番外編 威圧への耐性を鍛えよう
ハズレMPポーション菜種油の効果は、威圧が上がる。
菜種油でから揚げを食べたローファスさんが、くるりとこちらを向いた。
ぞくり。
あれ、なんか怖い。
どうやらキリカちゃんも私と同じように怖いと思ったようだ。
思わず二人で抱き合う。
「おい、ユーリ、キリカ、どうした?」
ローファスさんの手が伸びる。
怖い。何、これ。怖い。まじ怖いっ!
「ローファスさん、ちょっと二人から離れてください」
ブライス君が私たち二人を背にかばってくれる。
ああ少し気持ちが落ち着いてきた。
「威圧が上がると、相手は耐性がないと恐怖心を感じるんですよ。ユーリさんとキリカを怖がらせないでください」
ブライス君の言葉に、ローファスさんが悲し気な声を出す。
「なっ……いや、ほら、怖くない、怖くないよ?」
と笑顔を浮かべるローファスさん。
いや、怖い、ますます怖い!
決めた。二度とローファスさんには菜種油を使った料理は出さない。
「なぁ、耐性ってどうやったら上がるんだ?」
!
私は怖いと、ブライス君の背に隠れてしまったのに、カーツくんは少し震えているけれど、前向きに自分を鍛えようとしている。
ダメだな、私。頑張る頑張るなんて口ばっかり。
「そうだな、自分より威圧が高いモンスターとにらみ合うと早く上がるよ。目をそらさずにね」
ブライス君が耐性の鍛え方を教えてくれる。
「鑑定を使わなくても、怖いと思うモンスターが自分より威圧が高いはずですよ」
なるほど。怖いと思うモンスターとにらみ合うのか。
怖いと思う相手……自分より威圧が高い相手。
モンスターじゃないけど、ちょうど耐性を鍛えるのによい相手がいるじゃないですか。
ブライス君の背から離れ、ローファスさんの顔を見上げる。
にらみ合うのね。
うう、怖い。なんだろう、背中が続々として逃げ出したくなる。
目をそらしちゃダメ。
「な、なんだユーリ、俺の顔に何かついてるか?」
怖いけど逃げずににらむ。じーっ。
「え?ちょっと、ユーリ……」
ローファスさんは怖いけど、ぐっとこらえて少しずつ近づいていく。
「ま、まって、ユーリ、ちょっ」
ローファスさんがなぜか後ずさる。
そして、ふいっとローファスさんが目をそらした。
「え?あれ?ローファスさん?」
にらみ合わなくちゃ耐性が鍛えられないんですけど。
「そ、そんなに見つけるなよっ……」
ローファスさんが震えている。
「え?見つめて?違いますっ、睨んでるんですっ」
「そうです!ユーリさんは自ら威圧に対する耐性を鍛えようと頑張っていました。あ、ユーリさん、僕も威圧はユーリさんよりも上ですから、僕が相手に」
ブライス君が?
ブライス君を見る。
「えーっと、ブライス君は全然怖くないから。でもありがとう」
ブライス君はガクッと肩を落として、すぐにローファスさんの袖をつかんだ。
「ローファスさん」
ギギギとすごい勢いでブライス君がローファスさんをにらみつける。
あ、睨むってあれくらい迫力がいるんだ。私、まだまだダメだね。そりゃ見つめてると勘違いされちゃうわけだ。
「俺も、俺もローファスさん、威圧耐性を上げる訓練させてくれ!ほら、キリカも来いよ」
「うん。ローファスさん怖いけど、でもキリカ、頑張るのよ!」
と、3人がローファスさんをにらみつける。
「か、勘弁してくれ!俺は、俺は、モンスターじゃないっ!」
ローファスさんが部屋を飛び出していった。
ご無沙汰しております。
しばらく諸事情で更新ストップしておりました。(活動報告に書いてあります)
先日よりツギクル版の更新を再開いたしました。(とはいえ、まだストック分消化中)こちらはツギクル版が話合流地点まで進んでから本編更新再開予定となっております。時期は未定でございます。
2巻が12月に発売となりましたが、まだ3巻決定しておりません。コミカライズ開始日も未定です。また色々決まりましたらご連絡いたします。
今回の更新内容は番外編として、ツギクル版の一部、ストーリーに関係ない部分を抜き出し改稿して載せています。




