、今度ジャイアントビー倒した時に持ってきますね!それから、動物は……ちょっと待っていてください」
えー?
小屋出ていったよ。
食べてからでいいんだよ!
っていうか、そんなに簡単に動物なんて捕まえられないからね?
……なんて思っていたら、ものの10分で鳥を3羽ぶら下げて戻ってきました。
あれ、おかしいな。
「急いだので、これくらいしか見つけられませんでしたが……足りますか?」
……人は10分で鳥を3羽狩れるものだろうか……。
ローファスさんは猪ならいける。
ブライス君は魔法でできる。
……あれ?冒険者なら全然問題なくこなしちゃう?
ど、どうしよう。本当に私はレベルが10に達しても、最弱なんじゃなかろうか。
本格的に鍛えないと。
そうだ、寝る前にスクワットとか、筋トレを日課にしよう。朝早く起きてジョギングもしてみようかな。……できること、しないと駄目だ。
「鳥だ。ユーリ姉ちゃん、あの甘くて酸っぱいやつ食べたい!野菜も美味しいやつ!」
うん。あれね。
……でも、えーっと……。
ダイーズ君の顔を見る。
ポーション料理の秘密を知られちゃうよねぇ……。どうしようか。
えーっと……。
ダイーズ君はいい子だし、内緒ねと言えば内緒にしてくれそうだけど……。
これからしばらく行動を共にするのに隠し続けるのは厳しいよね……。
契約したほうがいいのか……。
まぁいいや。夕食のときに考えよう。
あれ?夕食?
いつ出発だろう?
いつもありがとうございます。
ユーリの冒険者基準が……たぶん一般的でない気が……げふんげふん。
ダイーズ君の常識もなんだかあてになら……げふんげふん。
そして、ユーリは戦うこと以外でなんてうか、すごいんだけど、無自覚……




