195 ハズレ魔石……なの?
「ふーむ、なるほど。安定していつも同じ暖かさにするところに特許があるわけじゃな。ふむふむ。ワシが炎の色で温度を見極めるような何か目みたいなものがあるというわけか?うむ、興味深い話じゃ」
あー、えーっと、単に「63度」という単語を入れただけなんですが……。
「ねー、なんでハンノマさんがここにいるの?」
「ああ、そうじゃった。ゴムの木を見つけたんじゃ!」
「本当ですか?」
「ああ。それで、嬢ちゃんに何を混ぜるのかもう一度聞こうとおもってな。ローファスの坊主のカードを持っていたのを思い出して、ここに来れば会えるんじゃないかと思ったんじゃ」
そっか。
「ほら、これがゴムの木から取った樹液を固めたものじゃ。これで間違いないじゃろう?」
ハンノマさんがポケットから手のひらサイズくらいの薄っぺらいゴムを取り出した。
コロリン。
何かがポケットから一緒に出てきてテーブルの上を転がる。
テーブルから落ちる前に、小さな粒をキャッチ。
小豆色の小さな丸いものを指でつまんでハンノマさんに差し出……さない。
「え?こ、これって……」
小豆色の、小さな丸い……。少し楕円で、白っぽい筋が入った……。
小豆色の……って、小豆?小豆じゃない?小豆だよね?
小豆、あるんだ!
「ああ、それはハズレ魔石じゃよ」
ハズレ魔石ぃぃぃぃ?
「な、なんで、ハンノマさんが、ハズレ魔石を……?」
持ってるの?
食べるの?食べる以外、小豆なんて使い道が……あ、お手玉とか作る?中にいれたりするんだっけ?えーっと、それ以外……。
「ははは。流石に魔石と間違えて持って来たわけじゃないぞ。そう驚くな。ほら、嬢ちゃんがゴムの使い道としてこういう形の武器を教えてくれたじゃろ?」
と、ハンノマさんが指をピースにして見せる。
ああ、パチンコ。えーっと、スリングショット?ゴムを使った武器があるみたいなこと教えたっけ。
「飛ばすものは何がいいかと思ってな。ハズレ魔石なら形がそろっているから狙いを定めやすいんじゃないかと思ってな」
なんですってぇ!
食べ物で遊んではいけませんっ!
いや、食べ物っていう認識はないのだから仕方がないのは分かってるんだけど。
餡子が食べられるんだよ?おいしいんだよ?小豆……。赤飯もいいなぁ。あ、もち米はあるのかな?
「使いやすさと入手のしやすさと、色々とハズレ魔石についても考えないとダメなんじゃがな。ポーション畑みたいなお前たちにも入手しやすいダンジョンがあれば一番いいんじゃが」
ハズレ魔石畑!
小豆畑ってことよね!
「硬いけど、これでモンスターやっつけられるのか?」
カーツ君が私の手の中の小豆を見た。
「どうじゃろうな。それも実験して見なければ分からぬ。とりあえず、何種類かのハズレ魔石回収の依頼をギルドにしてみるつもりじゃが……」
ハズレ魔石回収!
「あ、あの、その依頼って、私たちでも入手できるようなダンジョンとかで?」
小豆、小豆、小豆!
何種類かのハズレ魔石ってことは、他にもなんかあるんだよね!あるんだよね!何だろ。大豆?
大豆!大豆!大豆!
そういえばコカトリスの尻尾から鰹節のかけらも出たんだ。
ハズレ魔石欲しい!
「そうじゃなぁ。魔法石の中でも人気がない土の魔法石しか出ないダンジョンがあるんじゃ。ポーション畑よりは少し広くて、スライムよりは少し厄介なモンスターも出るんじゃが……」
ハンノマさんが私とカーツくんとキリカちゃんの顔を順に見た。
「ふむ、冒険者に依頼をしても受けてくれる人は少なそうだとは思っておったが……お前たち冒険者見習いでも、冒険者が1人加われば問題ないじゃろう」
「本当ですか?!」
やった!
「ずいぶん嬉しそうじゃが、本当に魔石はほとんど期待できないぞ?ポーション畑と稼ぎはさほど変わらないだろうし、ワシが出せる依頼料をもと出してやりたいが、高額な依頼料にして、何かあるんじゃないかとゴムの秘密がバレるのも困るんじゃよ……。いいのか?本当に?」
「はい!私、その、えっと、他のダンジョンも見てみたいと思っていたんです!」
「あはは。ユーリ姉ちゃんさ、スライム見るたびに悲鳴上げながら倒してるもんな。ガーマとかは平気なのに」
だって、スライムはGみたいなんだもんっ。あれはダメ。脊髄が反射するというか……。
「キリカも楽しみなの。ユーリお姉ちゃんがハズレ魔石見つけるの」
ふふふとキリカちゃんが笑った。
いつもありがとうございます。
せっかく手に入れたゴムのことなんかそっちのけでハズレ魔石に夢中のユーリさん。
……ぐふふ。小豆だ、小豆。
というわけで、12月10日にハズレポーション2巻発売しました。
えーっと、うっかり前回「問題」について書き忘れました。
問題というのは、ツギクル版の更新との関係で、なろう版、次話以降しばらく更新お休みします。
再開めどは分かりません。つぎくる版はが追い付いてきたらね。