199 それは武器ではありませ……
私、武器を持ってないんだ。
そうか。スライムは、スリッパみたいな形の武器でやっつければよかったけど……。
別のダンジョンに行くんだ。
カーツ君は剣。キリカちゃんは短剣。ダイーズ君は弓。
私は……どうしよう……。
「木の板……かな?」
カーツ君がぼそりとつぶやく。
ああ、スライムを一網打尽作戦で使いましたね。
って、違う、それ、違う。私の武器違う。
「うんとね、包丁なのよ!」
ぐあっ、そうだよね、やっぱり、そうだよね……でも、でも……包丁……包丁は……モンスター倒した包丁を料理に使いたくないです……涙目。
ダイーズ君が困惑してます。
「あ、そうだ。ハンノマさんから預かってきたものがあるんです!」
「ほ、本当?」
ハンノマさんから?
ってことは、私にも何か武器を!
やった!うん、ハンノマさんの包丁はすごい切れ味だし!
「えーっと、なんか、ワシに持ってきたのに師匠め!どうせわがまま言ったんだろう。先を越された、もっといいものを作ってやる!ということで、師匠よりすごいものだそうです」
え?
ハンノマさんの師匠に作ってもらったものって、泡だて器……呪文一つで泡だて鬼に早変わりするあれだけど……。改良版泡立て器?
でも、なんでハンノマさんが師匠の作ったもののこと知ってるの?あ、メモが残ってた?
それに何か師匠が書き加えてカウンターに置いて行ったような気が……。文字が読めないから分からないけれど。
ダイーズ君がカバンから取り出したものは、まぎれもなく……
「泡だて器……」
うぐぐぐ、武器じゃない……。
泡だて器は嬉しいけど、2つも3つもいらないんだよねぇ……。キリカちゃんがお嫁に行くときにプレゼントしようかな……。
「えっと、ここを持ってこうして前後させると、先が回るそうで」
うわー!
そ、それって、それって!
「手動式ハンドミキサー!」
やったぁ!
「すごい、ハンノマさん、すごい!」
さすがに電気で動くハンドミキサーは無理だとは思ってたけど、手動でぐるぐる回るハンドミキサーなら何とかなるんじゃないかなんて思ったけど。作っちゃったんだ!
「……これ、大きくなるやつだよな?」
と、カーツ君。
大きくなるの?いやいや、まさか……。
「すごいの、大きくなって、モンスターとか倒すときにぐるぐるするの」
……。
それ以上、キリカちゃん言わないで……。
「なんか、めちゃえぐい武器だよな」
カーツ君、違う、違う、泡立て器は武器じゃないのよぉぉぉぉっ!
うぐぐ、ぐぐぐ。
涙目。
「大きく?どういうことですか?」
ダイーズ君が首を傾げた。
「ユーリ姉ちゃん、見せてやれよ。きっと驚くよ!」
えー。このまま、これは小さなサイズのままだと信じていたいんだけど、駄目?
「ぐるぐる回るの見たいのよー!」
……多くくしてぐるぐる、絶対使いたくないんだけど。
「あの、隠し玉だと言うのなら無理に……見るわけには……」
と、ダイーズ君が遠慮しているけど、目は好奇心に満ちてる。
……。
はい。そうですね、いざという時に自分で自分の持ってるものの使い方知らないと困りますよね……。
呪文は一緒なのかな……。
「泡だて器、オープン」
手に持っていた普通サイズの泡だて器が……。
おや?鬼に金棒サイズではないぞ?
これ、あれだ。剣サイズ。全長で1mらい。
軽くて持ちやすくて振り回しやすい。
念のため、刃の部分を机の端に当ててみる。大丈夫、切れない。包丁と同じで切りたいもの以外には安全のようだ。
お読みくださり感謝でございます。
えぐいの出てきた(≧▽≦)
泡だて器第二弾は、手動式ハンドミキサー。
回る……ミンチ……えぐい……。
ハンノマさんを挑発するような置手紙を置いていくとは、あのわがままじじぃはやりたい放題じゃ。
ふぉふぉふぉ。一番最初に作ったのはワシじゃからな!ワシが一番じゃ!悔しかろう?ふははははっ!




